なぞる。


 恋しいと、恋しいと、どれだけ思ったか知れない。

 愛しいと、愛しいと、小さくなったあなたの抜け殻をなぞる。


 あなたの生きていた日々を覚えている。

 あなたの声がまだ聞こえている。


 何も消えていない。

 まだずっとここにある。


 さみしいと、くるしいと、どうして、どうして、どうしてなのと、

 くり返す時間は、諦めとともに、受けとめとともに、

 川の流れに余分な土と砂を奪われて、


 今、砂金が一粒。


 あなたの笑顔、一粒。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る