冒険314.弱き者汝の名は女なり(後編)

 ===== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。現在、産休中。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。


 斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。

 原田正三警部・・・元新宿風俗担当の刑事。警視庁からのEITO出向。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 本郷隼人二尉・・・海自からのEITO出向だったが、EITOに就職。システム課長をしている。

 河野事務官・・・警視庁からのEITO出向事務官。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。EITOボーイズに参加。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 高坂(飯星)満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。


 大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。

 藤井康子・・・伝子の区切り隣マンション住人。モールで料理教室を開いている。

 物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。モールで喫茶店アテロゴを経営している。

 橋爪警部補・・・本来は丸髷署生活安全課勤務。愛宕と共に、。『片づけ隊』に参加している。

 西部警部補・・・本来は高速エリア署生活安全課勤務。愛宕と共に、。『片づけ隊』に参加している。早乙女藍と再婚した。


 守谷哲夫・・・SAT隊長。

 名越撤兵・・・MAITOのC班班長。(A班、B班は地震等の災害救助、C班がその他を担当している。)


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==

 = EITOガーディアンズとは、エマージェンシーガールズの後方支援部隊である==


 午後7時。伝子のマンション。

 高遠は、1人でカップラーメンを食べ、原稿を仕上げた後は、早寝をした。

 翌日。午前9時。EITO東京本部。会議室。

「という訳で、中津興信所の聞き込みで、商工会議所近くに現れた女こと蔵前めぐみは、一味に違いなく、藤井さんの料理教室に通っていた。2人を誘拐したのが、前から狙っていたのか、結果そうなったのかは不明だが、EITO関係者として誘拐したことは明らかだ。調布の植物園だが、SATに乗り込んで貰い、事前に利用客には退去して貰うことにした。詰まり、閉園時間前倒しだ。爆発物犯人から予告があったことにして。」

 理事官は、一気に言って、額の汗を拭った。

「こんな時になんだが、私の母がまた迷惑をかけて済まない。皆、画面して奪還に協力してくれ。」と、伝子は頭を下げた。

「嫌です。おねえさまの、他人行儀、要らないです。おねえさまのお母様だから助けるんじゃありません。おねえさまは、ただ命令をしてくれればいいんです。」なぎさは、泣きながら言った。

「なぎさの言う通りだわ。我々は粛々と任務をこなす。それでいいと思うの、おねえさま。きっと、みちるも同じことを言うと思うわ。」と、あつこも目を潤ませて言った。

 皆は、ただ頷いていた。

 午後5時(17時)神代植物公園。

 SATの守谷隊長が、なぎさに言った。

「今、見回りに行かせていますが、一応、各出入り口に配置した隊員の誘導で、利用客は、待避させました。本当に来るでしょうか?」

「ええ。予め、園の経営者には、闘いあることも人質があることも伝えた上で、花が荒らされることも了解して貰っています。合図があったら、後方支援をお願いいたします。」

「了解しました。」敬礼をした守谷は、何処へか去って行った。

 午後5時半。

 状況が変わった。5トンのセミトレーラが5台。各出入り口の、SATのバリケードを破って、なぎさ達のいる、芝生広場に突っ込んで来たのだ。

 そして、扉が開くと、防毒マスクをした、女性用の黒いリクルートスーツを着た集団が降りて来た。全員機関銃を持ち、銃弾ベルトを体に巻いている。しかも、腰には、短刀を挿している。

 こんな武装集団は、始めてだ。300人以上はいるかと思える集団は、機関銃を撃ち始めた。

 なぎさは、すぐに皆にインカムで指示して四散した。これでは、簡単に手が出せない。

『ダリア園』、『しゃくやく園『つつじ園』『しゃくなげ園』、『さくら園』、『サルスベリザクロ園』、『つばきさざんか園』、『かえで園』、『ハナミズキ園』、『マグノリア園』、『ハナモモムクゲ園』、『はぎ園』、おまけに雑木林まである。ここは『ばら園』だけではなかったのだ。隠れる場所は幾らでもある。

「間に合ってくれ。」と、」なぎさは呟いた。

 オスプレイが近づいて来た。MAITOのオスプレイだ。MAITOとは、Mighty Air Self-Defense Force Independent against Terrorism Organizationの略で、空自が災害時の救出避難用に結成した、特別チームのことである。

 インカムに、EITOのオスプレイを経た、MAITOの名越班長の声が響いた。

「おまちどおさま。特別バージョンの消火弾だ。」

 すぐに、300人の『アマゾネス』の頭上に消火弾が数発落ちて来た。

 以前は、2発が限界で、大きな家事の消火をする際は、1台で不足する場合が多いので、2台以上のオスプレイが出動していたが、小型の消火弾を数発落すことで、機関銃を全て使用不能にすることが出来た。

