冒険294.3つの事件(後編)

 ===== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。現在は、降格中。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

 斉藤理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 馬場[金森]和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 高木[日向]さやか一佐・・・空自からのEITO出向。副隊長。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 青山[江南]美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 高坂[飯星]満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。

 大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。

 青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

 原田正三警部・・・新宿風俗担当の潜入捜査官だったが、EITO出向。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 河野事務官・・・EITOの警視庁担当事務官。

 大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。

 玉井静雄・・・コスプレ衣装店{ヒロインズ}店長。

 玉井優香・・・玉井の姉。ヒロインズの本店店長。

 新里警視・・・あつこの後輩。警視庁テロ対策室勤務。

 久保田誠警部補・・・あつこの夫。

 久保田嘉三・・・管理官。久保田警部補の伯父。

 西部才蔵警部補・・・本来は高速エリア署刑事。『片づけ隊』班長。

 芦屋三美・・・芦屋グループ総帥。EITOオーナー。玉井優香の友人。

 高崎八郎・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。

 泊哲夫・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。

 根津あき・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午後1時。EITO東京本部。司令室。

 マルチディスプレイに高遠が映った。

「お待たせしました。漸く解析できました。」「全くだ、遅いぞ、婿養子。」

 伝子は、早速、画面の夫をからかった。

「『暇なら浮くわ、烏賊』は『クマ』『占い』『氷川』です。氷川神社なら高円寺にあります。系列の神社もありますが、まず、高円寺と見ていいでしょう。アニメの舞台になった神社としても有名ですね。」

 高遠の言葉に、「氷川なら、氷川神社ですか・・・高円寺にありますね。毎月御朱印のデザインが変わることで有名です。『流行に敏感』とか言ってましたよね。素戔嗚尊(すさのおのみこと)が祀られていて、気象神社とも言われています。厄除け・縁結びとかも書いてあるのは、『御利益』ですかね?」と草薙は調べながら応えた。

「ちょっと待って。『クマ』『占い』って、コブラさんチームじゃ無かったですか?」と田坂が言った。

「田坂。『さん』は要らないんじゃない?」と、日向が言った。

「あ。つい。テレビのゲームじゃないですものね。コブラの内輪もめなのに、マングースは知っているということかしら?」

「ああ、そうだな。一応、一つの合体集団なら、『処刑の予定』位は言うかもな。逆らうと痛い目に遭う、ってことだ。マングースチームの下っ端への『抑止力』にもなる。」

「元トレーナーは自業自得だけど、元詐欺師もかしら?」と日向は言った。

「元トレーナーの事件は、フィットネス会員の恨みじゃなかった?」と、あかりが言うと、「代行殺人ね。以前扱ったことがあるの。」と、あつこが言った。

「多分、その元会員は、アリバイがあるわ。口を割らせるのは難しいかも。」

「じゃ、元詐欺師も?」「あり得なくはないわね。」

「まあ、コブラさんチームは、警察に任せよう。氷川神社って、広いんだろうなあ。」と、伝子は言って、腕を組んだ。

 午後3時。浅草寺。

 ステーションワゴンが門の前に止まり、中から般若の面を被った男達が2人、玉井静雄を連れて降りて来た。白昼堂々の、人盛りのある場所での『人質交換』だ。

 向かい側に、ワンボックスカーが止まり、玉井優香が降りた。

 2台の車の中央に、男達は、ロープに縛られた玉井静雄を連れて行き、そこまでやって来た玉井優香を連れ去った。そして、中の男に引き渡すと、一人が、すぐに玉井静雄を連れ去りに走った。

 どこからか、シューターが跳んできて、ステーションワゴンのタイヤに刺さって、ステーションワゴンはパンクした。シューターとは、EITOが開発した、うろこ形の手裏剣である。通常は敵の手首や足首を掠めるように投げる。だが、非常には刺さるように投げてもいい、と言われている。

 高崎と泊が静雄を連れ去ろうとした男を取り押さえた。

 すかさず、根津が走って来て、もう一人をドロップキックで倒した。

 車の中の男達が3人、車から飛び出した。

 3人とも拳銃を持っている。

 いつの間にか車の天井にいた、エマージェンシーガールズ姿の、みちるが3人にペイントガンでペイント弾を撃った。

 3人は、拳銃ごと、赤一色に染まった。

 玉井優香は、男達が飛び出した後、咄嗟に車の中に飛び込んだ。

 みちるは、車から飛び降りながら、長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛に似た通信機で、通常の大人の耳には聞き取りづらい。簡易連絡に用いられることが多い。

