冒険283.トラップ(後編)

 ===== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 馬場[金森]和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 高木(日向)さやか一佐・・・空自からのEITO出向。副隊長。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 青山[江南]美由紀・・・、元警視庁警察犬チーム班長。警部補。警視庁からEITOに出向。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 七尾伶子・・・警視庁からEITO出向の巡査部長。

 大空真由美二等空尉・・・空自からのEITO出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。

 青山たかし・・・元丸髷署刑事。EITOに就職。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。

 久保田嘉三管理官・・・警視庁管理官。伝子をEITOにスカウトした。EITO前司令官。

 愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

 斉藤長一郎理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

 原田正三警部・・・新宿風俗担当の潜入捜査官だったが、EITO出向。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 河野事務官・・・主に警視庁連絡担当。

 早乙女藍・・・元白バイ隊隊長。EITOに出向していたが,娘の轢き逃げ以降、退職していたが、EITOに就職。

 大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。

 藤井康子・・・伝子のマンションの区切り隣の住人。

 須藤桃子医官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。

 高坂一郎看護官・・・陸自からのEITO出向。基本的に診療室勤務。

 橘藤兵衛・・・橘なぎさ二佐(一佐)の叔父。陸自の陸将。

 市橋早苗・・・移民党総裁。内閣総理大臣。

 武智忠司・・・国交省大臣。

 長谷川一子・・・女性建築士。

 妹尾和子・・・女性建築士。

 利根川道明・・・TV欲目の社員コメンテーター。後にフリーのMCになる。EITO協力者。

 高峰圭二・・・高峰くるみの夫。みちるの義兄。EITO協力者。

 森淳子・・・以前、依田や蘭が済んでいたアパートの大家さん。アパートが全焼し、新築した。

 玉井静雄・・・コスプレ衣装店{ヒロインズ}店長。

 中山ひかる・・・元愛宕のマンションのお隣さん。アナグラムが得意。

 他に、グローバル女子プロレスのプロレスラー。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==

 ==EITOガーディアンズとは、EITOの後方支援部隊である。========


 その時、ひかるから、高遠のスマホに電話があった。

「高遠さん、Redに、コブラ&マングースが『自己紹介の投稿』をしたよ。」

 初めまして、コブラ&マングースと申します。日本の警察のみなさん、自衛隊のみなさん。そして、EITOのみなさん。私とは『闘い甲斐』がありますよ。あ。今日は、ご挨拶だけだから、ゆっくり休んで下さい。ではまた、後日。

 》

「こいつらの天敵は、何だろう?」「知ってるよ。」「何だ?」「大文字伝子ちゃん。」

「やだ。学ったらあ。」

「やだ、学ったらあ。まだ新婚気分?あ。鳴らしたわよ。それと、開いてた。」

 怪訝な顔をして、高遠は確認に行くと、藤井が立っていた。

「おでん、食べる?」

「こぶまん、入れる?」と、伝子は聞き返した。

 その時、久保田管理官用のPCとEITO用のPCが同時に起動した。

「都内で、ペットショップが3軒襲われた。強盗なんだが、何故か、コブラを奪って逃げた。3軒ともだ。」と、久保田管理官が言った。

「時が時だ。マフイア組織と関連があるかも知れない。既に、一佐と警視には連絡済みだ。現地に向かってくれ。程なく、筒井が迎えに来る。」

 高遠と伝子は、すぐに準備にかかった。

 ほどなく、筒井が迎えに来た。

 午後5時。

 見送った高遠に綾子が尋ねた。「どんな関係?何でコブラ要るの?」「さあ。」

「その内、進展があるわよ。さあ、ジャガイモむくのを手伝って。」と、藤井が2人に言った。

 ジャガイモの皮をむく作業をしながら、高遠は反芻した。さっき、ネットで調べたところ、『外来生物法の[特定外来生物]」に指定されているフイリマングースは、もともと南アジアに広く生息する哺乳類ですが、1910年、ハブなどの駆除を目的としてガンジス川河口(現在のバングラデシュ)から沖縄島に導入されました。』とあった。

 奄美野生生物保護センターによると、ハブ退治に導入したマングースは、ハブの駆除にはならず、2005年からは「奄美大島からのマングースの完全排除」を目標に、外来生物法に基づく防除事業を進めています、と書いてあった。

 詰まり、中途半端な情報を元に行った、行政の大失策の尻拭い事業が存在することになる。

 動物保護法の改正に伴って、『保護しすぎて』爆発的に増えて困っている例は少なくいない。自然というものに人間が手を出すと、ろくな結果にならない。『絶滅危惧種』も人間が無計画な為に起きた現象だ。沖縄県にマングースが輸入(移入)されたのは、明治時代末(1910年)のことで、アフリカからインド、東南アジアにかけて分布する小型の肉食ほ乳類のマングースは1世紀以上かけて尻拭いをしていることになる。那珂国派の現沖縄県知事は、分かっているだろうか?何でも『可哀想だから』と介入してくる自称動物愛護団体は、外来生物法にもとづく特定外来生物に指定された動物のことなぞ知る由もないだろう。

