第2話 様々な殺し
次の日の朝、英郎はいつも通りの時間で起きて身支度を整えていると電話が鳴った。見てみると葵からだった。
「どうした」
「あっ! 英郎さん朝早くからすみません! 実は、実はまた被害者が」
葵の言葉に英郎は場所を聞きながら駆け足で家を出ると、事件場所に向かった。
場所は西東京都の一軒家。少し遠目ではあったが制限速度を違反しないように向かった。
着くとすでについている他の警察官と報道者と野次馬がわんさかいた。車を止めると駆け足でテープに行き、k警察手帳を見せながら入ると葵がいた。
「あっ。英郎さん」
「今着いた。ここなのか」
「はい、それからなんですが、なるべくみる際はお辛い気持ちになります」
「えっ」
葵は珍しくひどい表情をさせながら英郎に言った。なんだろうと思ってい、中に入ると酷い血の匂いが家に充満していた。奥まで行き、リビングに着くと英郎はあまりの衝撃に言葉を失った。
そこには体をバラバラにさせられ、それをダンボールに詰め込まれた他に、生首となった男の子の口には沢山のお菓子が詰め込まれていた。
「おいおい、これ」
「あっ、英郎さん来たんですね」
後ろからハンカチで口を押さえた昴が立っていた。
「被害者の男の子の名前は、ここの長男の太田
昴は後ろにいる仏に顔を向けた。
「仏さんのご両親は」
「それなんですけど、今父親とは二階で話していて、奥さんの方がもぉかなり狂乱してしまって救急車で送られました。なんなら、数分ぐらい叫んでいたらしくて」
「それはそうなる」
英郎はそう言って2階に行った。2階には他の警官が父親に話を聞いていた。英郎の姿をみるとおはようございますと言って父親を紹介した。
「この人は、智宏くんの父親です」
警官は完全に喪失している父親を英郎に紹介した。
「始めまして。捜査一課の英郎です。最後に息子と会話をしたのは」
「きっ、一昨日の朝です。その日、その日の前に喧嘩をしてしまって、あまり、あまり会話を」
「そうですか。ちなみによく行く場所とかご存知ですか?」
「こっ、公園です。小学校近くにある公園をよく」
父親は耐えきれずにいたのか涙を流しながら離し続けた。
「その、その時、弟のことに関する喧嘩を、喧嘩をしてしまったばかりに、私たちの行動のせいで、行動のせいであの子はぁぁぁぁぁぁ」
父親は手で顔を覆うとその場でうずくまった。英郎が訳わからずにいると隣にいた刑事が説明をしてくれた。
「聞いたところなんですが、なんでも弟と見比べてしまっていたそうです。兄だから弟を優遇しろ。兄だから少しは我慢しろとよほど多く言っていたそうで、それで喧嘩をした後にあのように」
「なるほど。差別の果ての成り果てってわけか」
英郎がそう呟くと、後ろで聞いたのか父親は「そうです」と叫んだ。
「私たちが、あの子にそのような思いをさせてしまったんです。だから、だからあの子はあのように、あのようになってしまったんでぅぅぅぅ。あぁぁぁぁぁぁぁ! すまない、すまないぃぃぃ。智宏ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
家中に彼の叫びが響き渡った。どのように声をかけていいかわからず、英郎はそばにいた刑事に任して下に降り、葵に声をかけた。
「はい。なんですか」
「そういえば弟さんはどうした。さっきから姿は見えないが」
「弟さんは今他の仲間が警察庁の方に送っています。先ほどご両親の祖父母に連絡をしたので」
「そうか。聞き込みは他の人が今」
英郎が質問をすると、葵は頷いた。そして再び仏の方を見た。苦しそうに泣き腫らした表情が見ていて苦しくなってきた。
「ひどいな、本当に」
英郎がそう言うと、鑑識の一人が「ひどいものだけじゃない」と口にした。
「えっ」
「遺体を調べてみたがこりゃあ、生きながらやられたものだ。おまけに犯人は指を切り落としたかと思えば手首と順番に細かくな。みたがどうにも乱暴な方になっている。おそらく、暴れているところを生きながら切ったんだな。首もそうだった」
