第23話 残留
正直に言えば追い出すつもりだった。
【ラリラ博士】、名前だけなら聞いたことがある。ゲームでは【ガイア帝国】に研究資料が漏れたことで責任を追及された存在だ。
学会っていう博士同士の情報共有するコミュニティで、居場所がなくなって息抜きに船旅をしてたら【シア帝国】っていう【ウミノゾア】を狙う組織の実験に巻き込まれて【死亡】するんだったような……
【エレメンタルモンスターズ・パラダイス】と言うゲームは時折、ブラックなイベントがあったりするからな。
まぁ、今回、死亡をせずに俺達の島に流れ着いたのは幸運なのか、不幸なのか……幸運か。
この島がバレたのは嫌だけど、まぁ、幸運と捉えておこう。【ラリラ博士】はゲームだと名前だけのキャラなんだよな。なんとなく設定は知ってるけど、こんな姿だったとは。
ピンク、薄桃色の髪の毛団子二つヘアー。身長は150くらいか。17歳で随分と童顔な印象。
主人公モエと同年代と言っても正直不思議じゃなくらいだ。
ただ、知識や経験、知能はこっちの【ラリラ博士】が上だろう。エレフォンで調べたが確かに相当の天才のようだ。
博士はもっと上の年代にならないとなれない人が多いらしい。年齢が博士に必要なのではなく、それほど勉強や実績を積まないといけないのだ。
具体的にはエレメンタルコードを18個全て集めないと無理らしい。
ゲームだと博士の事情とかそんなに説明されなかった。まぁ、ユーザーからしたらそこまで重要でもない情報だからね。
ただ、博士の彼女が優秀なのが再度分かった。本当に優秀なんだろう。
エレモンのワクチンとかを開発してるらしいし。やはり、ゲームだと病気とかは存在しない。
だが、現実になると多少病気とかは存在してしまうらしいのだ。
──だから、彼女を島に置くことにした。
天才、しかも若く発展途上な天才だ。本当は追い出したいけど、この島にいることを許可していこうじゃないか。
「この島、絶対テラゴラムだね! いやー! 調べがいがあるな!!」
「あ、テラゴラムなら持ってます」
「へ?」
彼女はどうやら【テラゴラム】と言うより、【Lランク】系統のエレモンが特に気になっているらしい。
だから、見せてあげようと思った。彼女曰く、今後、この島の外には行くつもりはないらしい。
外の世界の身分はほぼ捨ててここで過ごしたいと言っている。
なら、見せても問題ないだろう。海の底から水面を破るように二体の【テラゴラム】が姿を現した。
──現れただけで、微かな波が起こる
「──テラゴラム二体、い、います」
「……あ、そ、そうなんだ。こんな形であっさりと夢が叶っちゃった……あれ? なんか簡単すぎて達成感が……あ、あれ」
あれ……流石に【テラゴラム】を出したら喜ぶと思っていたんだけど……。
な、なんか呆けている!?
「……え!? マジで?! こ、これ本物!?」
「そ、そうです」
「きゅ、急に実感が……ご、ごめん、僕脳の処理が追いつかなくてあれ!? た、確かに!? 伝承と似ているような!?」
【テラゴラム】二体を海に放っているんだけど、じっと二体はラリラ博士を見ている。
ツノが2本あり、全身が大理石のような白の肉体を持っている大怪獣。尻尾もあり、凶暴な鉤爪を手にも口の中にも保有している。
「う、うっそ!? す、すげぇ!! ようやく僕の脳の処理が追いついてきたよ!!」
あ、脳の処理が追いついてきたんだ、それならよかった。
「す、すごい! 伝承が……あれ!? ちょっとなんで!? 二体いるの!? 脳の処理が追いつけてきてとんでもない事実に気づいてるんだけど!!」
あ、脳の処理が徐々にちゃんと作用してるらしい。
「ふぇ!? あ、あ!? あああああああああああああ!? おやおやおや!? えええええええ!?」
脳の処理が追いついてないみたいだ
その後、十分位彼女は叫び続けていた。そして、本当に脳の処理がおいついてちゃんと話せる状態になった。
「──ケホケホ、叫びすぎて喉痛い……」
「え、えっと、の脳の処理は?」
「飲み込めたよ。だいぶね。うーん、歴史上空想と言われたエレモンが二体居るってどういうこと?」
