第9話
ふしぎな夢をみていた気がする……。
どこかの港から小舟を借り、深海の海ガメの卵をとりにいく……。
そんな夢……。
(海ガメの卵で目玉焼き作ったら、おいししょう……♡)
チュンチュン……
(あぁ、夢か。小鳥が鳴いている……もう、朝ね。
今日もまゆかは来るのかしら?)
さてと、朝の身仕度をしましょう。
髪をとかしてー、服を着替えてー、かるくお化粧してー……うんっ、今日もかわいい♡
「おはよー助手君っ! お腹痛いの治ったかしら?」
「……あぁ博士。おはようございます」
助手君は死にそうな顔でコーヒーを作っていた。「待っててください……っ。今、朝ごはん作りますから」
(ムムッ! 助手君は疲労困憊で朝ごはんを作れそうにないわっ! これはチャンス!)
「助手君、辛いならムリしなくていいよ? 今日は私、自分で朝ごはん作るから♪」
「いや博士に料理させたらえらいことになるって昨夜わかったでしょ?」ゼェゼェ
「今日から植物学者名乗るのやめて『炭職人』でも名乗ったらどうですか?」
「さすがに食パン焼くくらい自分でできるわよっ!」
「はぁ……なら、コーヒーはぼくが入れますね……」
電子レンジに食パンいれて、トーストにして……しばらく待って出来上り♪私ってば料理上手ね♪
「~♪」
私はパンとコーヒーを持って、ルンルンで自分の部屋にむかった。
(アレ……? 博士が自室でごはん食べるの珍しいな? もしかしたら昨日のサイン本の話引きずってて、論文を書いているとか?!
なんだかんだいっても、博士はやっぱりすごいなぁ)
(背後から尊敬の眼差しを感じるわっ! 私の女子力をみて、助手君惚れ直しているみたいね♡私って罪な女だわっ!)
自室にもどった私は、ベットの下から、一本のビンを取り出した。
(フフ……通販でコッソリ買っちゃった、高級ハチミツで食パン食べちゃお~♪)
ヌリヌリコテコテ……
食パンにハチミツをヌリヌリすると、黄金色にかがやき、おいしそうな香りを放つッッッ! ン~さすが最高級のハチミツねっ♪まろやかな香りのなかに、どこか品を感じるわ……っ!
やだ、よだれが止まんないわっ!
いただきます♡
ぱくっ
ムシャムシャ……
(ほわわわわ……♡)
う~ん、なんてまろやかな味なの♪
口に入った瞬間に蕩けおちていくわっ!
もう液体を食べているといっても過言ではないわね!
でも……狭い部屋でひとりで食パン食べていると、なんだかさみしいというか、味気ないというか……。
そうだわ! やっぱり私のようにクールビューティな女の朝は、窓から風と陽射しを浴びながらの朝食が似合うよね! 窓をあけてみましょう♪
がらがらがら……
(ン~? そうおもったけど、最近は灰のせいで陽射しは陰りぎみだし……風には灰が混ざっているのよね……。ちょっとイメージとちがう気がする。まぁいいや、クールにコーヒー飲んで決めちゃお~♡)
ごくりっ……
ぶーーーーっ!
(うげぇ……またミルク入ってない……あの野郎……同じミスを繰り返すヤツはエリート集団と呼ばれている私の研究所に要らねーンだよっ! 戦う顔をしろよっ! 畜生がっ!
あっ! たいへん、コーヒーで書籍とレポートが汚れてしまうわっ! いそいでふかないとっ)アセアセッ
がしゃんっ!
パリンっ!
(あ、ヤベッ! 焦っていたから……高級ハチミツのビン落としちゃったー)
うぇーん! うぇーん!
(どうしましょ、どうしましょ……これ助手君の給料をコッソリ着服して買ったものなのに……)
おろおろしている間に、ハチミツはトロトロと床に流れ出てゆき、甘い匂いを部屋に充満させていった……。はぁ~♡いい匂いだわ。ずっと嗅いでいたい……あぁ、ちがうちがうっ! そうじゃなくて。
コンコン……
部屋をノックされた!
「博士~今なんかすごい音が聞こえましたけど、だいじょうぶですか?」
「クスクス……朝の日課のソロダンスをしていたら、ちょっと転んでしまったのよっ! 心配ないわっ!」
「そ、そうですか……気をつけて踊ってくださいね。あ、そうだ」
「なに~?」
「まゆかちゃんが遊びに来ましたよ~。踊るなら、しばらくぼくが応対しましょうか?」
(あの子と助手君を二人きりにさせたら助手君の貞操が危険だわっ!)「い、いいえっ! 腰の痛みが限界だから、切り上げてそっちにいくわっ!」
(ぎっくり腰かな?)「わかりました……」
まゆかは昨日とおなじピンク色のジャンパーをきて、リビングの丸椅子に腰かけていた……。助手君の顔を見て、タタタとかけよっていった。
「じょ、助手さんっ! その青ざめた顔、どうなされたんですかっ?! まさかとはおもいますけど、昨夜このロリババァになにかされたんじゃ……?」
(誰がロリババァよっ!)
「やぁまゆかちゃん。だいじょうぶだよ。ちょっとキノコで腹を壊してしまって……」
「キノコで?!」
「ほら、あそこの……アレ?」
助手君が指さす方向には、昨日集めたキノコたちが籠に入っているはずだった……。けれど、籠の中はカラッポ。キノコたちは窓ぎわに移動し、気持ちよさそうにわさわさと揺れていた……。
(あのキノコたち、移動するの?!)
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