 午後3時。氷川神社。

 静か過ぎるので、首を傾げながら、なぎさ達が社務所に向かうと、『EITOの皆様 会合は高円寺中央公園にて』と書いてある立て看板を仁礼が見付けた。

「ここは、駐車場がないので、『河岸を変える』訳か。」と、あつこが言った。

「歌を歌うんですか?」と、あかりが言い、「場所を変える事ですよね。」と下條が言った。以前のあかりなら、きっと睨んでいるところだが、あかりは下條の頭を撫でた。

「そうか。下條は物知りだな。」

 増田が、インカムで、EITOに場所を確認した。渡の返事が聞こえた。「遠くありません。誘導します。徒歩で向かって下さい。」

 午後3時半。高円寺中央公園。

「おやつまでに間に合わせろよ。」と、一団のリーダーらしき男が言った。

 隣の女が言った。「場所を変えたのは、ボスの指示よ。」そして、女は足早に去った。

 財前は、密かに撮影した映像を本部に送った。

 男は、溜息をつき、側のパネルバンをリモコンスイッチで開いた。

 中から、機関銃や火炎放射器、拳銃、日本刀などが出てきて、男達は身構えた。

 ざっと、200人か。金森は目で追い、勘定をした。

「懲りない奴らね。」大町が言った一言で、エマージェンシーガールズは戦闘態勢に入った。大町班はフリーズガンで、馬越班はペッパーガンで、金森班は水流ガンで機関銃や火炎放射器を使用困難にした。前の『幹』で情報制限をしたデータでは、こういう展開は、彼らは予想出来なかっただろう。フリーズガンとは文字通り、冷凍弾を撃ち込む銃であり、ペッパーガンとは胡椒等を原料にした丸薬で出来た弾を撃つ銃であり、水流ガンとは、撃ち出して空気に触れるとグミ状になる水の弾の銃である。

 ホバーバイク隊がやって来た。ホバーバイクとは『宙に浮くバイク』のことで、民間が開発、EITOが採用して、運搬や戦闘に使用している。

 青山はウッドフルーレで、高木はハープーン(銛)で、馬場はフリーズガンで、筒井はバトルスティックで敵を混乱させた。筒井のみバトルスティックなのは、伝子が与えた『罰』である。

 敵は、日本刀、竹刀、木刀、バット、素手でしか闘えなくなった。

 エマージェンシーガールズは、ホバーバイク隊(EITOガーディアンズ)、弓矢隊の後方支援を受けながら、バトルスティック、バトルロッド、素手で闘い始めた。

 45分後。一団の応援が到着するでもなく、青空を眺めて大勢の男達が寝転がった。

 予め、立ち入り禁止にしていた訳ではなく、本来は『片づけ隊』の警察官がコーンやテープで。大急ぎで立ち入り禁止したが、たまたま遭遇した観光客は自主避難をした。

 なぎさは、長波ホイッスルを吹いた。そして、あつこはEITO東京本部に連絡を入れた。

 午後5時半。西部警部補率いる『片づけ隊』は、逮捕連行して行った。

 午後6時。公園掃除のボランティアらしき集団がやって来て、掃除を始めた。

 これは、実は陸自の『本当の片づけ隊』である。掃除をしながら、シューターや、武器等を回収する。

 午後7時。EITO本部。司令室。

 伝子がマイクを持って言った。「みんなよくやった。白藤副隊長は、ヌンチャクを小坂隊員に、三節棍を伊知地隊員に渡して直帰しろ。新しく出来た五節棍を後日届ける。これからは、それを使え。復帰おめでとう。副隊長、我が妹よ。」

 午後7時。コスプレ店本店。

 スピーカーをオンにしていたので、玉井姉弟も聞いていた。

「よくやったね、たま・・・支店長。」みちるは、涙を流しながら言った。

「いえ、白藤様のお陰で、無事生還出来ました。姉さん、助けてくれてありがとう。」

「どういたしまして。お前は子供の頃からいじめられっ子だったからね。今は、白藤副隊長さんやEITOが守ってくれているのね。」

 優香は、弟静雄の上着の中のロケットを取りだして、中を開けた。弟は嫌がったが、無理矢理、姉の威厳で行動した。

「これ、見て。誰かさんに似てない?」と、優香は言った。

 みちるが覗き込むと、そこには、みちるがいた。

「その子はね、静雄の彼女だった。」「だった?」「交通事故で死んだの。私の妹になる筈だった娘はね、弟の目の前で死んだ。でも、この子の頭の中には、ずっと生きていたのね。あなたが結婚していなかったら、あなたのお腹に赤ちゃんがいなかったら、弟の嫁になって、と言うところだけどね。あなたのマタニティーね、私が縫ったの。ああ、『手下』は止めてよね、いくら何でも。」

「家来、ならいいかな。執事ならいいかな?」と言って、芦屋三美が入って来た。

「『ヒロインズ』になる前から、支援して頂いているの、芦屋総帥に。私達ね、Lなの。」みちるが驚くと、「冗談よ。静雄を誘拐した犯人は、元本店の従業員だった。この子を突き出した2人ね。クビにしたのは一人だけだったのにね。男でも『連れション辞め』するんだ、って呆れたもんよ。後は、警察かEITOで調べて。ああ、白藤さんは両方だったわね。」

