冒険237.短い新婚旅行

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

 斉藤長一郎理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 日向(ひなた)さやか一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。高木と結婚することになった。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

 江南(えなみ)美由紀・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。入院中。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

 青山たかし・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 田尾美緒子・・・白バイ隊隊長。巡査部長。

 本郷隼人二尉・・・海自からEITO出向。

 大蔵太蔵(おおくらたいぞう)・・・EITOシステム管理部長。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午前9時。EITO東京本部。会議室。

「その時間なら、もうこちらの闘いは終ってるけど、間に合わないわね。と、あつこが言った。

「そうね。でも収穫はあったわ。」と、なぎさが言った。

「高村光太郎は偶然じゃなかったということですか、理事官。」と、みちるは言った。

 今日の会議は10時からだ。理事官が闘いを労ってのことで、3人以外のエマージェンシーガールズも、伝子さえもまだ来ていない。

「うむ。芦屋一尉の推理でも、同じことを言っていたよ。高村とレッドサマーは『幹』と『枝』以上の繋がりだったのだろう。だが、高村は裏切った。東京大阪での同時作戦で、どこを狙っていたかは分からないが、高村の裏切りで叶わなかった。当然、レッドサマーは怒る。で、よりによって、ナイフガンを使用した。徹底的に調べた後、こちらに送って貰って、本郷君に分析して貰うことになっている。」

「総子ちゃん、危険を顧みずに頑張ってくれましたね。」「うむ。総子君には、大文字君のようなキーワードがあったらしい。」

「そうなんですか。初耳ですわ。おねえさまの『としま』に相当するんですか?」

 なぎさの質問に、理事官は簡単に答えた。

「『ちび』または『小娘』だそうだ。それを耳にすると、大文字君の『としま』のように、所謂『火事場のクソジカラ』を発揮する。EITOエンジェルズは、元々総子君がスカウトして来たレディースだということは、知ってるね。レディース時代、2つのレディースをけしかけて争わせようとした男、ヤンキーがいた。その男がキラーワードを言ってしまった。総子君は、その男と2つのレディースのメンバー全員を、一瞬のうちに倒してしまった。それで、レディースの連中は崇め奉るようになった。だから、昨日の現場でも誰も止めなかった。止めても無駄なのは分かっていたからだ。それでも一瞬の判断で拳銃を撃った男の腕を掴み、ナイフガンの男を狙った。本人は、脚を狙った積もりだったが、跳弾がふくらはぎに当たった。小柳警視正は、揉み合っている内に拳銃の弾が飛んだことで処理したらしい。実際、軽傷で済んだよ、ナイフガン男は。本郷君が言っていた通り、連射は出来ないから、ナイフガン男は逃げるしか無かったが、退路を断たれた。」

「高村は助からないんですか?」と、みちるが尋ねた。

「うむ。池上病院の蛭田教授に分析して貰ったが、新種の毒らしい。解毒薬は研究するとは、おっしゃっていたらしいが、あまり期待出来ない。恐らくは、那珂国で自生している植物を調合したのだろう、ともおっしゃっていたらしい。」

「手紙を残したということは、高村は想定していたんでしょうか?消されることを。」と、なぎさが尋ねると、「恐らくな。レッドサマーが高齢者の男性という事だけははっきりした。」

「これから、レッドサマーが、どういう声明を出すか、ですね。」と、今度はあつこが言った。

「そういうことだ。」と、理事官が言った時、渡と草薙が入って来た。

「遅刻ですか?」と草薙が恐る恐る尋ねると、「今、おまえたちの行く末を話していたところだ。」「え?クビですか?」

 3人姉妹がニコニコ笑っているのを見て、草薙と渡は冗談と気づいた。

「ああ。向こうにも新人が入ったそうだ。用賀という空自の男で、芦屋二美の元カレだそうだ。」と、理事官は笑い、「10時から会議だ。」と言いながら、出て行った。

「昨日、あの後の時間帯で、大阪では大変だったのよ。」と、なぎさは悪戯っぽい仕草で言った。

 草薙は、『このツンデレが堪らない』と思った。

 午前10時。

 伝子と、EITOメンバーが続々と入って来た。

 理事官は、しれっと『伝子シスターズ』に話した内容から話し始めた。

「じゃ、偶然じゃ無かったんですか?」と大町が言った。

「何だ、大町。」「いえ、その・・・東京のイメージカラーと智恵子抄は偶然だと思っていました。」「うむ。結果的には偶然じゃなかった。だが、レッドサマーのメッセージが続かなかったから、偶然に賭けるしかなかった。不発に終る可能性も鑑みた上で。そうだろ?大文字君。」と、理事官は伝子に話を振った。

