第24話 動画
【ラリラ博士】がこの島にやってきて数日が経過した。コミュ障の俺も少しだけ、話すのに慣れてきた。
「はああああああ!? グレンに勝った?! マジで言ってんの!? アムダ君」
「あ、はい」
「はあああああああああああああ!? マジ!? ちょ、ちょっとやばすぎ……グレンが負けたの見たことないんだけどぉ!?」
相変わらず脳の処理が追いつかないと発狂をする彼女であるが、少しだけ慣れてきた。
ただ煩いだけなら、この島から摘み出すが彼女は確かに有能だった。だから、置いている。
彼女の家から持ってきた沢山の資料を見たが、正直内容は分からん。ただ、優秀なのはなんとなくだが分かった。約束の病気のワクチンもちゃんと作っているようだしな。
『あの小娘、作ってるのは間違いないわ』
クイーンが全てテレパシーで読んで解決してくれる。正直内容は分からんから助かる、ただクイーンは俺と俺のエレモン以外の心の声はあまり聞きたくないらしい。
【ラリラ博士】はテントを持っており、それを広げてそこで研究とかをしているようだ。ただ、研究機関があんな感じなテントの中にあるのは、納得いかない。
ワクチンを作るって約束は、俺のエレモンが病気になった場合の処置として締結している。あんな安っぽい場所で作られるのはどうだろうか?
もうちょっと、ちゃんとした研究場所を作るのは考えても良いな。
「……あ、そろそろ苗木とか植えたの見に行こう」
「え! 僕も行く!! 行こうぜ!」
【ラリラ博士】は俺がすごく気になるようだった……うう、じっと見てくるのは正直、慣れない。コミュ障にとってこう言うグイグイくる人はすごく苦手だ。エレモンがきてくれるのは得意だけど。
──島を歩く。
最初はただの凹凸ある大地だったが大分、色がついてきた。デカイチゴの木、植えた苗木の数々。
特に苗木は最初に植えた時から、更に沢山植えている。ガイア帝国の【ガイア大将】である【ダルダ】の賞金を得てからの更に植えている。
「ほえぇ!? あ、あれ!? この間より、木がめっちゃ伸びてない?」
「あ、そ、そうですね」
「いや、そうですね! じゃないって! どう考えても物理法則超えてる伸び方してるって!!」
エレモン居る時点で物理法則とか関係ない気もするけども。まぁ、まさか【第二主人公】が居る【和ノ国】の伝説のエレモンの力を使っているとは思わないだろうな。
以前の苗木より、とんでもない速度で成長をしている。俺の背丈を既に超えている。
うむ、これならあっという間に大樹になりそうだ。一ヶ月もかからないかもしれない。
そうなったら川とかも作って本当に森みたいにしてあげようと思っている。
「こんなに早く木って成長するかな? 土が良いのかな? 調べないと……」
「あ、そう、ですね」
土も良いけど、【セレナリス】が自然活性化の力を持っているからだけど。この人、Lランクエレモン見ると脳の処理が追いつかなくなるから今は黙っていよう。
『アンタ、クイーンであるアタシを放っておいて、そんなのと一緒なのね!!』
「違う! 俺はクイーンの方が大事だよ!」
「急に大声だして怖い!!!」
「あ、はい」
この人だけには言われたくない。
まぁ、大分木々は既に良い感じになっている。これが終われば水系、火系、など系統別に分けて住む場所を作っていきたいなと思っている。
やることが次から次へとやってきている気がするなぁ。ふっ、それが良いんだけど!!