鑑識はいたたまれない気持ちになりながら鑑識を続けていた。英郎は生きながらやられたと言われる少年の気持ちを考えると犯人の恐怖、残酷を感じるのであった。
その後、多数の報道者たちを退けながら警視庁につき、いつも通り会議室に入ると今回のことが相当きたのか半数の捜査員の顔は真っ青な状態であった。
会議室に入ってきた央維も、多少だが顔色が良くなかった。
席に座り、「挨拶はいい」と一言添えた。
「2人目の被害者は」
央維はそういうと、目の前にいた仲間の刑事が警察手帳を持ちながら立ち上がって説明をした。
「名前は太田智宏。小学二年生で、昨日の学校行ってから帰っていなかったそうで、母親が昨日の6時あたりに捜索願いを出したそうですが、どこにもいなく、その日は途中で打ち切りになりました」
「そうか。鑑識」
央維は鑑識に顔を向けて言うと、鑑識のリーダーは立ち上がり、説明をした。
「死亡時刻はおよそ、12時。傷から見ると犯人は恐らくですが、かなりの時間をかけて拷問を続けていた模様で、傷口も暴れたものとみなされると思います」
鑑識は説明するのが辛いのか表情がとても暗かった。内容を聞いた瞬間会議室内が一斉に重くなった。
「ともかく、被害者がこんな残酷な殺しをした犯人は許されない! 捜査員は小学校と公園周辺に不審な人物を捜査してくれ。鑑識は昨日天井から音がしたと言われる場所に向かってくれ」
央維の言葉に全員は返事をすると捜査員は駆け足で会議室に出た。英郎と葵も駆け足で自身の車に向かった。
「今回の犯人、人の心完全に見失っていますね」
「あぁ、まだ8歳の男の子を生きながらあんな風にバラバラする時点で、人としての心を失っている証拠だ。一体どうゆう気持ちで子供を拷問したんだが」
英郎は恐怖を感じつつも、事件を起こしている人物に相当な苛立ちを感じしつつ、運転を早めた。
指定された公園の駐車場に車を止めて降りると、公園にいるママ友と思われるグループに話しかけた。警察というのを聞いて少しだけ警戒をしたが、自身のことではないことを諭るのと同時、見たことがあるのか「あぁ、あの子ね」と口にした。
「何度かお見かけをしたのですか?」
葵が質問をすると、ママ友はうんうんと頷いた。
「えぇ。何度も、休日なんかは特にねぇ。友達とか遊んでいたから気にしてはいな買ったけど、だけどあんなことがあったのを朝、近所の人に聞いたからそれで話していたんだけど」
「だけど」
「実はね、その男の子とよくおしゃべりをしている人がいるの。女の人だったかしら ね、よくお姉ちゃんって呼んでいたから」
ママ友の一人の証言に葵と英郎は顔を見合わせた。
「それで、その女性はいつ」
「えーと、時々ここの公園に訪れるぐらいなんだけど、見かけるとしたら木曜日だね。木曜日に見かけるわ」
葵は素早く手帳に書き留め、その女性が他の子供に声をかけたかを確認した。すると、全員首を横に振った。
「いいえ。息子からは何も」
「私もですね。それに誰もがあの子のお姉さんだと思いましたし」
そう話していると、ママ友の一人の女の子がママと呼びながら近づいた。
「あら、どうしたの」
「黒いお姉さんのお話しているの??」
「そうよ。でも、有美には」
「有美昨日、学校の帰りに会った」
有美という女の子は純粋の顔を向けながら答えた。二人も同じく、その母親も驚愕の顔をさせた。
「そっ、それはいつ見たの??」
葵はできる限り落ち着きながら質問をした。
「えっとね、学校の帰りにね、お姉さんが大きな黒い、コロコロを転がしていたの」
「それって、四角いやつかな」
英郎がそういうと、頷いた。二人はキャリアケースが頭浮かんだ。
「声を、かけたのかな?」
「うん。どこかいくのかなって、お姉さんは「準備するため」って言ってどこかにっちゃったんだ」
「顔は」
