第16話

(このままじゃ眠っちゃいそう……そうだわ。目をつむって、なにか楽しいことでも考えて眠気を覚ましましょう。

 そうね。お菓子をいっぱい食べているとこを想像しよっ♪


 えーっと、ここは無難にホットケーキを……。とおもったけれど、ホットケーキといえばハチミツよね……。ハチミツには苦い思い出がある。ハチミツのくせに苦いとは、ナマイキなやつめっ! 


 ホットケーキが食べられない? 

 このままじゃ空想の中なのにお腹が空いて死にそう?

 フフ、そこで逃げてしまうのが二流の淑女というものよ♪有名な女王が言い放ったように……ホットケーキがなければ、ほかのお菓子を食べればいいのっ!

 シュークリームに、キャンディーに、モンブランに、クッキーに、それからチョコレートケーキ……。私がおもいうかべると、宙にお菓子がふわふわういてくるっ! 

 ウン、とってもおいしそう♡誰もいないし、私が全部食べてしまいましょう♪

 えへへへ……甘いものに囲まれているわ……博士ちゃん、とっても幸せっ♪

 パクパクパクパク……

 どれもとってもあまーい♡

 む~もう食べられないよ……。

 はっ……!

 博士ちゃん! ピーーーンチ!

 食べすぎて風船のようにふくらんでしまったわっ!

 これじゃあ助手君にきらわれてしまうカモメ……

 あわわわわっ! ついにふくらんだ体が浮上し始めたわっ!

 た~す~け~て~!!! うかんじゃう~~!!! 学会でもういている存在なのに~~~!!!!

 ハッ……でも、エネルギーを必要としない飛行方法を発見したと発表すれば、特許をもらえて悠々自適の生活を送れるかもしれないわねっ♡

 そうすれば……宇宙にぷかぷか浮きながら、ずーっとハチミツ舐める生活が……ヴぇへへへへ……♡

 ってそうじゃなくてっ?! このまま浮かびつづけたら、酸素がなくなって死んじゃうよ~涙

 なんとかしないと……ハッ! あそこに大きなタワーがみえるわ……頂上の先端につかまって、これ以上の浮遊を防ぎましょう!

 よいしょっ……よいしょっ……ガシッ

 ふ~なんとかつかまることができたわ……。ここで助けが来るのを待ちましょう。

 ここはとても高いわね? どこかしら? どこかの街の上空みたいね。

 都市の至る所から火の手があがっている……あぁ思い出したわ。これ前に新聞で見た帝都の街並みだわ……。さっきまでは気づかなかったけれど、上空には戦闘機も多く飛んでいるわ……。ミサイルや銃火器を町に発射していて……、なら町に点々とちらばる赤いシミは……想像したくないけれど……。

 …………。

 はぁ……こんな危ない所、早く逃げ出さないと。だれか来てー!


 パッカラパッカラパッカラ……

 ヒヒヒヒン!


 馬のひづめと嘶きとともに、馬に乗っただれかが、タワーの頂上にまで駆け上がってきた。

 馬には鹿の角の被り物をした助手君が乗っていた!

 馬に鹿がのってるw

 これが本当の馬鹿ってやつね!


助手君『やぁ、博士じゃないですか! そんなところで何をしているんですか?』


 助手君! 見ての通りお菓子食べすぎてふくらんだのよ! 助けて!


助手君『ウワッハッハッハッ! 博士、どうしたんですか? そのお腹、とってもかわいいじゃないですか~。ぼくにも触らせてくださいっ!』


 ツンツンツン♪


 アハハハッ、やめて、助手君、そんなにツンツンされるとくすぐったいわっ……アハ、アハハハハッ、やめ、やめてっ!


 ぷしゅーーーーーー!!!!


助手君『ア、穴が開いちゃった!』てへっ


 え、ウソ?!


 ぷしゅーーーーーーーーー  


 やだぁ、空気がっ!

 空気がぬけた勢いで、私の体は一気に宇宙へ放り出されたっ!


 あーーーーーーれーーーーーーーーー……





「やだやだ! だれか助けて! 飛んでいっちゃうよ!」めそめそ……


「博士っ!」


「あれ? 助手君? あぁ! アンタよくも私のお腹に穴を……いいえ、今はそれどころではないわっ?! 早く私を助けなさいっ! 宇宙に飛ばされてしまうわっ!」


「……どんな夢をみていたのか知りませんが、おはようございます」


 ちゅんちゅん……

 小鳥が鳴いている……。


「なーんだ、夢だったのね。さーて帰りましょう……ラボに帰って研究成果をまとめないと」こそこそ……


「おっと、博士……」ガシッ←白衣の襟首をつかむ音

「謝罪の言葉は?」


「ごめんチャイッ♡」てへっ


「むぅ……」


(コイツ、ちょろいわw)

「ところで助手君、なにか生成物はできていたかね? 博士である私が直々に張り込んだのから、相応の物ができていないとこまるぞ?」


(コイツ、寝てたくせになんでこんなにえらそうなん?)

「リスのようなものが数匹、生成されていました……。現存の物と異なり、ちいさな羽が生えていたのですが……肉体構造的に不適合らしく、飛行はできないようでした。

 おどろくべきことに、ぼくが培養室に入った時には、わずかにうごいていました。けれど、肉体の縫製が未達な部分があり、青色の液体を吐きだしながら、やがてうごかなくなりました。その液体を数滴ほど採取しましたので、あとで成分検査をお願いします」


「ムムッ! すごいじゃないかっ! さすが私が見張っただけはある!」

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