簿記二級目指しますよ!

「そんなんもう分からへんし」

「私はこの状況が分からへんわ」

私に抱き締めながら簿記の話を永遠と聞かされる阿須那。しかも酒臭いというこの状況。

「製造関係は二級からやしね」

「でも私、二級取るよ、目指すわ」

「おお、頑張ろう」

「うぇーい」

拳同士でタッチ。訳アリ同盟バンザイ!


だって二級取らないと、簿記出来る人と思われにくい。逆に言えば二級取れば、簿記ができる人として経理事務で雇ってもらえる。大学出てきた人たちと肩を並べて働けるし、資格無し大卒よりももっと色合いがはっきりしていて「あ、この人は将来的に経理を任せられるんですね」って分かりやすい。だから、二級までは絶対取る!酔っているから今日は強気で本音の宣言してしまった。気が済んだので阿須那を解放してあげた。


「江崎さんて、なんでそんな実務知っているんですか?」

「僕は家が経営者だから、たまに手伝いで経理を見ているから。だから‥‥」

「ああ、なるほど、それでですか」


阿須那ちゃん、江崎君と仲良くしてくれ。お願いします。ひょっとしたら、何かの間違いがあれば私たち‥‥いや、無いか。。。


「角谷さん、覚えてる?」

「うん?忘れてる」

もうダメだ。

「ハハッ、いきなり忘れてるって。学生時代の写真今度見せ合おうって」

「う~ん、何かそんな話あったね‥‥」

「だって僕がモテなかったことを信じてくれないから」

「うん‥‥信じれません」

「確かにそれは信じられないかな」

「ええ?阿須那さんまで?」

まだ完全に笑ってないけど、少しだけ江崎君に笑顔を見せている気がする。

――――気がする気がする‥‥ああ、耳がキーンて鳴り出した。視界もぼんやりしてきたなあ。。。今日の私、頑張った、不出来なくせして、、、頑張ったよ。

「ちょっとじゃあ、今すぐデータ出て来ないから、出てきたら見やすくさっと出せるようにして見せますんで。その代わり角谷さんも学生時代の写真見せてくださいね」

「‥‥‥はい」

「‥‥‥だいぶ出来上がって来てますね」

私が解説できるのはこの辺りまで。皆の声が遠くなって行き、視界がスゥっと青白くなったなあと思ったらどっちが空でどっちが地面かが分からなくなった。



「お‥‥!お姉ちゃん?お姉ちゃん?こんなとこで寝たらあかんよ?」

「おお、角谷さん大丈夫かな?」

「お姉ちゃんめっちゃ半笑いなんですけど」

――――うん、これでも大丈夫。強い味方が、天使が二人いるんだもん。

その味方の方々に迷惑がかかるというところまで、もう脳みそが回らなくなるのであった。

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