ダンジョン&サイバーパンク(休載)

パクリ田盗作

第1話 ダンジョンアタック


 砂漠の砂に埋もれたビル郡の隙間を一台のバギーが砂塵を巻き上げて通りすぎていく。


「しっかし、ここが百年前はサラリーマンでごった返すビジネス街だったとは全然思えねえな」


 バギーの後部座席を一人で占拠する大柄な男が缶ビールを飲みながらそんなことを言う。

 大柄な男は筋骨隆々のゴリマッチョ、ライオンの鬣のような赤い髪型に、顔には皮膚に埋め込まれたミラーシェイドと額から顎まで一定数感覚でビスが打ち込まれている。

 特に目立つのは男の頭部から生えている水牛のような立派な角だった。


「それが今じゃダンジョンとモンスターがうようよする放棄された地区なんだよねー、正に世紀末って感じ、アハハー!」


 水牛のような角を生やした男に応えるように助手席から後部座席に顔を覗かせる一人の少女。

 まだ中学生ぐらいに見える幼い体躯にビンク色のストレートロングの髪に褐色肌、ツンっと尖ったエルフのような耳をピコピコ動かしながらアニメ声のような高い声で笑う。


「アステリオス、ダンジョンアタックの前にあまり飲みすぎるなよ。リコリス、ARO強化マトリクスで今回のミッションを再確認してくれ」


 バギーを運転していたカソックコートをきた陰鬱そうな男がバックミラー越しに角が生えた男を注意して、助手席に座るピンク髪のエルフに声をかける。


「へっ、こんなので酔えるほどやわじゃねぇよ、ルイ」


 アステリオスと呼ばれた角が生えた男は飲み終えた缶ビールを片手でやすやすと握り潰して砂漠に投げ捨てる。


「御意ー!」


 リコリスと呼ばれたエルフの少女は何もない空間に向かってフリック操作すると、三人の目の前にホログラムの立体映像が表示される。


「今回の依頼はエクスプローラーギルドが管理するエリアに新たに生まれたダンジョンの破壊だよー。事前の調査でダンジョンは洞窟タイプ、生息モンスターもゴブリンのみだって書いてるよー」

「破壊? いつものような間引きじゃないのか?」


 リコリスは目の前に表示される立体映像の文字を読み上げる。

 アステリオスは新しい缶ビールの蓋を開けてグビグビ飲みながら疑問を口にする。


「魔力測定でFに限りなくEランクダンジョンっぽくてー、車ないときつい距離でビギナー向けにしても維持管理コストが割に合わないんだってさー」


アーニャが空間を操作してダンジョンに関するデータをARO強化マトリクスに展開して、目的のダンジョンがなぜ破壊する必要があるのかアステリオスに説明する。


「ダンジョンに生息してるのも魔石以外価値のないゴブリンだけだ」


 ARO強化マトリクスには緑色の肌をしたオラウータンを醜悪にしたゴブリンと呼ばれるモンスターの詳細なデータが表示される。


「アステリオス、今回は銃はなしだ。ゴブリン相手に銃は割に合わん。弾代自腹切るなら別にいいが」

「経費にならねーなら射たねえよ。ゴブリン程度なら俺のポールアックスで十分だろ」

「むしろお釣りの方が多い気がするー」


 ルイと呼ばれたバギーを運転しているカソックコートの男はアステリオスに銃を使うことを禁じる。

 アステリオスは荷台にくくりつけたポールアックスを指差し、リコリスは後部座席にいる大男が振り回すポールアックスで粉砕されるゴブリンを想像してこれから起きる惨劇に同情する。


