追跡者・野口正悟(1)
俺達みたいな変身能力者や妖怪系は、普通の人間より先天的に「気」だの「霊力」だの「魔力」だのがデカいらしい。
極端な話だと、去年末に向こうの「正義の味方」どもが総掛りでやっと倒せた「久留米の銀の狼」には、魔法系の攻撃は、ほぼ効かなかったそうだ。
俺も、それほど無茶苦茶じゃないが、「気弾」1発食らったぐらいじゃ……ぐらいじゃ……ああ……クソ、結構、フラフラだ。
「わ……若、大丈夫っすか?」
「ああ……いいからついて来い。自分らだけ逃げようとか思うなよ……」
フラフラ程度で済んでる。
とは言え、俺達、妖怪系が魔法使いに向いてるとは限らない……そうだ。
何でも、魔法使い系になるには、魔力だかなんだかのデカさだけじゃなくて、センスとか自制心とやらも必要らしい。
早い話が、すげ〜魔法を使えるのに、パニクり易かったり、ちょっとした事でブチ切れたり、精神操作系の異能力への耐性が無かったら……どう考えても、そんな奴は歩く災害だ。人間サイズの怪獣だ。
ついでに、魔力とやらだけは有るのに、センスや精神力がイマイチの奴は……魔物やら悪霊やらに魅入られ易いそうで……最悪、修行中にそいつは死亡、辺り一帯が一般人立入禁止レベルの心霊スポットと化すって話だ。
そのせいで、1人が「そこそこ程度の魔法使い」になるまでには、マトモな流派でも2〜3人、体育会系気質の流派では一〇人前後の脱落者が出るって聞いた事が有る。
つまり、逃げやがった葛城のおっちゃんは「パニクりにくいし、精神操作系の異能力は効かないし、魔法もそこそこ使えるが、ボンクラ過ぎて何しでかすか知れたモノじゃない」という最悪の阿呆だ。
ちくしょう……。
逃げ出した場合の為に、魔法使い系に何かの呪いでも……って、あのおっちゃんが、ウチの組、唯一の魔法使い系じゃね〜かッ‼
とか、馬鹿な事を考えながら、やっと、ビルのエレベーターに辿り着いた時……。
『おい、正悟、そっちの仕事は済んだのか?』
「あ……あぁ……」
親父からだった。
『おい、仕事中は、親と息子じゃねえんだ。ちゃんと組長に利くような口を利け』
「わかりました、組長」
『じゃあ、すぐに、マミのオジキの仕事場から間違って持って帰った荷物を返しに行け』
あ……。
ヤクザの間では「自分の親分の兄弟分」を「オジキ」と呼ぶのが普通だ。
マミさんは女だが「オバキ」なんて言い方は
なので、マミさんは青龍敬神会の3次団体の組長クラスからは「オジキ」と呼ばれてる。
『いいか、あれを返さなかったら……ましてや無くしたりしたら……ウチの組の連中全員が……
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