第18話 目的地へ

 地図を見ておいた。沿岸線を辿れば北上になることを確認し、どうやら弁当なんかを用意しておいた方がいいと分かった。そこでお能登さまの要望を尋ねたところ、

「にぎりめしがいいのではないか?」

 と思案気に言われたので、こしらえておいた。それだけだと心許ないので、保冷袋に入れるものの傷まないメニューを作っておいた――きゅうりの味噌和え、紅ショウガを混ぜた豆腐ハンバーグなんかを作って、あとは梨とかいちじくとか――。

 北上をし続けると、五月頃にはカンゾウが咲くスポットがあるそうで、さすがに寒いかもしれないが駐車場なんかで海岸線を見ながらのランチも悪くはないだろう、なんてことも考えてなかったわけではない。

 紅い車で走る沿岸線は蛇行を繰り返し、ふと足元を見ればそこまで波が来るほどぎりぎりに道路が作られており、運転している方はまだいいがそれ以外の席にいた場合下手をしたら車酔いをしかねない。しかも片側一車線は車一台がぎりぎり通れる幅で確かに行きかう車両の数は少ないが、停車が妨げになっては快いものではない。それは情報収集のため鳥を見つけて聞く段階も当てはまり、結果として駐車スペースが設けられている場所ごとに一旦車を入れて、お能登さまが車酔いしていないかその気晴らしと、鳥やまたはそのあたりの動物から情報を仕入れられないか待つ、結局は小休止を挟みつつのドライブとなった。

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