《ROUND1−2》リンゴと空手と拳士の腕輪

 ――リスタート・イン・マッチ!

 いよいよ開始される、『奈落道流』と呼ばれる拳士のならず者約30名、バーサスの『天翔道流』の拳士と名乗るは高橋豪樹!


 その決闘の狼煙を上げるかのように、奇襲を仕掛けてきた奈落道の一人を、鉄拳一発で下顎粉砕ノックアウト! これには同胞共も狼狽えている。


「こっ、このゴリラ野郎! 【拳華印輪けんかいんりん】もの腕輪を付けないで殴りかかるとは……天翔道流の風上にも置けぬ奴め!!」


 と、悪役が偉そうに説教を垂れる。だが豪樹はそれに論破せんと、殴られノビた拳士を指差す。


「ドアホ、ありゃ正当防衛や。それに印輪を付けてへんのは、突っかかってきたボケナスの方やがな。ゴリラにベアークローで襲ってくるなんざ、保護団体に代わってお仕置きじゃ」


 本人公認でゴリラとはこれ如何に。確かにノックダウンした拳士の両腕には、【拳華印輪】と呼ばれる腕輪らしきものは付けていなかった。


 するもゴリ……もとい、豪樹はリュックサックから本家本元の腕輪を取り出した。

 金色の輪に、古代文字が刺繍された神々しき腕輪。これこそ正真正銘の【拳華印輪】。これを豪樹の右腕に装着させる。


「おおっ! なんだなんだぁ? その輪っか、カッコ良さそうだなぁ〜!」

「危ないから下がってな、玲王。今からあの連中をぶっ飛ばすが始まるで!」


「げーむ? 何だそれ、ウマいのか?」


 何のことやらチンプンカンプンな玲王。対して、豪樹を始めとする奈落道流の連中も、殺気盛んに構えを取る。彼ら全員に、【拳華印輪】の腕輪。


 そして豪樹が装着した腕輪が紫色に輝く……!!


武遊出陣ぶゆうしゅつじん!! けんじょうとうッッ!!!」


『――――GET READY BURNING BATTLE!!』


「な、なんだなんだなんだ? どっから声が聞こえてるんだぁ!?」


 豪樹の掛け声、それに対応するかのように英語アナウンスが密林の中に木霊する! 玲王はその声に困惑している。


 その刹那、印輪に内蔵されたCPUと小型化されたVRビジョンが、敵味方全員の拳華印輪に共鳴し、荒れ果てた密林の情景をヴァーチャルリアルに転換。


 ――――そのフィールド、新緑率70%アップ!

 熱帯雨林の大地に足元が絡み取られそうな、オールグリーンが闘いの舞台だ!!


「スッゲェ〜〜!! 景色が変わったぞ! オイラもまぜてくれ――――ニャッッ」


 玲王も好奇心に駆られて、VRフィールドに飛び込むも、外からの透明なバリアに阻まれて激突した。


「悪ぃな玲王。このフィールドは腕輪を付けた奴やないと入れへんねん。大人しくワイの闘いを観てな!」

「え〜〜! ズルいぞ〜〜!!」


 等とブーイングする玲王と、既に臨戦態勢に入っている豪樹。そして彼を囲うように血を見たがって仕方が無い奈落道流のファイター達。


 ――熱帯雨林フィールドに展開するVR型格闘ゲーム、その初陣、とくとご覧あれッッ!!


『READY.....FIGHT!!』


「さぁ、行くでぇ〜ッッ、掛かってこいや!!」


 電子音響き渡る開始のゴング。豪樹の掛け声と共に、凶器のバーゲンセールと化した奈落道流ファイター達が襲い掛かる!

 だが既に豪樹は、相手目掛けて正拳突きの構え!!


轟亜ごあああああああッッッ」


 ――――SCRATCH!!!!!


 ブルース・リーが怪鳥音なら、豪樹は野獣の咆哮音か! 奈落道流の顔面にクリーンヒットする正拳!


 その時、ダメージを食らったファイターの頭上には、HPゲージとみられる横型のバーが展開され、緑色だったゲージが一気に黄、赤と、消費と共に色を変え、最後には黒く満たされゲージは0。

 ノックダウンされたファイターは、VRフィールドから追放・転送される形で退場される。


「こんにゃろめ〜、オイラだって勝負したいのに! ……あ、リンゴ落ちてた。ラッキー☆」


 等と蚊帳の外の玲王は、振動で木から落ちたリンゴを拾ってかじりつく。


 だが群がる奈落道流はナイフを片手に、豪樹の生身を引き裂き、二の腕から切り傷が滲み出る。

 豪樹の頭上にもHPゲージ、緑色のゲージに若干の減少エフェクト。それでも彼は怯まない。


「こんにゃろ……ッッ!」


 豪樹の反撃、同じく正拳を斜めに突き上げた上げ突き! 上半身の横移動による反動が攻撃力を倍加させ、痛撃されたファイターの顎は歯茎共に砕かれ、クリティカルヒット!

 更に絶えずして群がる敵には、振り向きざまのバルカンジャブ。二本の拳からなる空手技のア・ラ・カルト!


【天翔道流・アイアンフィスト拳】使いの高橋豪樹、その技の要は、フルコンタクト空手をメインとした鉄拳技の極致にある!!


「人の道を外し、己が欲望がままに無法に生きる奈落道流よ。――――この拳の元で、遥かな恵みの旅を捧げん!!」


「ほざけええええええ!!!」


 破れかぶれに突撃する奈落道流。だが豪樹は最後の止めにと、両方の掌を前に構え、その拳を右腰に抑えて溜めの体勢に入る。


 すると豪樹のHPゲージの真下に、細く青いゲージが現れた。

 これはファイターのを消費させる為に使う【SPゲージ】。そして発動には、スティックとボタンのコマンドは必要なし!!




「――――『アイアンフィスト拳奥義・波導氣拳砲きけんほう』ッッッ!!!!」




 SPゲージの40%を消費、同時に溜め込んだ両掌を再び前方に突き出し、合わせた掌から放たれる波導エネルギーの気砲を奈落道流目掛けて発射!!


「「「どぉぉおおおぉおおおおおッッッ??!!!!」」」


 八方向円を描いて発射、着弾したファイターは一気にノックダウン! 30名近くの敵陣を一気に薙ぎ払い、高橋豪樹の勝利!!


「――――押忍ッッ」


 試合終了に勝利の礼。黒帯級の鉄拳に奈落道流為す術無し!!



「………スッッッげぇ〜〜〜ッッ!!! 今のビビーっ、てなったのスッゲェ! なぁなぁ、もう一回見せろ!!」

「あのなぁ……こりゃ曲芸じゃあらへんねん! そう何度も使うにゃ――――」



 ―――――KABOOOOM!!!!!



「うわああああ!!!」


 おっと、どうした!? VRの堺にて玲王と豪樹の間から大爆発が起きた!! これによって彼らは爆風に吹き飛ばされた!


「ら、乱入者か……!? 奈落道らしく卑劣のセオリーやな!!」


「―――キヒャヒャヒャヒャッッ、“卑劣”はおれにとって高高級のスパイスだぜぇ!!」


 なんとVRの外から、密林の木の上で奇襲攻撃を仕掛けた、もう一人の奈落道流ファイター!

 彼には何やら雑兵とは一味違う、のような覇気を醸し出しております……!!



 乱入試合勃発、続きは次回のお楽しみに!

 ――本日の試合はここまで! マッチブレイクッッ!!



 〚Coming Soon…〛

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