Xで「小説どうやって書いてますか」ってタグが流行っていますね。私の場合です。

佐藤佑樹

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 今の世は便利になったものですねなどと書けば先輩諸氏から怒られましょうが、私の年齢から見てもそう思わざるを得ません。執筆形態の話ですよ。

 初めてはそりゃあ小学校の書取帳だか算数ノートだかの余ったページに記したものです。そこから少し背が伸びた頃にはルーズリーフと原稿用紙とを用いました。ノートの如く束になった原稿用紙があったのですが、お小遣いでは手が出せませんで。コクヨのバラ二十枚入りの安価なものばかりを買っておりました。高校からはパソコンに向かってカタカタと。以来ずっとそうです。だから私は執筆作業のことを「カタカタ」と呼んでおります。

 私よりも少し歳下の知人は原稿用紙を用いて書いたことが無いのだとおっしゃっていました。初めからずぅっとPCなのだとか。

 けれどその彼も、私も、細かい変遷は随分と似ている。皆さんもでしょう。昔はメモ帳を持ち歩いておりましたね。ふとしたアイディアを書き留めるのに使ったわけです。次第にそれはパカパカのガラケーに代わり、今ではスマートフォンです。クラウド上にアップロードしておけば執筆すらがこの板切れで完結いたします。コミュニティもデジタルに取って代わられました。私のようなアマチュアが物書き仲間を得たいなら、読書会などという偏屈な先輩のひしめく伏魔殿に行かねばならなかったのです。今では親指一本で即フォローです。余った他の部位は酒飲みに回しておけるわけですよ。

 物語の出発点は千差万別ですし、創作の作法も言わずもがなでしょう。

 執筆の行程のほとんど大部分を、付箋だけで作り上げてしまう方を存じております。何のこっちゃとお思いでしょう。その方は物語をお書きになる際、少し大きめの付箋に各シーンを連ねノートに貼っておりました。それをどんどんと繰り返す。付箋と付箋の間、要するにシーンの連結部分にもどんどんと足していく。付箋紙の小さな四角へぎっちりと書き詰められている場合もあれば、「←サッポロ黒ラベル」とだけぽつりあったものも見受けられました。もちろん語については例えですよ。そうしてノート自体がみちみちと膨れツチノコのようなシルエットとなり、ようやくPCに向き合うのです。あとは助詞を当てはめながら転記するだけで初稿が完成するわけです。や、私にこの書き方は無理だ。彼女は今も書いているのか知らん。随分と無沙汰をしている。

 ワンクリックでフォローできてしまう環境のほとんど唯一の欠点は他者の執筆作業を目にできないことでしょう。起稿は孤独の道のりですから知らずとも支障は無いはずなのですが、いつの間に辿るべき標を失い、ああ何も思い浮かばぬ、ああ面白いか判断がつかぬ、ああもうとりあえずビールでもと、そうなるともう酔っぱっぴーのやりらふぃーですよ。未完のまま遺棄されるばかりです。諸先生方の流儀を参考にし自身のスタイルを見直す契機がちょっとでもあればと、そう思うわけです。まあ私いまべろんべろんの奴豆腐でしてプロットも無しに手癖で書き連ねているんです、これ。これをお読みくださいますれば凡才の無計画のアラ目立ちの不味さがお分かりでしょう。ふむ、お魚のあら炊きが食べたい。

 こうまれ、ちらと考えたのなら自身が旗手となり公開せぬわけに参りません。プロットの組立てはきっとデジタル時代でも本質は変わらないのでしょう。名も無きアマチュアの作法でございますがどうぞご参考になさってください。これが私の執筆プロセスです。

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