第14話 お前のことが好きだ
「だ、大丈夫です。ていうか、主任がもっと早く連れ出してくれたらこんなに悩むこともなかったんですからね!!」
あ、あれ?
さっきまで怖くて口に出せなかったはずなのに、なんだか止まらない。
自分の意思とは関係なく、理性を素通りして口から飛び出してくる自分の感情。
「いいですよねー主任は。綺麗な女の人に囲まれてイチャイチャしてるだけでよかったんですからー」
「イチャ……っ!! いや、水無瀬、それは──」
「どーせ一緒に泊まるなら綺麗でセクシーなあのコンパニオンさん達みたいな人が良かったって思ってるんでそぉー!!」
「は!? おまっ、何言って……!?」
あぁ、ダメだ、止まらない。
もはや自分が何を言いたいのか、何を言っているのかわからないし、自分で自分が制御できない。
確かなのはそう、ただふわふわとしているだけ。
「……私みたいな陰気なくらげ、罰ゲームぐらいでしか告白もされなければ意識もされないですもんね……。本当……どうせ、わたしなんて……。こんなくらげじゃ、主任に好きになんてなってもらえるはず、ないですよね」
「っ……!? お前……」
ふわふわとしていても、胸の痛みだけは感じられる。
自分が嫌いだ。
自信のない自分。
可愛げのない自分。
弱い自分。
今みたいな自分。
頭が重い。
やっぱり吞みすぎたんだろうか?
頭と共に瞼まで重くなって、閉じてしまいそうなそれを必死でつなぎとめる。
「……それ、誰が言った?」
「へ? ひゃぁっ!?」
虚ろな意識の中、私の布団に入り込んできたのは、紛れもなく主任で──。
私の上に馬乗りになった主任によって、私の身体はすっぽりとその長い腕で抱きしめられてしまった。
しばらくして私を抱きしめていた主任がゆっくりと身体を起こし、私を押し倒す形で、上から真剣な漆黒の双眸が私を見下ろす。
「誰が、くらげじゃ俺が好きになるわけない、なんて言った?」
「っ、それは……私が……」
私がそう思っているだけだ。
だけどきっと皆そう思っていて──。
「お前が思ってるだけなら、くらげなんてあだ名と一緒にそんな意識捨てちまえ。こっちは思いもよらない事態で必死に理性と戦ってるんだから、変な意識で煽るな」
「!?」
理性と戦ってる?
え、ごめんなさい。思考がついて行かない。
ぽかんと間抜けな顔で見上げる私に、大きなため息が降って来た。
「はぁー……。……俺は、お前のこと、好きだよ」
「────は!?」
耳が、おかしくなった?
今、主任が、私のこと好き、って……。
私は今、自分に都合のいい幻聴を聞いてるの?
それとも──。
「……とりあえず自分の中で自己完結だけはさせるな」
「は、はい」
主任は呆れたように言うと、私の上から退き、隣に座って私の手を引いて身体を起こさせた。
「いいか、よく聞け。俺は、お前のことが好きだ」
「ひゃいっ!?」
幻聴じゃなかった!!
衝撃的な言葉に思わず変な声が出てしまった。
私のことが好き。
確かに聞こえたその言葉に、どんな顔をしたらいいのかがわからない。
なぜ?
いったいいつから?
どこを好きに?
いろんなクエスチョンマークが脳内を埋め尽くす。
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