「マスクしてたからわからない」
有美は首を横に振っていった。
「他に何か聞かれていない??」
有美の母親は多少顔色を悪くさせて言った。殺人鬼がまさか娘の目の前にいたなんて思いもしなかっただろう。
「でもね悩みがあるかって、質問してきた。でも有美はないよって言ったらお姉さんその場を去っちゃったんだ」
有美は純粋な表情を浮かべさせながら言った。二人はもしもそこであると答えた場合、引き連れてあのようになっていたかもしれないと考えた。他のママ友は有美の言葉を聞いた瞬間にすぐさま自身の子供にも声をかけて犯人にあったか質問をしたが、誰も首を縦には降らなかったのが救いだった。
二人は頭をさげ、その場を離れた。
「簡単に攫ったのはまさかこれだったのか」
英郎は手帳を見てつぶやいた。
「えぇ。犯人はとても頭が良さそうにしてきました。だって完全に信じ込ませてから相手を空きあらば見せさせて眠らせ、キャリアケースに押し込んでいくなんて」
「あぁ。だが犯人はなぜ木曜日だけにしたんだ? 犯人はその日だけにしたんだろな。他の日も行けると思うが」
「仕事でいけないとかでは?」
葵は提案を述べながら英郎を見つめた。英郎はその提案に「うーん」と唸った。
「暗闇の屋上を淡々と移動する人物は相当な運動力がいいかもしれないな。何せ、暗闇の中をあんな淡々と登ることができたんだ。あんなところだったら恐怖だってわくはず」
「えぇ。でもどうして犯人は半分ですが目立つような行動をしたんでしょうね」
葵は疑問を口にしていった。
英郎は、犯人は警察が捕まえられないと思ってあんなふうに目立つ行動をしているのだろうとさえ考えたが、別のこともある。
「逆に、見つけて欲しいと」
足を歩め、次の人に声をかけようと考えた。
「あぁぁ、あの男が探している」
私は部屋に飾っている写真に何度も何度も刃物を突き立てていた。忌々しく、私をこのようにさせたあの男が必死に探している。憎しみも震える中、全身から歓喜の声が聞こえる。あの男が自身の姿を見た時の姿が。
「ははは、はははははははははははは!!!!!」
結構する日が楽しみだということを感じつつ、私は横にいる女子高生に顔を向けた。女子高生の目にはたくさんの涙が浮かんでいる。
「あぁ、可哀想に。大丈夫だ。今から楽になるんだよ。君は」
女の子は暴れている。そんなのを無視して優しく抱きしめた。
「君は可哀想だ。親に期待を押し付けられ、妹はその点君をいじめた。昨日のこともそうだった。君は妹の嘘のせいで家出をする羽目になったんだ。だから、それを償わせなきゃね」
私は笑みを浮かべて早速実行に行った。
「まさか犯人が被害者とひたしく話していたってことは、時間をかけていたってことになるな。おまけに鑑識から聞かされた屋上には走ったと見られる足音まで」
央維は英郎から聞かされた話にはぁと頭を抱えた。
科捜研と鑑識は朝の会議を終えたあと、すぐさまマンションの屋上を調べたところ、およそ足の大きさが24センチ。
「おそらく犯人は心理性に詳しい人物だと考えられます。被害者を安心、むしろもっと一緒にいたいという気持ちを感じさせられるということを考えたのでしょう」
「じゃあ、あの最初の被害者もそうだったのか?」
仲間の警察の一人の言葉にその他の刑事も「確かに」「だけど目撃情報がない」と口々言った。
「まだ幼いばかりの子供などは純粋無垢な存在だ。犯人はそこを狙って支度して、尚更簡単に連れやすくしたかもしれない。むしろ大人はもっと警戒心が強まっている。だから話しかけることなく、拉致られる瞬間を狙っていたかもしれない」
央維は手を組んで真剣な表情を見せた。
英郎はその話を聞いて犯人は頭がいいのか、はたまたそれについての情報を何年間調べ上げた人物かと心の中で思っていた。
すると、一人の刑事が会議室にかけ入ってきた。
「大変です! 係長! また、また惨殺遺体が」
