彼氏と、彼女と、それから私

三条 和

プロローグ

イルミネーションに彩られた冬の街。綺麗に装飾された街灯たちに照らされて、私たちは言い争っている。いや、私が一方的に彼に言葉を叩きつけているのだ。

「なんで!?なんでそんなこと言うの!?私はここまでやったんだよ!なんで断るの!?」

私は、今まで感じたことのない激情を彼にぶつけている。あぁ、こんなはずじゃあないのに。私の幼い情緒は、うまく感情を操舵してくれない。冬の冷たい風が、彼の綺麗な黒髪を揺らす。この風が私の発熱した気持ちを冷ましてくれればいいのに。なんて。

「私のことなんて、好きじゃなかったんでしょ!?だからここまでしたってダメなんだ!」

私が的外れなことを言っているのは自覚している。だって、彼はこんなに悲しそうな顔をしているんだもの。好きでもない相手にこんな顔はしないはずだ。でも、止まらない。ただひたすら暴走している。私の思い。

私は手に持っていた未開封のコンドームの箱を彼に投げつけ叫んだ。

「知らない。もう知らない!貴方のことなんてもう知らない!」

普段は大きくて快活な印象を持つ彼の瞳は、悲しげに伏せられ揺れている。これから難破する帆船みたいに。

私は、彼から逃げ出した。

彼の思いを理解しようとしないままに。彼の複雑さを分かっているはずなのに

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