冒険295.幸せな光景

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。降格中だったが、再び副隊長になった。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

 斉藤長一郎理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 高坂[飯星]満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。

 大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。

 玉井静雄・・・コスプレ衣装店{ヒロインズ}店長。

 久保田誠警部補・・・あつこの夫。

 久保田嘉三・・・管理官。久保田警部補の伯父。

 山下いさみ・・・オクトパスの「枝」の振りをしていたオクトパス自身だった。特別拘置所に入っている。司法取引で、ダークレインボーに関するアドバイザー的な存在となっている。

 中山ひかる・・・アナグラムが得意な大学生。伝子達の卒業した大学に入学した。

 中山千春・・・ひかるの母。宝石商を営んでいる。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午後1時。都内某所。特別拘置所。

 久保田管理官が、やってくる。

「よ、管理官。この間の差し入れの漫画、面白かったよ。ベリーダンスなんて、アメリカで見た切りでね。で、何か困った?」山下は笑っている。

 管理官は、コブラ&マングース関連の事件を話した。

「うーん。そのサウナで殺した犯人の手掛かりかあ。恐らくは、『ヒットマン』だろうとしか言えないな。前に話したと思うが、あんたらが言う『木』『幹』『枝』『葉っぱ』とかの集団とは無関係のヒットマンがいる。プロの殺し屋って言った方が分かりやすいかな?情報は、欠片もない。コブラ&マングースを倒した後で、『幹』に確認するのが一番早い。こういう殺し屋はね、管理官。続けて仕事しないもんなんだよ。」

「隙が出来る、ということか。」「その通り。流石だね。コブラ&マングースの決戦の時、俺、出られる?」「下界が恋しいか。TPOだな。コブラ&マングース関連でなくてもいい。何かダークレインボーで思い出したことがあったら、いつでも言ってくれ。一時的に出す口実にはなる。先日、皇室関係で逝去された方がいるしな。恩赦の可能性もあるぞ。」「努力するよ。あ、今度さ。ミステリー、差し入れてよ。昔のでないやつ。」

「探しておくよ。」

 午後2時。EITO東京本部。司令室。

「そうか。やはり、ダメだったか。」と、マルチディスプレイの久保田管理官に、理事官は言った。

「ヒットマンとすると、こぶまんには、あそこまでの腕前の人材がいない。まあ、それが分かっただけでも収穫かな。」と、夏目警視正は言った。

「SFっぽいけど、本当にいるのね、おねえさま。」「ああ、前にケンも言っていた。阿倍野元総理も、あの犯人ではなく、ヒットマンが『トドメ』を刺したんだって。」

「今日は、アテロゴのウエイターの辰巳君の結婚式だったな。また、依田君のホテルかね?」と、尋ねる理事官に、「ええ。物部が仲人で後見人ですしね。新郎新婦とも親類は来ないそうです。いずれ、折りを見て帰郷して親類を回るそうです。式は明日午後5時からです。キャンセルの穴埋めスケジュールです。」と、伝子は笑った。

 午後4時。コスプレ衣装店「ヒロインズ」。

「玉井。無事で良かったわ。私は、婚約者の代わりだったのね。でも、ごめんなさい。私には、主人と子供がいるの。あ、子供は予定だけど。」

「存知上げてます。後ろの、素敵な旦那様にも、いつもお世話になっていますから。姉は、別れ際にこう言いました。『あんたが、フンギリつくまで見合いはさせないわ』って。別れ際って言っても、店長会議で会うんですけど。」

 2人の会話に苦笑しながら、「産まれたら、ベビー用品も取り寄せて下さいね。そうだ、あの連中は、EITOのユニフォーム作っていること、知っていたんですか?」と愛宕は言った。

「ああ、守秘義務のことですね。大丈夫です。EITOとは、工場と直接取引ですから。」と、玉井は言った。

「しかし、誘拐された店長って、口コミで広がって、盛況になりました。何が幸いするか分からないものですね。」

 午後5時。森アパート改めメモリーコミュニティ。

 森は寮母になった。焼失する前は、伊知地満子二曹、葉月玲奈二曹、越後網子二曹、小坂雅巡査、下條梅子巡査が入居することになっていたが、5人に加えて、七尾伶子巡査部長、大空真由美二尉、仁礼らいむ一曹、財前直巳一曹が店子、いや、寮に住む女子社員が住んでいる。表向きは、会社の寮ということになっているから、社員なのだ。

