第1章:夢をもしあきらめたら ただの脱け殻だぜ

逃亡者・葛城忠雪(1)

 本当は「正義の味方」になりたかった。

 二〇〇一年のあの秋の日にニューヨークの「二つの塔」に大型旅客機が特攻KAMIKAZEした事件で存在が一般に知れ渡った「異能力者」。

 魔法使い系は、実は自分達の同業者(それも本物の力を持ってる奴ら)が自分達が思っていたよりも遥かに多数存在している事を知った。

 妖怪古代種族系も、変身能力者も、超能力者も、実は同類(それも本物の力を持ってる奴ら)が以下同文。

 そして、本当にアメコミやTVの戦隊モノみたいな事が現実に起きるようになった。

 異能の力を持つ犯罪者と、同じく異能の力を持つか、それに対処出来るスキル・装備を持つ「犯罪者を狩る風変わりな犯罪者」が町中で抗争を繰り広げるようになり、気付いた時には、日本では対異能力犯罪広域警察……通称「レコンキスタ」(何の略称なのかはさっぱり判らないが)が創設され、異能力を持つ捜査官や特殊部隊、戦隊ヒーローそのまんまのSWATもどきの部隊が出現し……。

 そして、日本の特撮ヒーローものも、アメコミ・ヒーローものも下火になった。

 余りに生々し過ぎて、普通の人達が普通に楽しめなくなったのだ。

 映画のX−MENは、いつしか続篇の話を聞かなくなった。

 日本では、戦隊モノは製作が中止された。二〇〇〇年代ライダーは5作目を最後に以下同文。その代りに……東映が元々は時代劇が得意なスタジオだったんで、子供向け時代劇が放送されるようになった。

 異能力者が出ないヒーローものだったクリストファー・ノーランのバットマンも傑作と言われた「ダークナイト」の続篇が作られる事は無かった。

 マーベル・スタジオが直接作ったヒーロー映画は……3本目ぐらいで頓挫。

 マーベルはマーベルでもコミックの方は……「シビルウォー」ってエピソードが始まった途端に、偶然にも、本当にアメリカで内戦シビルウォーが始まりやがった。

 子供の頃の同級生達よりも戦隊やライダーから「卒業」するのが遅かった俺にとっては……悪夢のような事態だ。

 しかし、良い事も有った。

 子供の頃に憧れたモノになるチャンスも有ったのだ。

 俺は、ある「魔法結社」の一員になり……幸か不幸か、魔法に必要な能力は、ほぼ全部「5段階評価で4に近い3」ぐらいだったんで、二〇代半ばにはそこそこ程度の魔法使いになる事が出来……。

 だが、そこから運命は急転直下。

 本当に存在するようになった「正義の味方」に成ろうとしても、どうやって、その「正義の味方」達にコンタクトを取って仲間に成ればいいか、さっぱり判らなかった。何せ、「正義の味方」達は極端な秘密主義だ。噂では当の「正義の味方」達でさえ「隣の市で活動している、何なら一緒に『仕事』をする事が良く有るような別のチームの構成員の個人情報は全く知らない」状態だそうだ。

 挙句の果てに、所属していた魔法結社は事実上「魔法使いメインのヤクザ」と化してしまい……。

 そして、十年ばかり前の富士山の歴史的大噴火による首都圏壊滅。

 人命救助を行なっていた「正義の味方」達に「どうやったら、あんたらの仲間になれるんだ?」と、うっかり、訊きそびれ……結局、落ち延びた先の北九州市で再就職出来たのも河童に変身する能力を持つ奴らが率いる暴力団の末端組織。

 いつしか……俺の夢は……ん?

 後方からサイレンの音?

 多分、消防車でも救急車でもなく……?

 あっ?

 何で?

 白バイが俺の車を追って……でも、白バイに乗ってるのは警官じゃなくて、

 

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