さよならを言う前に
帽子をかぶり
ジャケットを羽織る
手荷物は鞄ひとつ
ふと振り返り自分の部屋を見渡す
断捨離だと言って殆どの物は捨てたから
実に寂しい部屋だ
なんとなく一礼したくなった
なんでだろう
これから自由になるのに
誰にも何にも縛られなくなるのに
少しだけ名残惜しく思いながら玄関へ行き
お気に入りのスニーカーを履き
気持ちと一緒に靴紐をきつく結んだ
嬉しいような寂しいような
複雑な想いを胸に外へ歩き出した今日
私は人としての道を踏み外した
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