運命の糸の先に
@hayama_25
第1話
「後もう少しで三十路でしょ? 梨華も早く結婚した方がいいよ」
久しぶりに私の家で飲みたいなんて言うから、何かあったのかもって心配してたのに。
口を開けば結婚の話ばっかり。
私は少し苛立ちながらも、冷静に答えた。
「もうってまだ27だよ、あと三年もある」
私はグラスを握りしめながら、視線を逸らした。
「3年なんてあっという間だよ」
優奈の言葉が心に刺さる。
「私は30で結婚したいなんて思ってないよ」
自分の気持ちを正直に伝えると、優奈は少し驚いた顔をした後、微笑んだ。
その微笑みが少しだけ私を安心させた。
「どうして?」
「まだ仕事だってしたいし、好きに遊びたい。結婚したら自分の時間が減りそうで嫌だ。一度きりの人生なんだから私らしく生きたいの」
優奈は私の言葉に納得したように頷いた。
「そっか、なんか梨華らしいね」
「そうかな、」
私は少し照れたように微笑んだ。
「余計なお世話だったみたいだね。ごめん」
そう言って頭を下げてくるから
「いいよいいよ。私のことを思って言ってくれたんでしょ?だけどどうしたの?急に結婚の話なんて」
優奈からそんな話をされるとは思ってなかったから、正直びっくりした。
「んー?何となく。だけど、梨華が結婚するなら瑞稀として欲しいな」
瑞稀の名前が出てきて、私は驚きと戸惑いを隠せなかった。
「…なんでそこで瑞稀が出てくるのよ」
私は眉をひそめた。
瑞稀は幼なじみで24年間ずーっと一緒だった。なのに今さらそういう目で見れるわけない。
「だってさー、瑞稀は梨華しか見れないって感じがする」
優奈の言葉に、私は一瞬言葉を失った。
瑞稀が私を?そんなこと、考えたこともなかった。
「んなわけ、24年も一緒にいたのに何もなかったし…あ、思い出した!瑞稀って高校生の時付き合ってたじゃん」
私は懐かしそうに笑った。
後にも先にもその一回だけだった。
「そんなこともあったね。名前は確か…」
「佳代じゃなかった?」
「ん、そんな感じだった。私あの子好きになれなかったなー」
優奈の言葉に、私は頷いた。
あの時のことを思い出すと、少し胸が痛んだ。
「私もだよ。瑞稀のタイプってあんなのじゃなかったはずなのになんで、なーんて、思ったりもしたけど瑞稀が幸せならそれでいいんだって」
私に口を出す資格なんてないし、
それに、彼女からしたら幼馴染なんて…敵でしかないんだろうから。
「だけど、すぐに別れたよね」
数ヶ月付き合って別れてた。
デートを目撃したことも、ましてや学校で一緒にいるところを見たことも一度もなかった。
「そうだね。上手くいかなかったみたい」
私はグラスを回しながら、瑞稀のことを考えた。
瑞稀が何を考えてていたのか、今でも分からない。
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