第13話 交友



「こちらパトロールD・E、デルタ・エコー。現場に到着。」




「了解、捜査規定を遵守しろ。オーバー。」




「コピー。アウト。」




パトカーの狭い車内で事務的な無線が終わった。






「悪りぃ、相棒。話聞いてなかった。何しに来たんだっけ?」




助手席に座る細身の警官が、運転席のふくよかな警官に話しかけた。






「おいおい…話聞けよ…。まぁ、いつものことか。ハイランドのATMでシステムトラブルがあったんだ。多額の現金が引き出された後があり、クライアントが捜査を依頼してきた。いくぞ。」




ふくよかな警官が車を降りると、相棒も続いて下車する。






「…あっ、アンタら!こっちだ!」




汗をかいたサラリーマンが二人を見つけ、呼び寄せる。






「自動警察です。御依頼はこちらで?」




ふくよかな警官が真面目に質問する。






「そうそう、うちの会社のATMが誤作動起こしたんだけど、事件性がぷんぷんでね?助けて欲しいんだよー。」




「事件性、と言うと?」




細身の警官が真剣に聞き返す。






「本体は通信システムやセキュリティまで破られて、大金が奪われてるんだ。」




「監視カメラは確認されましたか?」




「カメラもある時刻からデータが吹っ飛んで、何も映ってなかったよ。…これ、プロの仕業だよね?」




「ATMを確認してみましょう。」




ふくよかな警官がATMに近づき、相棒の細身の男に指示する。






「よし、見てみてくれ。」




細身の警官がATMを開封し、内部を確認する。






「うーん…これは…」




「どうだ?」




「回路が焼き切れてる。強引だが現金を奪い、証拠隠滅は完璧。どんな人間がやったか大体わかった気がする。」




「俺らの管轄外だな。」




ふくよかな警官はそう確認すると、サラリーマンに向かい、状況を説明する。






「この案件は自動警察で預かります。被害額を調査し、保険が下りるでしょう。しばらくお待ちください。あと、捜査の依頼料もいりません。大丈夫ですか?」




「おっ! 金が下りるなら文句はないよ。」






ふくよかな警官が相棒を連れてパトカーに戻ると、無線で本部に連絡を入れる。




「こちらパトロールD・E、デルタ・エコー。”ポルターガイスト部隊”を要請する。」




「コピー。直ちに現場を離れろ。オーバー。」




「了解。アウト。」




無線を終えると、二人はすぐに現場を離れた。

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「カルタちゃんって言うんですか!…お兄さん、妹さんがいたんですね。」




ヴァリャがカルタの名前を聞いて驚く。






「お兄ちゃん、骨を折って美少女と知り合いになれるなら、もっと折ったほうがいいよ。全身複雑骨折いってみよー」




「勘弁してくれ…」




ティアゴが苦笑いしながら応じる。






病室で顔を合わせたカルタとヴァリャはすぐに打ち解けたようだ。




見た目の年齢が近いこともあってか、すぐに意気投合している。






というか、改めて考えるとこの状況はまずい気がした。




ヴァリャはマフィアの娘であって、こちらの住所まで晒すのは不用心だった。




一応、マフィアに恨みを買うことはしてるわけで、"御礼参り”が無いとも限らない…。




家に帰れるという状況が、思考力を鈍らせてしまった。








「え、骨折したんですか?」




ヴァリャが聞いてくる。








「うん、鼻をね。いつもはこんな顔じゃないんだよ?仕事仲間にやられたんだって。」




「仕事…あっ、そうなんですね?いやー色んなお顔の方がいらっしゃいますし、気づきませんでした…ははは。」




カルタが説明すると、ヴァリャは何かを察したように微笑む。








「ところで、二人はどこで知り合ったの?」




カルタが質問を投げかける。






「仕事帰りに彼女が迷子になっててさ。ここに泊めてあげようかと思って。」




「迷子?ヴァリャちゃんのご両親は心配しないの?」




しまった、強引すぎたか。








「今、両親がいないので、泊めて頂けると助かります。」




「そういえば…私も両親いなかった…。私は泊まっていってもらってもいいよ。」




ヴァリャのフォローのおかげで助かった。




彼女を一瞬でも脅威と疑った事を心の中で謝った。








「じゃあ、ヴァリャちゃんが泊まるから、兄ちゃんは外で暮らしてね?」




「…マジか。」




残念ながら、俺は帰ってきた途端に出ていくことになってしまった。

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ティアゴが去った後、カルタとヴァリャは楽しそうに会話を続ける。






ヴァリャが手を擦り合わせると、眩い電気が現れる。




「ーって感じで、私、電気を操るキネシスなんです。」




「すごっ!」




カルタが目を丸くして驚く。






「カルタちゃんもキネシスですよね?」




「え? ど、どうしてそう思ったの?」




「お兄さんにこの力の名前の話をしたとき、難しい顔をしてましたから。それで、もしかしてカルタちゃんのことを考えてたのかなと思って。」




カルタはヴァリャの推理に驚きながらも答える。






「そう、私もキネシスなの。でも、目が良いってだけ。」




「目が良い…拡張視力かな?」




「拡張視力?」




「昔の超能力に当てはめると、そう呼べるんですよ。って兄弟であまり詳しくないんですね。」




ヴァリャは、カルタの反応に笑みを浮かべ、デジャヴを感じた。

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