「あれが目的地だ」

「確かにダンジョンゲートが出来てるねー」

「エクスプローラーギルドはよくこんな辺鄙な場所のダンジョンを見つけたな」


 しばらく砂漠を走りつづけると、倒壊した高速道路の料金所が見えてくる。

 本来は車が通過する料金ゲートの一つにぽっかりとダンジョンの入り口である黒い穴が浮かんでいた。


「んとねー、ここら辺で残骸漁りしていたスカベンジャーが発見してギルドに通報したんだって」


 リコリスはARO強化マトリクスを操作してこのダンジョンがどうやって発見されたか検索して読み上げる。


「そのスカベンジャーには一杯奢らないとな、お陰で俺達は仕事にありつけたしな」


 アステリオスは飲み終えた缶ビールをまた片手で握り潰して投げ捨てると、バギーの荷台にくくりつけたポールアックスを手にして降車する。


「パトローラー、ドーベルマン、起動」

『オーダーを確認、起動します』


 リコリスが車から降りてバギーに向かって喋りかけると、バギーの荷台から複数の小型の円盤型飛行ドローンと機械で出来たドーベルマンが降りてくる。


「ルイー、車を魔法で見えなくしてー」

「わかってる。隠蔽カモフラージュ


 リコリスが荷台から降りてきたドローン達の動作をチェックしながらルイに話しかける。


 ルイは首から下げている純銀製の十字架を握りながら何か呟くと、バギーの姿が消えた。


「相変わらずルイの魔法はすげえな! 俺のサイボーグアイに搭載されてる熱感知サーマルでもバギーが認識できないぞ。でもここにある感触はあるな」


 アステリオスは見えなくなったバギーを探すように手探りして感触を確かめている。

 第三者が今のアステリオスを見れば、まるでパントマイムでもしているように見えただろう。


「アステリオス、先頭を頼む」

「おう、皮膚装甲もこないだチタンに変えてきたからゴブリン程度じゃ傷つかねえよ」


 アステリオスは自分の胸を叩くとガンガンと胸から金属音が響く。


 ポールアックスを肩に担ぐアステリオスを先頭にして一同はダンジョンに潜る。


 ダンジョンゲートと呼ばれる黒い穴を潜り抜けると、ビルが埋もれた砂漠からまるで画面が切り替わったように天然の岩洞窟に風景が変わる。


「リコリスはパトローラーでダンジョン内をマッピング。ゴブリンにはPINを刺してくれ」

「御意! あ、パトちゃんも魔法で消して」


 ルイはリコリスのパトローラーに隠蔽カモフラージュの呪文をかけるとパトローラーの姿が消える。


「探索完了! それじゃ皆のARO強化マトリクスにマップ表示するよー」


 しばらくダンジョンの入り口で待機すると、パトローラーでの探索が完了したのかリコリスは三人の視界に表示される立体映像にパトローラーに搭載されたカメラ映像と、2Dマップが表示させる。


