冒険299.一ノ瀬一周忌
===== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。
斉藤長一朗理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
原田正三・・・警視庁警部。新宿署からのEITO出向。
一ノ瀬欣之助・・・故・一ノ瀬孝一佐の父親。
一ノ瀬悦子・・・故・一ノ瀬孝一佐の母親。
古屋保・・・警視総監。警察の一番偉い人。
渡辺道夫・・・副総監。あつこの伯父。
村松道也・・・警視庁警視正。テロ対策室室長。
新里あやめ・・・警視庁警視。テロ対策室勤務。あつこの後輩。
中津敬一・・・警視庁警部。テロ対策室勤務。
久保田嘉三・・・警視庁管理官。久保田警部補の伯父。
前田頼一・・・空自の空将。大空真由美の伯父。日向さやかの叔父。
仁礼正平・・・海自の海将。仁礼らいむの大叔父。
橘藤兵衛・・・陸自の陸将。なぎさの伯父。
村田統合幕僚長・・・自衛隊の一番偉い人。
南部[江角]総子・・・大文字伝子の従妹。南部興信所所長の妻。EITOエンジェルのチーフ。
大前英雄管理官・・・EITO大阪支部の管理官。大阪府警からのEITO出向。隊員にはコマンダー、総子からは『兄ちゃん』と呼ばれている。
市橋早苗・・・移民党総裁。内閣総理大臣。
須藤桃子医官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。
大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。EITO準隊員待遇。
藤井康子・・・伝子のマンションの区切り隣の住人。モールで料理教室を開いている。EITO準隊員待遇。
みゆき出版社編集長山村・・・伝子と高遠が原稿を収めている、出版社の編集長。
依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。
依田[小田]慶子・・・依田の妻。
福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。今はアマチュア劇団の公演は年2回とし、普段は建築事務所で非正規雇用として働いている。
福本[鈴木]祥子・・・福本が「かつていた」劇団の仲間。後に福本と結婚する。福本との間に娘が生まれた。
物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。モールで喫茶店を経営している。
物部[逢坂]栞・・・伝子の大学の翻訳部の同期生。物部と再婚した。
南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。今は見合い結婚した文子と学習塾を経営している。
南原[大田原]文子・・・南原の妻。
山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。海自で事務職員として働いている。
山城[南原]蘭・・・南原の妹。美容室で働く美容師。
服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。見合い結婚したコウと音楽教室を経営している。
服部[麻宮]コウ・・・服部の妻。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
午前11時。EITO東京本部。会議室。
「大文字君。まだ、帰らないのか。今日は休日だぞ。」と、理事官は伝子に言った。
「ああ。報告書に手間取って。」「形式上のものだ。君の本業の翻訳の原稿じゃないんだから、テニオハも誤字も誰もチェックしない・・・は先月までか。今月から『本物のAI』がチェックするんだったな。でも、気にしなくていいよ。」
「もう、サーバーにアップしました。休日と言っても、午後から、一ノ瀬さんの一周忌法要がありますし。あの時のメンバーだけでも多いので、幹部以外は休ませますが。」
伝子の返事に、「亡くなったのは、2月だったな。コブラ&マングースが現れたから、待っていてくれたのか、一佐の為に。一ノ瀬の両親は。」と、理事官は目頭を押えて言った。
「はい。なぎさには、せめて三日間は休暇を取るように言ってあります。事態が急変しても、あつこに指揮を執らせます。」
「うむ。それがいいだろうな。ところで、コブラ&マングースこと、友利真之介は、君が会った時、どうだった?」「穏やかな顔をしていました。もう覚悟していたのでしょう。愛した人が、身近にいたことを知って、心底驚いていましたが。石森潤子の方も、『心中』する積もりだったのでしょう。やっと、もつれた糸は解け、あの世で紡ぐことでしょう。」
午後1時。ある、葬儀会館。
法要は、警察から古屋保警視総監、渡辺道夫副総監、村松道也警視正、新里あやめ警視、久保田嘉三管理官、中津敬一警部が出席した。
自衛隊から、前田頼一空将、仁礼正平海将、橘藤兵衛陸将、村田統合幕僚長が出席した。
幕僚長は空将、海将、陸将の上位の地位で、統合幕僚長は、三幕僚長の中から選出され、元の幕僚長と兼任しない為、陸上幕僚長は只今空席である。
EITO東京本部からは、斉藤長一朗理事官、夏目房之助警視正、須藤桃子医官、大文字伝子行動隊長、、白藤みちる副隊長、久保田あつこ副隊長、増田はるか副隊長補佐、馬場和子副隊長補佐、新町あかり副隊長補佐が出席した。