刑事の言葉に英郎はこれで3人目の被害者が出てしまったことに絶望を感じた。
場所は栄町にある廃校になった小学校の体育館。
匿名の電話から、不審な人物が廃校に入っていく姿を目撃したということを警官から電話をもらい、現場に行き、学校内を見たが何もおらず、最後に体育館を入ろうとしたところ鍵を壊されていた。中に入ると、遺体があるということだった。
「一体犯人は、どうやったらあんなに残酷なことができるんだ」
英郎は運転をしながら現場に向かった。もちろん他のものも同じように向かっていた。
現場に着くと、いつものように野次馬や記者たちがいた。
「多いですね」
「あぁ、早く行こう」
英郎や葵は警察手帳を仲間にみせ、現場となる体育館に向かった。向かうと、仲間の何人かが苦痛に満ち溢れた表情を浮かべていた。
「英郎さん。やばいっすよ」
昴は顔色悪くさせながら近づいた。
入ると、全員がどれほど辛い表情になったかがわかった。
「おいおいおい、こりゃあ」
「……ひっ、酷すぎる」
英郎と葵は目の前の遺体に絶句をした。
葵は目の前の光景に思わず口を塞いだ。
椅子に縛られ、口の中にタオルが押し込まれ、両目をナイフで刺されて、体は溶けていた。そのため生臭い匂いと薬品が混ざった異臭がする。
「硫酸か、これは」
英郎は遺体に近づくと、手を合わせた後に体を眺めて言った。
「はい。ここに来て、硫酸をかけて」
「酷いな、これじゃあ身元は」
「いや、それは横に入ってたカバンの中に学生手帳が」
鑑識は並べたものを指差した。ブルーシートの上には被害者のものと思われるものが数々置かれていた。
手帳を見てみると、太田沙希と名前の横に写真が貼られている。
「高校生だなんて、しかも2年生だなんて」
「あぁ、なぁ親御さんは」
英郎は背後にいる昴に親に連絡はしたのかという質問をかけた。
「あぁ、手帳の裏に書かれていたのですぐに警視庁に来るように連絡をしました」
「そうか。じゃあ俺らは親御さん方に話を聞きに行ってくる。ここは頼んだぞ」
「わかりました」
英郎は昴にそういうと、英郎は葵を連れて警察庁に戻った。
戻るとすぐに受付嬢に聞くと、被害者の親御さんを多目的部屋に案内をしているということだった。
入ると、親と妹らしき人物が座っていた。すぐに英郎たちの姿を見ると立ち上がった
「警視庁の英郎と申します」
「同じく葵です」
「初めまして。先ほど連絡をいただいた太田の父と妻の愛佳と妹の幸子です。それであの、娘は本当に」
太田の父は顔色を悪くさせながら英郎や葵の顔を見ながら質問をした。英郎は真剣な表情で「本当です」と口にすると、全員が顔色を悪くさせた。
「そんな、まさか、ただお友達の家に行っていると思っていたばかりに」
愛佳は手で口を押さえ、涙を浮かべた。
「お聞きしたいのですが、娘さんとは最後に」
「2日前です。実は、その、お恥ずかしい話なのですが娘が幸子の物を盗んでいて、彼女は盗んでいないっていいましたけど、部屋から盗んだものが出てきたので、それで色々と」
葵は聴きながら持っているメモ帳でスラスラと描き続けたが、英郎は横でカタカタと震えながら顔色を悪くさせ、小さい声で「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」とぶつぶつと呟いている幸子に「大丈夫ですか」と優しく声をかけた。
幸子はハッと顔を上げた。
「えっ」
「顔色がとても悪くて、おまけに謝っていましたので。謝っているのは姉さんですよね」
英郎がそういうと、幸子は小さく頷いた。
「だけど、貴方は悪くありません。現に悪いのはお姉さんです。貴方のものを盗んだ」
「違う!!!!!!!」
英郎が言いかけた瞬間、幸子は叫んだ。突然のことに親も葵に英郎は驚いてしまった。
「違うって、あの子の部屋から貴方のものが出てきたじゃない。それに、今回は」
「違う、違う、違うの」