「みた限り魔法使うタイプはいねえな?」

「Fに近いEだもんねー。今のところパトちゃんが見つけたゴブリンはノーマルタイプばっかり」

「おそらくダンジョンボスが魔法を使うゴブリン辺りだろうな」


 ルイ達の視界に表示されるARO強化現実のマップには、次々とゴブリンを表すPINが貼り付けられていく。


「そういやゴブリンの魔石って、今いくらだっけ?」

「んとねー、今の相場は一つ五ネオエンだよー」


 先頭を歩いていたアステリオスがリコリスの方に向いてゴブリンの魔石の買い取り相場額を聞くと、リコリスは検索したのか現在の相場を伝える。


「やっす!? 魔石一個で俺が飲んでた合成缶ビール二本分かよっ!」

「Eランクダンジョンのゴブリンだからな」


 あまりの安さにアステリオスは呆れ、ルイがぼそりと呟く。


「ショートカットして道中遭遇したゴブリンの魔石とコアだけ持って帰ろうぜ、いちいち小銭なんか拾ってられねえよ」

「それにさんせー。それじゃあコアルームまでの最短ルート表示するねー」


 アステリオスがやる気なくしたような声で提案すると、リコリスがコアルームを見つけたと報告してARO強化マトリクスのマップにルートを表示する。


「さっさと終わらせるか」

「んだな、帰ってスピットファイアで飲みたいぜ」

「アステリオスー、まだ飲むのー?」


 アステリオスがコアルームを目指して走り出すと、それについていくようにルイも走り出し、リコリスは犬型ドローンのドーベルマンに騎乗してついていく。


「ギキャッ!」

「おらっ!」


 コアルームに向かう途中、進路を妨害するように現れたゴブリン達をアステリオスがポールアックスで一掃する。


 アステリオスはサイバーパーツで身体を強化しており、その巨体とサイバーパーツで強化された筋力でポールアームを振り回せば、ゴブリン達は肉片となって粉砕されていく。


 ゴブリン達も錆びたナイフや石鏃の弓矢でアステリオスに応戦を試みるが………


「きかねぇんだよっ!!」


 アステリオスのチタン製の皮膚にはかすり傷一つつく様子はなく、逆にナイフは欠けて折れ、石鏃の弓矢は逆に跳ね返される。


「おいたはダメだぜ」


 アステリオスは自分を刺そうとしたゴブリンの一匹の頭を鷲掴みして持ち上げると、獰猛な笑みを浮かべて投げ飛ばす。


 投げ飛ばされたゴブリンは水平に飛んでいき、自分達の群れに激突すると、ゴブリン達はポーリングのピンのように吹き飛んでいく。


「これ私達の出番ないねー」

「その為のサイバーサムライのアステリオスだろ」


 後ろからついてくるアーニャとルイはただハリケーンのように突進して暴れるアステリオスの後ろをついていき、進行ルートにあるゴブリンの魔石を拾い集めていく。


 ルイが言うサイバーサムライとは、身体を機械で改造した戦士につけられる名称だ。


「お、コアルームだ!」


 ダンジョンを進んでいくと、天然の岩洞窟には不似合いな金属の扉が見えてきた。


「おしっ! たのもう!!」


 アステリオスはコアルームに続く金属の扉を蹴破り、中に入っていく。


「イギャーラ!」

「うおっ!?」


 アステリオスがコアルームに突入すると、アステリオスに向かって炎の塊が飛んでくる。


 コアルームのボスであるソーサラーゴブリンが侵入者の不意を突くように魔法を準備して待ち構えていたようだ。


魔法盾マジックシールド。あまり怪我しないでくれよ、機械を埋め込んでるお前は魔法で治しにくいからな」

「ひゅー………助かったぜ、ルイ」


 ゴブリンソーサラーが放った炎の塊はアステリオスに命中する前に半透明の盾に防がれて霧散していく。


 アステリオスはルイに振り向いてボリボリと頭をかきながら礼をいう。


「選手交代だ」

「あいよ、俺はあんなオカルトには弱いからな」

「イギャーラ!!」


 アステリオスと交代して前衛に出るルイ。

 そのルイに先手必勝とばかりにソーサラーゴブリンはまた炎の塊を放つ。


「無駄だ」

「グギ………ギ……」


 ルイはまた魔法の盾でソーサラーゴブリンの炎の塊を防ぐ。

 ソーサラーゴブリンは二度も自分の攻撃が防がれたことに動揺して後退る。


「さっさと終わらせてらう 火炎嵐フレイムストーム

「ギッ!? ギャアアアアーッ!!」


 ルイが十字架を握りながら呪文を唱えると、ソーサラーゴブリンの足元から火柱が吹き出し包み込む。


「相変わらずルイの魔法は凄いね」

「ルイだけは敵に回したくねぇぜ」


 アステリオスとリコリスは、ソーサラーゴブリンを焼き付くす火柱を見上げて、呆れるような様子で呟く。


 ルイがパチンと指を鳴らすと火柱が消え、火柱が消えた場所にはソーサラーゴブリンの姿は影も形もなく、そこには握り拳大サイズの魔石があっただけだった。


「後はこいつを持ち出せば終わりだなっと!」


 アステリオスはコアルームの台座にある紅い多角形水晶のようなダンジョンコアを取り外す。


 すると、ダンジョンが揺れて徐々に回りの風景が溶けるように天然の岩洞窟からビルなどが倒壊して埋もれた砂漠に変わっていく。


「ダンジョンクローズ確認、報告用の映像も撮ったよー!」

「おっし、ネオトウキョウに帰るか! 報告終えたらさっさと飲もうぜ!」

「本当に飲んべえだな、お前は………」


 周囲の風景がダンジョンに入る前の砂漠に変わると、リコリスがパトローラーを見ながら報告し、アステリオスは酒を飲むジェスチャーをしながら二人を飲みに誘う。


 ルイはバギーの姿を隠す魔法を解除しながら呆れたようにアステリオスをみていた。

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