《ROUND1−3》生肉と咆哮とカマキリ
――TIPS――
【VR格闘ゲーム・拳華成闘】
超次元ゲーム西暦・0005年よりリリース。40年以上の歴史を持つ最大級のリアル・ヴァーチャル両用型格闘ゲーム。
正統・異種・総合といった格闘技の枠を超え、ファイター達の願望を叶えるべくして生まれた格闘ゲームの真骨頂。
参加する為には、【拳華印輪】と呼ばれる腕輪を装着しなければならない。装着しなければ、敵の攻撃が致死ダメージとなるほか、自分の攻撃を受け付けない。
〚SETTING...〛
――リスタート・イン・マッチ!
遂にベールを脱いだ新格闘ゲーム『拳華成闘』!!
その初陣を飾るは、天翔道流のファイター・高橋豪樹。相対するは、奈落道流ファイター約30名との多人数乱闘。
雑兵が何人掛かって来ようとも、豪樹に向かうところ敵なし。アイアンフィスト拳の空手技から波導エネルギー放出とで一網打尽。これにて一件落着と思いきや……
「そうは問屋で大根卸さねーんだよぉぉぉ! キヒャヒャヒャヒャッッ!!」
密林の奥から、ソニックブームを思わせる衝撃波を撃ち、不意打ちに吹き飛ばされた豪樹と玲王。
豪樹の頭上にHPゲージが現れ、微小ダメージが与えられてゲージが減少された。
「惜しかったなぁ〜、マトモに喰らえば一発KOだったのによぉ。ま、それでやられちゃツマンネェよなぁ、天翔道の豪樹さんよぉ」
「ほざけ、こっちは関わりとう無かったがな。あと一応天翔道言うても、ワイはコーチのつもりやし」
天翔道と、豪樹の名を知りつつ、不意打ちのソニックブームを与えたモヒカン頭の拳士男。
彼こそ奈落道流のならず者を率いて、名もなき島に侵入してきた親玉。その名を『奈落道・カマキリ拳使いのマンテラー』と呼びます。
そして彼の腕には、豪樹と同じく【拳華印輪】の腕輪が装着されている。『拳華成闘』では、このように後から乱入して攻撃、戦う事も出来るのだ。
マンテラーは密林の木の上から飛び降りて、直に豪樹と対面する。
「ならば今度はマジで喰らわせてやる。この俺様に痛ぶられてからそのケースを渡すか、或いはケースを渡した後で俺様に痛ぶられるか? 選択の余地を与えてやるよぉ」
「どっちにしてもボコす気満々やないか。どっちもお断りじゃ」
「キヒャヒャ、そうやって強がってりゃいーさ。そこから与えられる苦痛と悲鳴は絶品だからなぁぁぁぁッッッ」
殺気共に臨戦態勢に入るマンテラー。構えは中腰、手先はまるで鎌の如く、鋭く尖った手刀。そして体内から溢れ出す覇気は、怨念の邪気から噴出された昆虫の形の波導! その昆虫とは……
「あっ、カマキリだ!!」
豪樹の横で傍観する玲王が、その波導の形を見抜いた!
(! ……コイツ、【
等と豪樹が玲王に内心驚いているのを他所に、マンテラーが仕掛けてくる!!
「余裕カマして余所見してりゃ、隙ありいいいいいいッッ!!!!」
「危ねッッッ?!」
鎌の如く鋭く放たれるマンテラーの手刀、それを豪樹が片手で弾ければ、忽ち繰り広げられる拳と脚との組手合戦。これぞ格闘の醍醐味であります。
互いのHPゲージが互角ながらもジリジリと削られ、五体弾け飛ぶ拳華の火花。勝負は五分五分と言いたいところだが、決してそうではない。
「キヒャヒャヒャ、片腕にケースを担いでりゃ、マトモにアイアンフィスト拳が発揮出来ないってか?」
「そりゃ三下に対するハンデじゃ。最も、ケースを奪わないなんて保証は何処にもねぇ……痛っ」
それでもマンテラーに抗う豪樹。裂脚を繰り出した後に間合いを取って様子を見るも、一瞬豪樹の身体から痛みが走る。左腕にナイフで引き裂かれた傷口から来ていた。
「おっとぉ、さっき手下にやられた時の傷か。ならばっ―――!」
――――シュバッッ
「ガァッッッ……!!!」
マンテラーから繰り出す縦殴りの手刀。これを傷口目掛けて打ち放てば、その衝撃は斬撃となって豪樹の傷口を抉っていく。さらに追撃で、もう一発……!
「カマキリ拳・
〘CRITICAL HIT!!〙
豪樹の右腕に痛恨の一撃!! スカイアッパーの要領で天に振りかざした手刀が衝撃波となり、豪樹の身体諸共吹き飛ばした!
そして右手から離れたアタッシュケースが、落下した衝撃で中身が開けられてしまった。
その中身を、近くにいた玲王が手に取っていた。
「なんだ、これ? ―――さんかくな、宝石……??」
その宝石は、赤・青・黄の三色に飾られたピラミッド型のパワーストーンのようなものであった。これ見て首を傾げる玲王。
「おぉぉッ、それこそ我ら奈落道が求めていた【心技体の秘石】!! それを寄越せ、ターザン小僧オオオオオオ!!!」
「アカンッッ、逃げろ玲王!!」
豪樹はHPゲージ残り僅かで満身創痍。それを他所にマンテラーは、印輪を付けていない玲王目掛けて襲い掛かる! この攻撃を受ければ、怪我では済まない!
今にもマンテラーの鎌の手刀が、玲王に迫った……その時!!
―――――GLAP!!
「!!?」
なんと、豪樹でも止められなかったマンテラーの手刀を素手で、しかも片手で止めた玲王!
この時、玲王の眼には何やら怒りにも似た威嚇の圧が掛かっていた。
「……なぁ、カマキリ。さっきからお前の手から、クマの血の臭いがキツくてしかたねぇんだ。
――――オイラの島に住むクマに、何をした……?」
玲王の掴んだマンテラーの手刀。その手先は微かに赤く染まり、獣の臭さが滲み出ていたのを玲王は見逃さなかった。
「あァ? あの木の実の匂いがした熊共か? 俺様に急に襲ってくるもんだから、喰っちまった。
美味かったぜぇ、特に木の実詰まった内蔵の所とかなぁ……!!」
――――この時、玲王の純粋無垢な心の何処かにある理性が、プツンとキレた。
本来『拳華成闘』では、拳華印輪を装着していない者に対する攻撃は一切受け付けない。腕輪を着けた者同士の闘いに、他を寄せ付けない魔力があるという。
だがそれは、例外もありえる……!
――――ウガアアアアアァァァァァァァァァアアアアアアッッッッッッ!!!!!!!!
この獅子の怒りにも似た玲王の咆哮は、拳華印輪の力をもねじ伏せ、マンテラーの五体を軽々と吹き飛ばす強者の衝撃を生んだ。
「な、なんなんだアイツわああああああ!!??」
一瞬の出来事に隙が生まれたマンテラー。その衝撃は島の外まで吹き飛ばし、拳華成闘のルールから『場外負け』として、転送・退場させられた。
「…………玲王………!??」
突然の試合終了と、赤城玲王の謎の力に唖然とさせられた豪樹。
そして謎の力を解き放った玲王が、無意識に放出させた覇気。
ファイターのみならず、ゲームに挑む戦士が”闘志の形“として能力を発揮する異能力『
――その形はまさに、獅子の形をした真っ赤な覇気が醸し出されていたのでした……!!
本日の試合はここまで! マッチブレイクッッ!!
〚Coming Soon…〛
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