 翌日。午前9時。EITO東京本部。会議室。

「まず、動物園飼育係の佐幸一郎の殺害犯人だが、防犯カメラに映っていた。映像を解析したら、傷害のマエがあった。無井敬吾と北崎徹だ。パチンコ屋で見付けたよ。指名手配する必要も無かった。2人はサラ金で借りていた。それを肩代わりしてくれた人間がいて、武器も渡してくれた。その様子も防犯カメラに映っていた。動物園の防犯カメラは、総理の提唱するセキュリティークリアランスに則り、防犯カメラに加えて、通常とは違うカメラで、通常とは違う場所に設置してある。解析には時間がかかった。この女も実は、マエがあった。今はAI、本物のAIが『人相風体』を変えて分析してくれる。財前君がEITOに送った女でもある。五月春子と言い、ご祝儀泥棒で捕まったことがある。」

 久保田管理官が一息つくと、伝子は財前に尋ねた。「財前。この女は『枝』に見えたか?」「いえ、何も命令はしていませんでした。伝令か秘書みたいな感じでした。」

「君たちがバトルして捕まえた『枝』の話では、『ボスの秘書』だそうだ。ボスも女らしいが、一度チラ見しただけで、春子以外とは話した事はないらしい。佐幸を殺した無井と北崎も同じことを言っていた。司法取引が必要かと思ったが、新里が見事に口を割らせた。まこ・・・久保田警部補によると、かなりのやり手らしいな、新里は。先の記者会見でやって来た偽記者と偽警官2人も簡単にゲロしたらしいから。あ、脱線したな。ええと・・。」

「管理官。コブラさんチーム、いや、コブラチームの『枝』は何人だったんですか?」

 なぎさの問いに、「無井と北崎は『枝』じゃない、『葉っぱ』だな。元フィットネスのトレーナーの事件の方は、レイプ被害者リストの交際相手で、有力な被疑者が現れた。備前実という男で、レイプの相談をしたら、『俺に任せろ』と言って失踪したらしい。被害者の女性は警察に捜索願いを出すかどうか迷っていたと言う。備前はマエがない。モンタージュは作ったから、『家出捜索人』として、テレビで公開する。トレーナーを殺害した犯人でなくても、事件に巻き込まれた可能性がある。結論を言うと、コブラの『枝』は不明。君たちが闘った集団の『枝』は、徳野良和といい、コブラの2件は知らなかった。いや、詳細は知らなかった。マングースの方の『枝』だ。」

「それも、新里が落したんですか?おじさま。」と、黙っていた、あつこが言った。

「うむ。どうやって?と村越警視正が尋ねると、今の質問は聞かなかったことにします、って答えたそうだ。あつこ君は何か知ってる?」「いいえ。ただ、あらゆる点で優秀だったから、昇格試験の時、推薦しましたが。」

「これで、幾つかは、はっきりしたな。コブラ&マングースは、大文字君が言った通り、2つのグループが合体したのだろう。組織の中枢の人間が合体して攻撃すれば勝算があると考えて。コブラチームは、過激なことをするが、枝は不明。マングースチームは傭兵だが、枝を雇い、葉っぱに指示させている。白藤の手下誘拐事件は、2つの殺人事件とは無関係、詰まり、『こぶまん』とは関係ない。」と理事官は断じた。

 正午。伝子のマンション。

「失踪した男が気になるね。事件の真相を知って、消されたかな?」

「婿殿。消された、って警察用語?まるで警察官みたいよ。」「ああ、済みません。警察関係者が周りに多いから、つい。愛宕さん、お口に合います?」

「ああ、済みません。ご馳走になっちゃって。目刺し、大好きですよ。魚の、目刺しは。」

 高遠は、資料を届けに来た愛宕と、先に来ていた綾子と3人で昼食を食べていた。

「午後から、またウーマン銭湯に行くそうです。今回は有志だけで。みちるの再昇進祝いを兼ねて。」と、愛宕は言った。

「愛宕君。みちるちゃん、警部になるの?」「まさか。EITO内の役割の分担の階級ですよ。副隊長代理補佐から、副隊長に。」と、横から高遠が解説した。

「ああ。おしおきが終ったのね。『手下』は無傷だったの?レイプされたとか。」

「もう。お義母さんは、エッチなことばかり想像して。でもね、お姉さんは、試着室に連れて行って、裸にして総点検したそうです。もし、コブラの連中なら、タトゥー入れられたかも知れないし。異常無いこと確認したそうです。」

 愛宕は、玉井はみちるにはレイプされたかな?と思いながら、口には出さなかった。

 翌日。午前0時を回った時。

 ネットに『こぶまん』のメッセージが投稿された。

 完敗した。

 》

 ―完―


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