母親が言葉をかけても幸子は違うの一点張りだった。英郎はまさかと思い、こんな言葉をかけた。
「貴方まさか、その盗まれたのは、嘘って言いたいのですか」
その言葉に両親は再び驚きの顔をみせて、父親は「英郎さんが言った通りなのか」と幸子に震えながら質問した。
幸子はそこで頷いた。
「あの時や、他のことも。前々からお姉ちゃんが私の友達や好きな人がほとんどお姉ちゃんのこと憧れや好意を抱いていたの。だからそれで、いじめてたり、嘘をついたりして、あの時は、私の大事なものを一部だけお姉ちゃんが寝ている時にこっそり部屋に。こっ、こんなことに、こんなことになるなんて、思いも」
そう幸子が言いかけた瞬間、父親は素早く幸子の頬を拳で殴る音が部屋中に響き渡った。
「太田さん!!」
英郎と葵は机を飛び越えて太田の父を止め、同じく妻の愛佳も止めた。父は暴れながらも倒れている幸子に怒号を浴びせた。
「この、バカ娘!!!!! お前は、お前はなんて最低な理由であの子を! おかげでお前の嘘のせいであの子は家出をして、それで、それで」
涙声で訴えかけると、愛佳は「それは私たちもじゃない!!!」と叫んだ。
「あの子の話をもっと聞いていれば、こんな、こんなことにはならずに済んだじゃない。この子に、この子だけのせいじゃないわよぉぉぉぉ」
その言葉に父親はようやく暴れるのをやめ、愛佳は泣き崩れながら亡くなった沙紀に謝罪の言葉を繰り返した。
「あぁぁぁぁ、ごめんなさい、ごめんなさいぃぃぃぃぃ。沙紀ぃぃぃぃ。許して、許してぇぇ」
葵は泣き続ける愛佳の背中をさすった。英郎は別の刑事を呼ぶと父親と母親を幸子とは別の部屋を案内してもらった。
「幸子さん。大丈夫」
「はい、ごめんなさい」
他の刑事に冷やすものを持ってきてもらったのを葵は幸子に渡した。
「幸子さん、確かにあなたは最低なことをした。だけど、もぉ起こってしまったことは取り返しがつかない。だから、俺たちの質問には正直に答えてね」
英郎の言葉に幸子は父親に殴られた頬を押さえながら「はい」と小さく返事をした。
「それで、なんだけど。君のお姉さんは誰かと会っていたりしていなかったかい。なんでもいい、もしも見かけていたらなんだが」
英郎がそう質問をすると、幸子は考えた。
「あっ」
「ん? 何か思い出した」
「はい、実は、2、3週間前なんですけど、姉が東京駅の方で誰かとお話をしていたんです」
「それって、見かけたのかな?」
「いえ、私の友人です。働いているバイト先のレストランで姉が誰かと話していたんです。女性らしくて」
その言葉を聞いた二人は顔を見合わせた。
「その人の顔って、見ましたか?」
「いえ、見たとしても一瞬だったんで、だから顔までは」
「そうでしたか。それじゃあなんですがそのバイト先のレストランの名前と友人の名前を教えてくれませんか」
英郎がそういうと、幸子は東京の駅前にあるレストランの場所と友人の名前を言った。
早速バイトの日が今日なため、その場所に向かった。車で行くと早くて5分で着き、車を駐車場に停めるとバイト先を探した。
「ありました!」
葵が指した先には幸子が叫んだ。目の前には看板で華麗カフェと書かれている。中に入ると一人の女性がいらっしゃいませと笑顔で声をかけた。カウンターの方に行き、警察手帳を見せながら店長を呼ぶように声をかけた。
女性は返事をすると駆け足で店長を呼んだ。
「はい、店長の柳です。どうしましたか」
「実は、ここに山本凪さんという方は」
「えぇ。いますよ。ちょっと待っててくださいね」
柳という店長は凪と声をかけた。
綺麗な黒髪を整え、カフェの指定された制服を着こなしている凪がどうしましたかと言いながら近寄った。
「こちらの刑事さんが君に話があるそうだよ。ここだとなんだから、お店の裏でいいかな?」
「はい。大丈夫ですけど」
「お店のことは他の子に任しといて」
柳はそういうと、お客の接待をするため離れた。
「それでは、どうぞ」