EITO大阪本部からは、大前英雄管理官、南部総子チーフが出席した。
そして、市橋早苗総理が出席した。
法要が始まった。葬儀の時は、服部夫妻が一ノ瀬孝一佐の好きだった歌を手向けに歌ったが、本日は無し。
僧侶の読経と挨拶が終った。
EITO東京本部の副隊長である、一ノ瀬なぎさは、義父母と共に参列者を見送り、参列者は挨拶を交わして、三々五々、参列者は引き上げて行った。
午後3時。伝子のマンション。
原田が『特別に』撮影した法要を、高遠はDDメンバーとLinen会議で見ていた。
「筒井は?」と問う物部に、「警備。警備員も警察官も自衛隊員もいますけどね。これだけのメンバーですからね。EITO東京本部の男子、詰まり、EITOガーディアンズは文字通り警備。」と、高遠はすまして言った。
「伝子ねえちゃん。なぎさねえちゃん、立ち直ったの?」と、総子は伝子の肩に抱きついて言った。
「さあな。一周忌で『フンギリ』がつけば、いいけどな。」と、伝子は言った。
「総子ちゃん、今日泊まるの?」と依田が尋ねた。
「うん。御免やで。依田さんとこのホテルもええけどなあ。おばちゃんにも会いたかったし。」「いいよ、気にしなくて。で、大前さんだけ帰ったの?帰り、どうするの?」
「明日、三美ネエが迎えに来てくれるねん。三美ネエは三つ子やけど、1人で分身の術も使えるんや。」と、総子が言うと、皆爆笑した。
「本当に、すっかり関西人ね、総子ちゃんは。」と、予備の部屋から綾子が出てきて言った。
「確かに。大前さんと話しているのを聞くと、ネイティブ関西弁が飛び交って、漫才みたいだものね。」と、高遠は言った。
「子供の頃、矯正したって聞いたけど、そんなにチェンジ出来るものなの?総子ちゃん。」と祥子が尋ねた。
「特訓したんや。紀ちゃんに頼み込んで。今、兄ちゃんのお嫁さんの紀子。」
総子の言葉に、「凄いわね。ウチの子も環境変わったら変わるのかな?って思ってたけど、トレーナーがいたのね。きっと、教え方が上手いのね。」と栞が感心した。
「いや、本人の天分と努力の結果だよ。なあ、高遠。」と物部が言い、「流石、副部長。纏めるのが上手い!」と、福本がおだてた。
「一佐が三日間、お休み取るっていうのは、『お仕置き』じゃないンでしょ、先輩。」と、服部が問いただすと、「勿論だよ。なぎさは、私の分も、仕事しなくちゃって気負ってたから、精魂使い果たしているんだ。」と、伝子が言うと、「副隊長も大変な仕事なんですね。替わりは、警視ですか?」と、山城が尋ねた。
「ああ。子供がいるといっても、世話する人はいるからな。あつこなら大丈夫だ。」
「みちるちゃんは?みちるちゃんも副隊長なんですよね。」と、南原が言うと、「その為に班分けがあるんじゃないの?」と、蘭が食いついた。
「副隊長補佐って、何をやるんですか、先輩。」と、文子が伝子に尋ねると、「副隊長の補佐。」と、伝子は、あっさり応えた。
「会社組織みたいな、厳密な組織じゃないんだ。臨機応変が大事なんだ。バトルフォーメーションはあっても、その都度変化させる。副隊長補佐って名前はどうかな?って思うけど、小隊長的なポジションだな。」と、伝子が言うと、「そろそろ、おやつにしない?冷めるわよ、今川焼き。」と言って、藤井が入って来た。
「ウチもおやつにするかな・・・って、これから仕事だわ。」と、慶子が言った。
「じゃ、そろそろ『お開き』にしますか。」と、コウが締めた。
Linen会議は終了し、綾子は今川焼きを頬張りながら、尋ねた。
「それで、今度の敵は何て名前?」
「『ピースクラッカー』。平和を壊す者、って意味ですかね。」と、高遠は言った。
「センス無いなあ。」と、2個目の今川焼きに手を出しながら、総子は言った。
「総子ちゃんもそう思う?ダークレインボーの『幹』って、センスない名前の人ばかりねえ。」と綾子は同調した。
「ピースクラッカーかあ。お菓子の名前にありそうね。」と藤井が言うと、「美味しそう名前ではあるわね。」と、餌を求めてやって来たような山村編集長が言った。
「チャイム、鳴らしたわよう。高遠ちゃんのメール見て、私、泣いちゃった。コブラ&マングースも数奇な運命を辿ったのね。」
「そうだなあ。あの世で添い遂げてくれるといいですね。そう言えば、天童さんと須藤医官も50年越しの恋ですからね。運命って、分からないですね、編集長。」と、高遠は編集長に同意した。
「結婚はしないそうですよ、編集長。」と、伝子は先んじて言った。
「あら、何で私の質問が分かったの?」と、山村は驚いた。
「長いお付き合いだから。」と、伝子がぺこりとお辞儀をすると、皆爆笑した。
深夜2時。
インターネットに、いや、正確にはNew tubeに、ピースクラッカーの宣言動画が投稿された。背広を着た、どうみても学生だった。
「こんちゃー。平和の壊し屋、ピースクラッカーです。どうも、背広って、苦手だなあ。大文字伝子さん。一ノ瀬一佐が復帰するまで、待ってあげるよ。闘いは、公平でなくちゃね。『平和への案内人』バーサス『平和の壊し屋』、乞う、ご期待!!」
翌朝。動画を観た理事官は、何気ない言葉の中に、『みなぎる自信』を感じた。そして、怖さを感じた。
大文字伝子の名前も、『アンバサダーー平和への案内人』の称号も知っている。
今までにないパターンだ。
―完―
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