「待てよ。」と、思わず高遠は声に出した。

「なあに、婿殿。待つわよ。」と綾子が言った。

「あ。ごめんなさい。コブラも調べたら、南海諸島に多く存在するんだけど、日本に生息するコブラは沖縄の『ハイ』という種類で、性が強い反面、その毒量が少ないからこそ危険はあまり無いとされている。今度の敵はキングコブラの類いなのか、ハイなのか?って悩んじゃったけど、ハイかも知れないな、と思って。これも、特定外来生物らしいけど、数は少ない。」

「高遠さん。考え込んでる割に、もうむき終ってるわよ。じゃ、おでんの準備にはいりまーす。」藤井は笑いながら、大きな鍋を火にかけた。

「婿殿。悩んでもさあ、やっぱり適当につけた名前なんじゃないの?今までの敵の幹部の名前、いつも適当で、センスがないのよ。」

「そうですね。今のところ、『幹』の名前しか分からないもんだから、つい・・・。」

 午後7時半。

 伝子が帰ってきた。

「どうだった、伝子。」「うん。三件とも解決した。過激な自称『動物愛護団体』が逃がしたらしい。いずれも、警邏の警察官に通報があり、捕獲した。テロと言えばテロだが、那珂国マフィアじゃない。我々も過激に反応してしまった。」

 夕飯をかけこむ伝子の横で、高遠は推理を始めた。

「という訳で、コブラを『ハイ』に置き換えてみた。まさかと思いながら、アナグラムと捉えて、解いてみた。念の為、ひかる君にも解いて貰った。すると、『はいまんぐうす』に対応出来る解は、『睡魔はぐう』か『麻酔はぐう』か『住まいはぐう』のどれかと言うことになった。それで・・・。」

「ちょっと待て、学。コブラ&マングースは、幹の名前だぞ。作戦名とは誰も言っていない。当の『こぶまん』もだ。」

「分かってる。でも、『闘い甲斐』って言葉、気になっていたんだ。『睡魔はぐう』は変な言葉だし、『麻酔はぐう』だったら、麻酔科医学会か、その関係のイベントになるけどね。『住まいはぐう』が有力、って話になって、ターゲットは国土交通省か住宅関係のイベントじゃないかと推測したんだ。すると、女性建築家のイベントが、明日3月2日にあることが分かった。」「じゃあ何か?『今日は挨拶』ってトラップだと?」「闘いがいい、って戦闘好きって、考えすぎかな?」

 伝子はおでん定食の食事を終えると、EITO用のPCを起動した。」

 一通り、伝子の話を聞いた理事官は、「何で自信が無いのかね?君は夫が信じられないのか?それとも、EITOが誇るエーアイが信じられないのか?どっちだね。やってみないと分からないさ。渡、緊急招集だ。ここに来なくてもいい。隊員達のスマホで十分だ。通信を繋げ。さあ、隊長、いや、アンバサダー。作戦の解説の準備をしてくれ。

 翌日。午前9時。台東区上野公園。東京美術館講堂。

「本当ですか?利根川さん。今日のMCは音無さんの筈では?」長谷川は怪訝な面持ちで言った。

「急遽交代しました。今、言った事情で。テレビ2の公開録画のセミナーは、どうぞ10時半から開始して下さい。オンラインで出席される方もおられるとか。EITOに任せておけば大丈夫。きっと終了時間までに終っていますよ。上野公園は、10時に一旦閉園します。でも、予定通り続けて下さい。お二人とも総理とお親しいとか。この方針は実は、総理からの依頼なんです。」

「了解しました。では、スタッフと打ち合わせしましょう。」妹尾は、了解して、長谷川と頷いた。

 午前9時。武智大臣の家。

 総理からの文章を読み終えた武智大臣は、「よろしくお願いします。早乙女さん。」と、早乙女藍と握手した。

 午前10時。上野公園。

 上野公園は、正式には上野恩賜公園と言い、西郷隆盛像や恩賜上野動物園(上野動物園)がよく紹介されるが、公園内部に色んな施設があるほか、その付近にも色んな施設がある。東京美術館(東京都美術館)も、その施設の一つである。

 なぎさ達が以前闘った時は、小堺組だったか、EITOに協力的なテキヤと共に闘った。

 東京美術館に到着すると、『芸術の散歩道』の立て看板があった。ここへ来い、ということだろう。なぎさは『跳弾』のことを思いだしたが、気を取り直して、早乙女と工藤以外の全員で向かった。

