34話 魔物融合-1
キレイな魔物さん達を含め、皆にもこれから魔物融合を試すことを伝えておいた。どんな子が生まれるのかとワクワクしてくれているようだ。まぁ、実際に顔を出してるのは奏とクロだけだが。何故、情報を広めたのか? 簡単だ。融合で生まれる新たな一体には魂が宿るのだから、俺たちの子供として生まれた瞬間から温かく迎えてあげるべきだろうと考えたのだ。子供には沢山の愛を注いで育ててやりたいからな。それは血の繋がりがなくとも変わらない。けれどダンジョンの住人全員で集まれるほど、この
よってリーリエ率いるメイド隊に、産まれた子供たちの歓迎会やるからパーティーの用意しといてくれって頼んでおいた。つい今朝がた海鮮パーティーしたばっかだけど、まだ余り物が残ってるからな。完全保存食料庫に個別でラップかけてぶち込んである。それを出してもらい、歓迎会用の簡単な飾り付けをしておいてもらおうということだ。キレイな魔物さん達もこういうのなら参加出来るからな。大活躍間違いなし! である。まぁ50人もいれば、飾りつけと盛り付けくらい終わるだろ。
「さて2人とも。何か案はあるかね? 名案を期待しよう。あぁそれと面白半分で考えても良いけど、産まれた子供は全員例外なくちゃんと家族として歓迎するからな? それだけ頭に入れとくように」
「勿論!」
「わざわざ言われんでも、元からそのつもりや」
そう言うや否や2人が悩みだしたので、俺も組み合わせを考える。組み合わせが思いつき次第、POPモンスターをこの場に呼び出すつもりなのだ。
これは眷属との思念話とは訳が違う、一方的な命令である。この能力は『領域改変』の副次効果で、魔物渦から発生した魔物……つまりPOPモンスターには、遠距離からでも命令を飛ばせるのだ。
POPモンスターの種類は、全部で10種。
ゴブリン種、コボルト種、オーク種、バット種、スネーク種、セイレーン種、サハギン種、ギャングフィッシュ種、スキュラ種、ソードフィッシュウェーブ種となっている。
この10種を組み合わせて誕生すると思われる魔物は、
1…バット種×ゴブリン種=ミニ吸血鬼? コウモリと小鬼だから、そうなるのではないかという予想。
2…スネーク種×ギャングフィッシュ種=両生類な蛇? 蛇とウツボだし、多分そうなる筈。
3…バット種×ソードフィッシュウェーブ種=コウモリ大集合? そのまんまである。
とりあえずこの3種だ。
それ以外が俺には思いつかない。他に生まれそうな組み合わせあるかな。
「おぉせや、オークとサハギンでイルカ産まれるんやないか?」
オークとサハギンで、イルカ……何故だ? と一瞬考え、理解した。
「それ……海の豚ってこと?」
「おぉ。イルカって
「ん~、生物学的には訳分かんねぇけど……産まれる可能性が完全にないとは言い切れないか。奏はなんかある?」
「う~ん、ゴブリンとコボルトかなぁ。何が産まれるかは分かんないけど、個人的に何か凄く惹かれる組み合わせなの」
「そうか……それなら、奏の直感を信じよう。んじゃとりあえず、やってみるか。奏とクロのは最後のお楽しみってことで、まずは俺のからやらせてくれ」
そう言って、この場に来るようバットとゴブリンに指令を出す。
「よし。じゃあ始めるぞ」
メニューを操作し、魔物融合をタップする。
その瞬間、
「さて、何が産まれるか……」
多分予想通りだとは思うけど……。そんなことを考えていると、
――本当に融合しますか? YES/NO
確認のメッセージウィンドウが現れた。俺は躊躇いなくYESをタップする。
カッ!!!
極光。3つの魔法陣から目を焼くような強烈な輝きが放たれた。
数秒の時を経て光が止むと左右の魔法陣の上にいた2体は消滅し、代わりに真ん中の魔法陣にその子はいた。
俺の腰より低いくらいの身長をしており、青白い肌で
――魔物融合を実行。新種族『いたずら吸血鬼』が誕生しました
――新種族『いたずら吸血鬼』の情報登録に成功。魔物渦の設置が可能になりました
天啓が響く。
いたずら吸血鬼、か。なんというか名は体を表すというのかね。なんともやんちゃそうな顔をしてやがる。
「これから宜しくな。あ~、ナディ!」
その瞬間、ナディが久しぶりに見る光を放ち始める。
――眷属化が開始。デイライトウォーカーへ転生させます
――
光が収まる。
そこに居たのは青白い肌で金色の瞳、白目の部分が黒くて牙の生えた一人の男だった。身長は俺と同じくらい。結構デカい。
「……産まれたての私などに名を授けてくださり、感謝します我が主」
え、めっちゃ礼儀正しいんですけど。いたずら好き要素何処行った? 名付けしたら進化して本物の吸血鬼になっちゃったんですけど。デイライトウォーカーってアレだろ? 日光の下を歩けるタイプの吸血鬼。
迸る魔力も相当なもんだし、結構強そうだ。
「いいさナディ。お前はこれから俺たちの息子になるんだから」
「……っ!? む、息子で御座いますか? 下僕ではなく?」
「あぁ、お前は俺たちの息子だ。俺は眷属を下僕として扱わない。家族として扱う。だからナディ、お前も気を付けなさい。この場には居ないが姉が何人もいるし、これからお前の妹や弟を産み出すから」
「~~っっ!! 承知しました父上。このナディ、長男として精進致します!!」
ナディはそう言って、泣きそうになりながら跪いた。
「そんな堅苦しくしなくて良いんだけどなぁ。ま、汚い言葉を使うよりは良いか。それじゃあナディ、お母さんたちの後ろで待機するように」
「はっ! 失礼します。母上、母様」
「は、母上……嬉しいっちゃ嬉しいけど、私より身長高い……なんか複雑な気分……」
「ひひっ! 残念やったの奏ちゃん。楽にしてええで、ナディ」
「は、はい!」
「かったいやっちゃのぅ。ま、ええわ。続けてええで創哉はん!」
「ん、了解」
それから俺は、また次の組み合わせで融合をするためPOPモンスターを呼び出すのだった。
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