冒険312.予感
===== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。現在、産休中。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。『片づけ隊』班長をしている。
斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
村越警視正・・・警視庁テロ対策室室長。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁テロ対策室からのEITO出向。EITOガーディアンズ。
原田正三警部・・・元新宿風俗担当の刑事。警視庁からのEITO出向。
渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
本郷隼人二尉・・・海自からのEITO出向だったが、EITOに就職。システム課長をしている。
河野事務官・・・警視庁からのEITO出向事務官。
増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。EITOボーイズに参加。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
高坂[飯星]満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。
藤井康子・・・伝子の区切り隣マンション住人。モールで料理教室を開いている。
物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。モールで喫茶店アテロゴを経営している。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
午前9時。伝子のマンション。
「会議、遅くなったの?ゆうべは、筒井さんが送って来たけど。」
「うん。ごめんな。実は気分悪くなったから、池上病院に連れて行って貰って、ついでに搾乳してきた。お前も、オッパイ飲むか?」
「いいよ。朝っぱらから。今日は午後から?」「うん。オンライン会議でもいいぞ、って理事官に言われたから、そうするよ。」
「なかなか休めないからね。しかし、ピースクラッカーに取って、エイラブ系組織は『目の上のたんこぶ』だってことが分かって良かったよ。ダークレインボーの野望は、『日本分断』、エイラブ系組織のピスミラは、『お金をいただきます』だ。こちらに振るのは、自分の手を汚したくない、プライドだね。」
「まあ、お陰で大事に至らなかった。司令室から出られなくてやきもきしたが、結果オーライだ。」
「なぎさちゃんやあつこ警視が、しっかりしているから大丈夫さ。あ。鉄扇投げた時、かなり体力消耗したんじゃない?馬の上からだったし。」
「ああ。池上先生にも言われたよ。流鏑馬じゃないんだから、って。でも、あの胸プロテクターはいい。臨時だったから、ユニフォームくり抜いたけどな。エロいだろ?」
「夫にエロいだろ?って、自慢?変な女房だなあ。」
「変な女房だなあ?酷いわよ、婿殿。」と、綾子が現れた。
どこまで聞かれたかな?と高遠はヒヤヒヤしたが、敢えて尋ねないことにした。
「お義母さん、『乗っ取り』が目的だったらしいですよ。あいつら、資金集める為なら、何でもありだ。」
「え?じゃ、GEROは、いつの間にか、エイラブの会社になってるかも知れなかったってこと?嫌だわ。」
「ああ。総理も大臣も長官も褒めてくれたよ。那珂国に進出して失敗した、日本の企業も多いからね。ましてや、テロそのものの集団じゃ、方々に『治外法権』の店が出来るよ。」と、伝子は嘆息した。
「明日は、子供の日。藤井さんが、柏餅の作り方、今日やるらしいから、午後から行くわ。」そう言って、綾子は出て行った。
「聞かれたかな?」「分からない。でも、柏餅は口実だと思うよ。体調悪そうだから、って。下訳やっとくから、横になってていいよ。」
「じゃ、ソファーで仮眠する。」そう言って、伝子はリビングに移動した。
高遠は、下訳の為に単語を調べながら、事件を振り返っていた。
高遠は、何か言い知れぬ不安が襲って来た。
前回の、エイラブ系は、早朝だった。その前の、ピースクラッカーの「正しくないアナグラム戦」はお昼前後だった。
振り返ると、夜の闘いは、数える程だった。「お互いに不利」と考えるのは、楽観的過ぎる。本郷に頼んで、対策を考えておこう。
午前11時。
高遠は、本郷にメールを送っておいてから、昼食の焼きそばの準備を始めた。
匂いに釣られてか、伝子は起きて来た。
「いい匂いだ。いい婿だ。」「惚れ直した?」「惚れ直した。」
高遠は、思わず玄関を見た。いつもなら、ここで『鬼姑』の登場だが、朝来て、もう帰ったのだ。
「どうした、学。」「何か気配がした気がしたけど、猫かも知れないね。」
午後1時。
EITO用のPCを起動して、オンライン会議を始めた。
ピースクラッカーの動きがまだないことが、皆気になっていた。
「ゴールデンウィークは、お休みって、ことかしら?」と越後が暢気なことを言った。
「準備が出来たら、って言わなかった?」と、馬越が言った。
「言ったわ。」と,コンビを組むことが多い増田が言った。
翌日。午前9時。伝子のマンション。
物部から連絡があった。
「藤井さんがいないんだよ。昨日、料理教室で生徒さん達が作った柏餅を、子供会経由で町内の子供に配る予定だったんだが、モールの教室に集まった生徒さん達がまだ開いていない、って言うから、不動産屋に開けさせて、今辰巳達に手伝わせて配っているんだが。スマホにもイエ電にも出ない。何か、知らないか?」
高遠は、すぐに藤井の所に行き、合鍵で入ったが、いない。というか、帰った形跡がない。戻ってきて、伝子に報告した後、EITO用のPCを起動した。
「草薙さん。あ、渡さんか。至急、藤井さんの居所を探して下さい。あ、そうだ。お義母さんの居所も。」と、高遠は言った。
伝子は、綾子に連絡を取ってみた。イエ電にも出ない。
「2人とも、同じ所にいますね。調布市です。調布市商工会議所・・・あ。引っ越す前の商工会議所だ。老朽化の為、500メートル先に新築して、先月引っ越した、ってデータがあります。」
伝子と高遠は、肩を落した。そして、異口同音に言った。
「誘拐だ。」
「おねえさま。今、迎えに行きます。現場には、あつこに先乗りして貰います。」と、なぎさは早口で言い、司令室を飛び出した。
「学。準備だ!」伝子は、寝室に入った。
午前10時半。調布市。旧商工会議所。
久保田管理官と、あつこはパトカーを降りた。
静まり返った、建物内を進んで、会議室に入った2人は、意外なものを発見した。
藤井と綾子のバッグ、衣類、下着、靴が転がっていた。
あつこは、DDバッジを探した。バッグの底にそれはあった。そして、追跡用ガラケーをあつこは解体した。あった。
手紙を見付けた、久保田管理官が言った。
「手紙がある。EITO様」なんて表に書いてある。
その手紙の1枚目には、こう書いてあった。
《ちゃんと食事はして貰うよ。人質は丁重に扱う主義だから。宿題解いてから、ゆっくり来て。明日だから。》
そして、2枚目には、こう書いてあった。
[芝居 寅 七]
「おじさま。謎解きは、高遠さんに任せるとして、一つだけ分かったことがある。一味には女がいる。」「なんで分かるんだ、あつこ君。」「男は、こんな畳み方をしない。」
久保田管理官は、鑑識を手配した。
なぎさと伝子が到着した。
あつこは、2人に手紙を差し出した。
―完―
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