 また、交通規制を行っても無視してくるだろうから、上野公園全体に入場規制をかけ、東京美術館講堂に行く入場者には身分証明書かお名前カードを提示することになっていた。

 警備員の高峰圭二は、入場者チェックをした造園業者のトラックを見送り、EITOと警備会社に連絡を入れた。

 午前10時20分。芸術の散歩道。

 数台のトラックが到着した。

 バラバラと、トラックから人が降りて来た。ざっと、500人か。

 リーダーらしき男が言った。

「よく、ここが分かったな。」なぎさは、わざとふてぶてしい態度を取った。

「立て札があったからな。」

「そうじゃ無い。襲撃が何故分かったか、確認している。」

「頭がいいからな、『枝』ごときでは分からないだろう。」

「何、やっちまえ!!」

 男達は拳銃や機関銃を持ち出した。

 突然、ホバーバイクでEITOガーディアンズがやって来て、彼らに突進した。

 ホバーバイクとは、民間開発の『宙に浮くバイク』のことで、EITOが採用、運搬お呼び戦闘に使用している。

 筒井と井関はフリーズガンで応戦、馬場と高木はEITOハープーンを発射した。

 ハープーンとは、銛のことである。

 青山が、ウッドフルーレで機関銃や拳銃を弾いて行った。

 さらに、木陰から田坂、安藤、浜田の弓矢隊が敵の銃火器を狙って矢を放った。

 エマージェンシーガールズはブーメランやシュータを放った。

 シュータとは、EITOが開発した、うろこ形の手裏剣で、先端に痺れ薬が塗ってある。

 ある程度蹴散らした後、筒井は発煙筒を上空に撃った。

 ホバーバイク隊は、一旦退き、敵がやって来た方向から1台のトラックが走ってきた。

 トラックから降りたのは、覆面レスラーで、エマージェンシーガールズ姿の飯星も混じっていた。

 かつての敵の『枝』が一時修行していた女子プロレス団体は、会社更生法で復活していた。飯星が迎えに行って、助っ人を頼んだのである。銃火器がない環境での格闘技戦を。

 闘いは1時間で終った。

 なぎさは、長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛のような笛で、通常の大人の耳には聞こえない。主に『戦闘終了』等を示す、短い信号である。

 間もなく、西部警部補、愛宕警部、橋爪警部補が率いる通称『片づけ隊』がやって来た。

「一佐。あちらも終ったそうですよ。秘書がスパイでした。」

「ご苦労様、愛宕君。今回も、みちるの『手下』が活躍したみたいね。」と、あつこが言った。

「覆面レスラーの衣装は、スーツやマスク含めて在庫が一杯あるそうですよ、警視。」

 手下、というのは、愛宕の妻である、みちるにゾッコンで、まるで執事の様に仕える、コスプレ店店長玉井のことである。

 集団は、次々と逮捕連行された。

「あっけない、と言えばあっけないが、初戦だしなあ。」と、後から来た久保田管理官が、あつこに言った。

 午前11時半。武智家。

「今、簡単な取り調べをした後、護送されました。10人じゃ少なかったかな。」

「早乙女さんなら、500人でも簡単なようですね。爆発物を持った者がいましたが・・・。」

「あれはダミーです。一目見て分かりました。本物なら私が解体しています。もう、胃お出かけしても大丈夫ですよ。」

「ありがとうございました。」武智大臣は、早乙女と再度握手をした後、総理に報告をした。「了解。」と、総理は短く応えた。

 午前11時半。東京都美術館講堂。

「終ったそうです。ご協力ありがとうございました。」「ありがとうございました、なんて。助けて頂いたのに。」2人は利根川に深々と礼をした。

 午前11時半。EITO本部、指令室。

「陸将。終りました。」と、理事官が橘陸将に報告をした。

「コレで、遠慮無く誕生祝いが出来る。今日は、家内の誕生日なんだ。それで、だね・・・。」

「了解しました。」理事官は、なぎさに、陸将の家に泊まるよう進言することを暗に仄めかした。

 夏目警視正、渡、草薙、河野、原田、そして、伝子が笑った。

 午後3時。伝子のマンション。

 伝子が帰ると、珍しく森が来ていた。

「伝子。森さんに沢庵を一杯貰ったよ。」「あの子達が手伝ってくれたお陰ね。」

 新生森アパートは、事実上、EITOの若い隊員達の寮になっていた。

「あれ?学は?」と伝子が尋ねると、森と藤井は、奥の部屋を指指し、唇に指を当てた。

「エーアイは、『熱暴走』防止に、クールダウンか。」

 3人は、声を殺して笑った。

 ―完―


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