「あ、僕は研究に戻るから! この木、どうしてこんなに成長したんだ……」
【ラリラ博士】は木々を眺めている。ああ見えて本当に天才らしい、エレフォンで調べてたら、彼女はマジで天才で学会が捜索願を出しているとかなんとか。
さて、そんな彼女はパソコンを沢山持っているらしい。自分に合わないと思ったら捨ててしまうらしいので、ほぼ新古品状態で残っている。
なのでそれをもらった。
「これで、動画投稿でもしてみようかな」
『へぇ、アタシも出れる?』
「う、うん。流石にダメな気がする。目立つとアレだし」
『なんでよ! アタシも出たいわ!』
そう言いながらクイーンは俺の頭の上にいた。銀色の毛並みが今日も美しい、狐姿も愛くるしい。
『この島バレてないから大丈夫じゃない? てか、どう言う動画あげるの?』
「うーん、ご飯動画しながら、ラジオみたいなトーク……かな。エレモンと飯食ってる動画を顔隠してやろうかな」
『それなら、アタシが出た方がいいじゃない! 世界で一匹しかいない珍しいエレモンだから、バズるわよ! それに、顔出ししてなくてこの島も基本はばれないんだから問題ないわ』
確かに一理あるな。
この島には何よりもお金が必要だよなぁ。バレるわけないし、やるだけやってみようかな……
「じゃあ、ご飯食べながらラジオ動画みたいな感じで……ゲストでクイーンで」
『ふふふ、分かったわ』
◾️◾️
「お父様やお母様なら、もっと上手く出来ていたんでしょうけど」
「ひしゃ……」
「姫マル……ありがとうですわ」
ワタクシを励まそうとしている姫マル。不甲斐ないばかりに負けさせてしまっているのに優しい。
「はぁ、実家に帰ってきましたが……頑張る気力が出ませんわ……」
「ひしゃ!」
「一緒に寝てくれますの?」
最近は実家の屋敷で引きこもっている毎日。自堕落に過ぎていく時間がどこか罪悪感がある。
「暇ですわ、でも、外に出る気力もない……かと言って家でやることも」
「ひしゃ!!」
「……外に出ようと言いたいんですわね。でも……ワタクシ自信が」
自信が消えてしまった。ガイア帝国の後に、エレメンタルコード6つ目に挑んだ際そのコード・バトラーにも大敗している。
「ひしゃ……」
可愛らしい猫の姿、着物着ている猫の姫のような風貌。本当に可愛らしい姫マルが悲しい顔をするとワタクシも悲しくなる。
「……はぁ、何か気分転換に動画でも……」
エレフォンでずっと動画を見ているだけで毎日が過ぎていく。それで良いとは思わないけども……
「あ、みたことない人が動画投稿してますわ……登録者0人……【エレモン仮面のオールナイト】」
どこかの島でエレモンとご飯を食べている仮面テイマーと【見知らぬエレモン】のサムネが乗っている。
『エレモンこんにちは。エレモン仮面……です、エレモモーンニング』
挨拶捻ろうとしてダサくなっているパターンの動画投稿者だ。
『このチャンネルは、エレモンをゲストに呼んでトークを交えながら、ご飯を、食べて無人島でラジオみたいな動画あげたりする感じです』
エレモンとどうやってトークするの!?
最初からツッコミどころ満載だ!! この動画投稿者!! エレモン仮面!!
『えと、今日はゲストに『クイーンフォックス』と言うエレモンを連れてきました』
『──クス!!』
『銀色の毛並みが美しいエレモンですね、狐に酷似している姿です』
……このエレモン見たことないけど、どうなんだろう? 後でお父様に聞いてみよう。
『えと、お便りとかあれば読んでいきたいのですが何もないので、今日は【クイーン】とお話をしていきます。えと、最近銀色の毛がパサついているのでトリートメントみたいなのが欲しいと』
『──クス!』
『なるほど、紫外線も髪とかを痛めるって言うからね』
こ、この人、マジでエレモンと話してる……エレモンもノリノリで話してるからマジで話してるの!?
いや、単純に話してると思い込んでる変な人なのかも、それに加えてこのエレモンは主人のテイマーに合わせて適当に返事をしているのかもしれない。
「変わった人がいますのね」
「ひしゃ!」
「ふふ、姫マルもこのヘンテコな仮面のテイマーが気になってますのね。折角だし、1番最初に登録しておきます、それに感想もしてあげましょう」
──感想を書いた、チャンネル登録をしておいた……
【チャンネル登録しました! 見たことないエレモンですね! エレモンの心の声が聞こえるのですか?】
【チャンネル登録ありがとうございます! テレパシー使えます!】
あ、そう言うスタンスなんだ。そう言えばお便りがあれば読むって言ってた。送ってみようかな。
【最近、中々【エレモンバーサス】で勝てなくて……どうやったら勝てるようになりますか? エレモン全体的にレベルが上がりづらくなってて伸び悩みも感じています】
……馬鹿馬鹿しい。こんな人に聞いて良い回答が返ってくるわけが
【次回ラジオで取り上げますね!】
……うーん、まさか、良い回答が返ってくるわけないけど、次回はちょっと聞いてみようかな
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