次世代家族紀行
破村すたむ
出会い
これはとある並行世界の話。
俺は列車に乗っていた。
この列車はすでに無くなった『巨人運送』と言う会社の無人大陸横断用車両だったはずだ。
現在は胡散臭い会社が運営しているようだが、その会社の名前はよく知らない。
そして、この列車には人がほとんど乗っていない。なぜなら、運行時間が不規則で、瞬間移動するため、どこに向かうのかわからないからだ。
つまり、一年に一度見られれば運が良い方で、運が悪ければ治安の悪い街へ連れて行くかもしれない列車に乗る俺は、犯罪者か好奇心の強い物好きだと予想できるだろう。
しかし、俺はそんな大層な人間ではない。
ただ、多くのことから逃げてきて、運よくこの列車に乗り込んだだけだ。
俺は、このまま一生何かから逃げ続ける人生を送るのだろうか。
そう思った矢先、止まった駅で誰かが乗ったのが見えた。乗り込んできたのは薄茶色の髪の青年だった。
がっしりとした体つきで、明るく爽やかな見た目の好青年は俺を見ると、目を輝かせてこう言った。
「驚いた。私たち以外にもこの列車に乗る者がいたんだな!私はライドーだ!よろしく!」
「ロージィです。こちらこそ、よろしくお願いします。」
俺が言い終わるのと同時に、活発そうで大きな声が聞こえた。
「ほらぁ!アルの言ったとおりでしょう?イヅの勘は当たるって!」
それはあなたではなくイヅ?の手柄ではないだろうか。
「そうだな。さあ!君たちもロージィさんと握手しなさい。」
ライドーと名乗った人物はそういうと後から来た二人が自己紹介をしてくれた。
二人のうち一人の名前はアルテージアと言い、アルと呼ばれていた。
彼女はライドーと同じくらい背が高く、髪は金髪で後ろで結んでいる。
その目は鮮やかな緑色で常に見開かれており、まるで無邪気な子供の目のようにきらきらしている。
彼女はニコニコしているが、運動でもしていたのか少し息遣いが荒い。
もう一人の方のイヅと呼ばれていた方はイヅルヒと言うらしい。
イヅルヒはアルと比べると非常に背が低く、髪は白茶色かアイボリーで鎖骨に掛かるくらいの長さで乱れている。
目は吊り目で、色は淡い青だが、ハイライトがなく澱んでいるため、見た目は子供だが、雰囲気は帰りの電車に乗る疲れた会社員のようだ。
その顔は汗びっしょりで苦しそうにぜいぜい息をしている。
全力で駅まで走ってきたらしく、しばらくは声も出せないようだ。
「せっかくだし降りるまで話をしないか?」
俺はライドーの提案に乗ることにした。
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