プリズムの欠片。


 玩具の宝石を買ってもらった。

 宝石の形にカットしたガラスだった。

 嬉しくて、嬉しくて。

 窓際でうつぶせに寝そべって、

 光を通して、小さな虹が畳の上に散らばるのをずっと見ていた。


 光は誰の物。

 空気は誰の物。

 水は誰の物。

 命は誰の物。


 あなたがそれを私物化した時、

 わたしの記憶で輝いていた、

 手の平の虹は、

 一瞬で灰色になった。


 誰かが虹という名前を何かに付けたとき、

 別の誰かは虹と切り離される。


 これはあの子のものよ。

 あなたのものではないの。

 手離しなさい。


 そう言われているようで。


 わたしは、わたしの手の平にある、

 「幸せ」をにぎりしめた。

 形のないあいまいなそれを、

 誰かが羨むのだろうとがっかりしながら。

 

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