歯車に花束を

珠邑ミト

小説を書きます。



 小説を書きます。

 そっとくちびるをなめます。

 苦しいような喜びが、わたしの背骨を這い上がるのです。


 小説を書くということは、いらえの返らないラブレターを書くことにも似ていませんか?

 わたしは、あなたへ向けて書きます。


 あなたは、歌。

 あなたは、風。

 あなたは、誰かが昔書いた小説。

 あなたは、わたしを放置した時流。

 あなたは、絶え間なくわたしを嘲笑った人。


 小説を書きます。

 そっとなたを心にひとつ。

 

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