 オスプレイは、すぐに去って行った。

 全身水浸しになった集団は、機関銃も銃弾ベルトも防毒マスクも捨て、短刀でエマージェンシーガールズに向かって来た。

 エマージェンシーガールズが走る中、EITOガーディアンズがホバーバイクで、胡椒弾をピンポイントで撃ち続けた。

 ホバーバイクとは、『宙に浮くバイク』のことで、民間が開発したものをEITOが改造し、運搬または戦闘に使用している。

 胡椒弾とは、胡椒や山椒他の調味料で作った丸薬であり、どこかに当たると砕けて飛散、敵の鼻孔を刺激して、戦闘能力を低下させる。ある意味、突発性の花粉症を起こすようなものだ。

 機関銃が無くなったことで、なぎさは合図を送って、SATも戦闘に加わった。

「ゼット・フォーメーション!!」

 ゼット・フォーメーションとは、なぎさが考え出したフォーメーションの一つで、ゼット・インパクトのことである。Zoomは本来「拡大・縮小する」ことを意味する言葉であるが、なぎさは、ブーメランとシューターで敵を遠方から襲い、敵が避けた瞬間に敵の懐に入って、バトルスティックやバトルロッドで倒す戦法の態勢に名付けた。

 シューターとは、うろこ形の手裏剣で、先端に痺れ薬が塗ってある。

 あつこ、伊知地、日向はブーメランを使い、あかり、下條、小坂はシュータで援護し、他の者は、バトルスティック、バトルロッドで闘った。バトルスティックや場とロッドにも実は先端にしびれ薬が塗ってある。バトルロッドとバトルスティックの違いは、バトルロッドが防御用であるのに対して、バトルスティックは3段変形して攻撃用に改変されていることにある。バトルスティックは、一番多用されている。

 短刀とはいえ、強力な刃だ。水流ガン,ペッパーガン、フリーズガンを使っている暇はない。水流ガンとは、中の水が飛び出すとグミ状の水に変化する銃で、ペッパーガンとはホバーバイクの胡椒弾と同じく調味料を原料とした丸薬を撃つ銃で、フリーズガンとは、液体窒素が変化して標的を凍らせる銃だ。しかし、接近戦には向いていない。ゼット・フォーメーションの場合は、田坂達や静音達もバトルスティックとバトルロッドで闘う。

 1時間後、戦闘は終った。集団の女達は、空を見上げて、身動き出来なくなった。『大の字』になって寝ている。

 なぎさは、長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛に似た笛で、犬笛にも転用できるが、通常は簡易な合図を送る通信機として、用いられている。

 やがて、「片づけ隊」がやって来た。

 守谷は近づいて来て言った。「おたくの井関さんと、ウチの隊員で、オートロックを外して、『大温室』に閉じ込められていた人質を救出しました。2人とも怪我はないようです。」

「そうですか。」守谷の話を聞きながら、インカムで金森の言葉をなぎさは受け取った。

「副隊長。全員おんなです。ジェンダー女性でも男でもない。ショートカットのアマゾネスです。」

 片づけ隊とは、EITOが逮捕しても連行し尋問する権限がないことから、警察から数名の班長と警察官で逮捕連行する為に出来た組織である。

 片づけ隊が引き揚げると、陸自の下士官が『お掃除隊』としてやって来る。現場の掃除と共に、エマージェンシーガールズの武器であるシューターや、何らかの破片がないか点検して回る、正に『黒子』、裏方である。

 トレーラの確認に行った愛宕警部と橋爪警部補は、1台目のトレーラの運転台の助手席でただただ震えている蔵前を発見した。

 何か臭うなと思った愛宕は、蔵前の足下の水たまりを見付けた。

 橋爪が察して、「婦警さんに連れてって貰いたいよね?」と蔵前に尋ねると、蔵前はコクリと頷いた。愛宕は目で礼を言うと、橋爪は電話をかけ始めた。

 西部警部補が近寄って来た。「警部。トレーラのドライバーは、どの車両にもいません。荷台から降りた女達と合流したのでしょうか?」

「いや、トラックドライバーならともかく、この手の大型車の運転免許を持っている女性は少ない筈です。逃げた、ということでしょう。この女が『枝』でないとすれば、枝も逃げたことになる。SATも戦闘に参加したようだから、どこからでも逃げれた筈です。」

 午後7時。EITO東京本部。司令室。

「隊長。『片づけ隊』に引き継いで、帰還します。藤井さんと、隊長のお母様は、筒井さんと、愛宕警部が送るそうです。それと、藤井さんが、お母様を責めないで、と隊長に言っているそうです。」

 増田の報告に、「多分、藤井さんとEITOのことを話しているのを蔵前に聞かれてしまったんだな。お仕置きは、来月にしよう。」と、伝子は言った。

 草薙と渡は、口を塞いだ。

「やはり、おんなは恐い。」2人は、声には出さず、心の声で処理した。

 理事官と夏目警視正は、あらぬ方向を向いていた。

 理由が分かるのは、渡と草薙だけだった。

 河野が、不思議な光景に戸惑っていた。

 ―完―

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