 森アパートの時は、庭もあり、小さいながらもバスルームがあり、話し合いで利用していた。新しいアパートは、庭を潰して建てたので、庭はもうない。代わりに、森は自分の部屋のバルコニーに小さな、プランタースペースを作った。

 人数が多いので、バスルームは、1回につき3人までである。

 浴槽はあるが、2機のシャワーを使う者が多いし、『烏の行水』的な、迅速な入浴だ。

 EITOの基地(東京本部)にも浴室はあるし、宿直でなくとも使っていいことになっている。自衛官や警察官は規律が第一。何のトラブルもない。一般の入居者と森が契約しなかったのは、皆EITOの隊員であり、EITOの『完璧な』セキュリティーシステムが施されたからだ。

 森は、高齢にも拘わらず、若者に理解もあり、藤井同様、EITOの準隊員扱いをして貰っている。システムはセキュリティーだけでなく、地下に置かれたサーバールームから、森の部屋を含めた部屋にはWi-Fiで繋がったPCがある。そして、PCは、EITO東京本部だけでなく、『内線』と呼ばれるリモートで繋がっている。EITOが開発したアプリのお陰である。

 詰まり、実質的な、そして、完璧なEITO隊員寮である。

 伊知地、葉月、越後に代わって、小坂、下條、七尾がバスルームに向かった。

 3人は、伊知地の部屋に入った。

「ねえ、伊知地。私達、厚遇ね。」「私達は『期待のルーキー』だから。前田空将が言ってたから。そう言えば、大空って、前田空将の親戚らしいわ。」「え?そうなの?何で黙ってるの?」「さあ。『忖度』ってやつ?」「忖度?私達偉いの?先輩だから?」

「そうなんですか?やっぱり、先輩って、偉いし恐いものなんですね。」と越後は言った。

「陸自は厳しいの?」「ええ、まあ・・・でも、下條さんや小坂さん達みたいに・・・あ、いけない。」

「いいじゃない。誰も聞いてないんだから。そう言えば、新町さん、変わったよね。前は、すぐ下條さん達を睨んでいたのに。」と、葉月が言うと、「私も最初は先輩風吹かせて、と思ってたけど。あの人なりの責任感だったのよ。」と伊知地が言った。

「責任感って言えば、ウチのラスボスは凄いわよね。文武両道で指導力があるからって、久保田管理官がスカウトしたらしいけど。」

 伊知地の言葉に、今度は葉月が「何しろ、ヤクザまで手懐けちゃう・・・あ、仲良しになっちゃうんだもの。オマケに敵である『幹』や『枝』も、『仲良し』だし。マスコミが知ったら『馴れ合いでやってる、八百長だ!』って言いかねないわね。」と応えた。

「八百長?それ、死語よ。何処で仕入れたの、その言葉。」「あんただって、知ってるじゃないのよお。」

 越後は、ただ笑っていた。幸せな光景だと思って。

 午後8時。伝子のマンション。

 伝子は、ドリンク剤やビタミン剤のチェックをして、「よし!!」とガッツポーズをした。

 PCルームから、そっと見た高遠は、覚悟を決めた。

 きっと、『2人目づくり』の夜だな、と。

 高遠のスマホにLinenのテレビ電話の着信があった。

 ひかるだった。後ろに、母親の中山千春が見えている。

「いつもお世話になりなっております。」「いいえ、こちらこそ、ひかる君には、お世話になったままで。」

「今回は、時間が無かっただけだよね。でも、高遠さん、腕を上げたね。また、仲間に入れてよ、」

 ひかるの言葉に、「喜んで。」と苦笑した。

 夜中の0時過ぎ。

 ネットに奇妙なメッセージがアップロードされた。

 コブラからの直接の挑戦状だった。

[今度こそちゃんと勝負しよう、EITOの皆さん。私の怖さを見せてあげるわ。]

 越後が感じた、幸せな光景は長くは続かなかった。

 ―完―



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