黄金林檎の落つる頃

結音(Yuine)

 その昔、人々は太陽に向かって塔を建てたのだとか。

 結果、神の怒りに触れ、

 互いの意思疎通を困難にされた。


 今、夜の空に輝く月に向かって

 塔を築く若者が、ひとり。


 最初は、一握りの土。

 一片のレンガ。


 やがて積み上がる壁。


 どうやって登ろう。

 最初の悩みは、それだった。

 やがて、それは変わりゆく。


 どうやって、降りよう……


 男は自らが積み上げた塔から降りることが困難となる。


 其処に住む?

 食べ物がない。

 ここで寝る?

 星がよく見えていいかもしれない。


 男は星々に近付いて、

 あなたがたとともに過ごせる喜びを、と

 歌った。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る