凪は店の裏に英郎と葵を引き連れて行った。
「それで、なんでしょうか」
凪は少しだけオドオドした感じに返事をした。
「あぁ、あなたに疑いというのがあるわけじゃあないんです。それだけは安心してください。話を聞きにきたんです」
「えっ。話ですか」
凪は葵の言葉に自分が何か犯罪を犯したのではないかという思いが消え得せ、安堵の表情を見せた。
「この女性をご存知ですか」
葵は幸子にもらった沙紀の写真を見せた。
「えぇ。幸子の姉だって知ってるっすよ。それが」
「今日、遺体として発見されました」
英郎の言葉に凪は目を見開いた。
「はっ!!!!??? えっ? いっ、遺体で発見。なんで」
「それはお答えができません。現在調査中です。それでなんですが、幸子さんからお聞きしたのですがあなたが沙紀さんと誰かが話しているという姿を目撃したと」
英郎がそう説明すると、凪ははいと返事をした。
「確かあれは3週間前、主に10月14日の水曜日の放課後のことなんですけど、俺が接待などを色々としている時に沙紀さんともう一人の人が店内の奥の席で座って話していたんすね。それに、見たこともない人だったんで他校の子かと思っていました。近づいた時、声が女だったんですけど、服装が黒で、おまけにその女の人はサングラスまでかけていたんで」
「そうですか。背丈、いや。まずその防犯カメラを見させていただいてもよろしいですか」
凪は店長に話していきますと言って席を立って部屋を出た。待っていると、すぐに柳が入ってきて「お見せします」と言って別の場所に案内をした。
店内に入り、左の扉を開けた。そこにはパソコンなどが置かれている部屋を見て、すぐさま防犯カメラの確認場所というのがわかった。
「えーと。ちなみになんですが、何日ですか」
「10月の14日の夕方あたりの映像を見せてください」
英郎が指示をすると、柳は素早く手を動かしてパソコンを操作した。
柳は日程の日の夕方あたりから映像を再開させると、二人は画面を見つめた。
時間が過ぎ、とうとう6時の時間に回ると。
「あっ! 英郎さん!」
葵の声に英郎は見てみると、被害者の沙紀とフードとサングラスを被った犯人らしき人物が防犯カメラに映っていた。
「こっ、これ! ダビングすることできますか?」
「えっ。えぇ。構いませんが、時間かかります」
「構いません!」
英郎の言葉に柳はせっせとダビングをする準備を行った。
「何! 犯人と被害者が会っていただと!」
話を聞いた央維は驚きの声を上げながら立ち上がった。
英郎と葵はあのあと、ダビングし終わったDVDを入手したあと車で警察署に戻り、央維に報告をした。
「はい。このDVDの中に入っています」
「よし! 準備をしてくれ」
央維の命令に、プロジェクターを準備をするとそのDVDを入れた。壁には被害者と犯人が一緒に店内に入る姿が出てきた。
映像を見た央維は「犯人は最初はどこで被害者と会ったんだろうな」と口にした。
「そこはまだわかりません。その場所までは現在は不明です」
「そうか。よし、この場面をコピーしてこいつを見かけたか探し出してくれ」
その言葉に全員は返事を返した。英郎はこの行為を事件が起きてから何度しただろうと思い浮かぶのであった。
「いやぁ、お二人さんすごいじゃないっすか。今日大手がらでしたよ!」
昴は調査を終わった後、二人を褒めた。
「感謝はあの被害者の妹さんだよ。妹さんの証言がなかったらあそこまで辿り着けな勝たんだからさ」
英郎はコーヒーを片手にしながら言った。
あの後、防犯カメラに写っていた人物を見かけたかの調査をしたところ、時間帯が遅かったせいか目撃者は少なかったが何人かはこのような格好をした人を見かけたという情報を得られ、事件は少し前身をした。
「あぁ、被害者の妹さんでしたか。さっき姉さんの遺体を見て、完全に正気を失っていましたけど」
「えっ。正気を失ったって。妹さんだけ?」