さて、なんて話すべきだろうか。転生したんだけど、前世でやり込んでたゲームのエレモン全部持ってきたとか言っても余計面倒なことになりそう。
「お、俺もよく、事情は分からず……まぁ、なんだかんだで捕獲、みたいな」
「いや、全然理解できないんだけど」
転生とか言っても脳の処理がまた追いつかなくて発狂しそうだし。適当にこの子は流せておこう。
「この島は君の?」
「は、はい」
「島にいるエレモンも全部君の?」
「はい……」
嘘だろ? みたいな目つきでこっちをみている彼女。
「何体いるの? ぱっと見だけど結構居たような……」
「え、と、かなり居ます」
「ほへぇ。研究しがいありそう!!」
「あ、えと、下手なこととかはやめてください、傷つけるとか」
「それはないよ! 僕は観察とか、落ちてる毛を拾ったり、舐めたり」
「ま、まぁ、それくらいなら……ん?」
最後変なことを言っていたような気がするけども
『嫌よ! こんな変な女に舐められるとか!!』
やっぱり舐めるって言ってたよね!? クイーンも流石に舐められるとかは嫌だようだ。
「な、舐めるとかはちょっと」
「ええええ!? 舐めるって舌でぺろぺろするって意味だよ!!」
『それが嫌って言ってんの!!』
「そ、それがダメ、です」
舐めるってやばいこと言ってるな。白衣を着てるから博士っぽく見えてたけど、ただのアホに見えてきた。
「えぇえ!? あ、うん。なら採血は? ウイルスとかなら調査するのに必要だけど。君はそれが欲しいわけでしょ?」
「え、えと、そう、です」
「なら、採血はどうする?」
「それは、許可です」
「採血いいのに舐めるのダメってどう言うこと!? 舌でぺろぺろして知りたいんだけど!!」
さて、発狂するのは無視しよう。淡々と許可を出して、却下をしていく関係にしていこう。
「えと、研究資料とか、器具とかって」
「あ、僕の家とか研究施設があるね。どうしようかな? ここに住むつもりだし」
「……えと、住むつもり?」
「そう!! 研究対象!! 究極の研究対象に包まれて生活するなんて!! 夢だよ!!! おやおやおやおや! あそこにいるエレモンも気になるぜ!!!」
この人、図々しいな。まぁ、天才ってこんなもんか。
「えと、成果でなかったら、クビ、強制送還、です」
「いいよ! 僕天才だから、ワクチンとか処置なら任せな!!」
へぇ、言い切るってことは相当自信があるんだな。さて、それはそれとして研究器具とか無いとダメか。
「なら、テレポートで、器具とか取り行きますか?」
「そうだね! 行こうぜ! あ、名前なんていうの?」
「……あ、アムダ」
『あら、本名を言うのね』
クイーンも本名を言ったのは意外だと思ったようだ。正直言うと俺も言うか迷ったな。
ただまぁ、一応はこの子を雇うって言う身になるわけだし。名前は明かさないといけないかなって思った。
『ふーんならいいんじゃない? 王の決断に異を唱えはしないわ』
クイーンも多分どっかで会話を聞いているんだろうな。この【ラリラ博士】を受け入れることに彼女も了承をしてくれたのはよかった。
「あ、ここって無人島?」
「俺、以外には、いないです」
「ほぇ!! 僕一人で研究できる施設好きなんだヨォ! ふふふ、最高じゃん!」
「あ、はい、成果出ないと、クビ、です」
「いいよ! 勿論出すぜ!」
「えと、そろそろ、ワクチンできますか?」
「いや、そんなすぐには無理だよ!!」
あ、そんなすぐには無理なのか、ワクチン作ったことないから分からない。毎日聞くか、いつワクチンできるのかって
『ブラック企業の社長みたいね。まぁ、この島には労働規則など皆無なわけだし、問題はないと思うわ』
確かに! 労働規則とかないから問題ないね!! まぁ、流石に健康状態は気にするけど。
「あ、その」
「どうしたの?」
「ぱ、パソコンとかって持ってます、か?」
「あるよ! 僕結構買っててさ、使い勝手が合わないとほぼ新品でどっかにやってるから、あげる!」
あ、これでブログとかできるな。そろそろそう言った部分でもお金を稼ぎたいと思っていた。
ちょうどいい、やろう。
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