葵はそう言うと、昴は「いや」と返事を濁らせた。
「両親の方はもっとだったらしいっすよ。何せ、遺体の状態が悪かったんですけど、両親がしつこく見せろってまで言われて、渋々見せた結果、妹さんよりも遥かに狂気を逸してて、おまけになんすけど、その妹さん嘘のでっちあげて姉さんが家出をしたんでしょ」
「あぁ、そうだ」
「それもあってなのか、親父さんがマジで自殺をしようとして、それを必死に止めるの大変だったらしいっす」
昴はそう言いつつ、持っていた缶コーヒーを飲み干した。
「……妹さんの方はどうなったの? あのまま」
「奥さんの方が妹の顔を見たくもないって嘆いて、そのまま妹さんを残して警察署を出ちまったよ。親父さんを病院に送った後ね。それで代わりに親父さんの方の親御さんに頼んで向かいにきてもらいました」
昴は「はぁ」と深いため息を漏らした。
「でもなんで犯人は、家庭内問題での被害者を殺すんでしょうね。おまけに、目立つ行動まで色々と」
「あぁ、俺もちょっとそこがが気になる。こう言っちゃあ悪いが家庭問題の中での容疑者を殺しちゃえばいい話だ。だが、なんで被害者なんだって言う話だ。犯人の目的はなんなんだ」
英郎は持っていた缶コーヒーを見つめて言ったが、ふと自身の頭にも過去が浮かんだ。
自身の大切な娘を自殺に追い込んでしまった。そのせいで家族は崩壊をした。すると、あることが思い出した。
「あっ」
「どうしました」
葵は英郎の何か思い出した言葉に質問をした。
「実はさ、明日娘の命日なんだ」
英郎の言葉に二人は驚きの顔を見せた。
「マジですか。おわぁ、こんな時に」
「娘に仏壇で謝ってくるから仕事は安心しろ。それに、代わりに二つしたの妹に行ってもらうから」
英郎はそう言うと、缶コーヒーを飲み干してお疲れさんと二人に一言言うとその場を去った。
「しかし、奥さんは一緒に行かないんですかね?」
葵はそう言うと、昴は「あれ? 知らないの?」と不思議そうに言った。
「えっ? なんでなの」
「あの人離婚してんだよ。それに俺らより長いでしょ。かなりここでは噂になってるんだよねぇ、なぜだか」
「へぇ。昴くんは元からなの?」
「いや、他の同期から聞いたんだよ。離婚して、ここに移り込んだって。なんでかは理由わからないらしいけど」
昴は空になった缶コーヒーをゴミの中に入れると余った仕事がないかを確認するのだった。
英郎は帰りの途中に食べ物を買い、家に着くと早々ともう一人の娘、麗美の妹の水穂に連絡をした。
「もしもし、父さん」
「あぁ、水穂。久しぶり。元気しているか」
「うん、なんとかね。お父さんのほうこそどう。なんだが最近、事件がニュースで流れているから結構疲れているでしょ」
水穂は電話越しで優しい口調で心配をしてくれた。
「あぁ、あとなんだが」
「お姉ちゃんのことでしょ。大丈夫。しておくから終わってからね」
「そうだ。ありがとう。すぐに察してくれて……美亜はどうだ。元気しているか」
英郎は水穂にそう声をかけた。水穂は十年前に結婚をして、孫は六年前に生まれて今は保育園児だった。
「元気だよ。結構、それもかなりね」
「そうか。安心した。ごめんな。急な電話をして」
「いいよ別に、母さんもなんだか最近元気になってきたんだ。時々行っているんだけど」
水穂は電話口でそういった。妻の体調が元気になって英郎も少し安堵の声を漏らした。
「それじゃあそうゆうことだから。また何かあったら電話してくれよ」
「うん。お父さんこそね」
水穂はそう言っておやすみなさいと口にすると電話を切った。
英郎はスマホを置くと、仏壇の方に顔を向けた。笑顔で写っている麗美の写真。
「ごめんな麗美。お父さん、仕事で仏壇に線香しかできないが、ちゃんよ解決をしたら好物のやつやるからな」
英郎は仏壇に向かって言うと、風呂に入った。
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