「ええ。その通りです。不発だったら、『なあんだ』で済むことも、そうでない場合、何故考慮しなかった、ってことになりますから。結果的に、大町の言う通り、偶然じゃなかった。順番が逆だった。どこかでレッドサマーは、大阪の高村と知り合い、『枝』にした。高村の名前から、『智恵子抄』で盛り上がったかも知れない。通常、有名人と名前が同じなら、それをイジメのネタにされる。でも、高村は違った。『万博を知らない奴』ということでイジメに遭った。自分の名前では引け目を感じていなかった。とにかく、レッドサマーは、レッドサマー{大阪支部}として、高村を育てていた。だが、大阪・関西万博反対運動に積極的に運動していた彼は復讐心に燃えた。当時、虐めた奴にではなく、大阪府の実行委員会に怒りを覚えていて、北港テクノポート線の工事を妨害することを考えた。レッドサマーは、何らかの東京・大阪同時作戦をしようとしていたのに、裏切られた。だから、消すしか無くなった。」

「でも、おねえさま。長居競技場のダイナマイト、天六の慰霊碑は警告だったんでしょう?高村に温情があったのかしら?」

「レッドサマーを倒した時に確認するしかないな。兎に角、なぎさの言う通り、まずは警告したのだろう。『無色透明』と、佐々刑事が発見したメモにかいてあったのは、『止めろ』の意味合いだったのかも知れない。」

「ああ。ホテルのボヤも出来すぎている。『通行人の通報』でボヤだった、ということになっているが、実は放火した本人かも知れない。あの建築請負の会社は、延伸工事の会社と同じだ。」と、理事官は言った。

「高村も『枝』だったけど、総子ちゃんが阻止した拳銃の男も『枝』だったんですよね。EITOエンジェルズが来ることをどうやって見極めたのかしら?」となぎさが言うと、筒井が「長居競技場の場合は、ニュースになった筈だ。慰霊碑の方は分からないが、ホテルの建設現場の方は、放火して通報した本人が見張っていればいい。そして、EITOエンジェルズは去った。あ。そうか。佐々刑事が見る前に、慰霊碑であの紙片を見ているんだ、高村は。ガス爆発事故の慰霊碑なんだから、延伸工事を妨害しに行く前に寄ったに違いない。で、高村はレッドサマーに詫びの連絡を入れなかった。」と自説を展開し始めた。

「それで、監視していた仲間が『枝』に連絡を入れた。筒井君の説が正しいとすると、結構人数がいたのね、大阪のレッドサマーの配下は。戦闘は那珂国の『出前』だろうけど。」と、あつこが言った。

「あ。あのナイフガンは?」と言うみちるの質問に理事官は「本物のようだ。大阪府警や科捜研で調べた後、こちらに送って貰うよう依頼してある。」と応えた。

「つまり、以前、南部さん達が見付けたナイフのナイフガンは、まだ大阪にあった。東京に出現していないのは、量産しにくいから?」と、みちるは言った。

「あのー。レッドサマーがやり損なった、作戦って・・・大阪支部の。」

「大阪のシンボルカラーは、『青』だそうです。青にまつわるイベントが攻撃対象だったのではないでしょうか?」と草薙が言った。

「失敗したから、もう調べても仕方が無い、か。しかし、こちらの事件と併行して行われれば、下手すれば大惨事になったかも知れんな。」と、夏目警視正は言った。

「もう、昼前だな。青山はどうしてるかな?よし、一旦解散しよう。緊急の場合に備えて、あまり『遠出』はしないようにな。」と、理事官の一言で、会議は終った。

 午後1時。伝子のマンション。

「と言う訳だ。」急いで昼食を掻き込んで食べて、伝子はLinenでDDメンバーに伝えてやった。本来は、EITOの任務は教えない方がいいのだが、時々作戦を手伝って貰っているから、伝子は話してやっている。

「青山さん達、ゆっくり出来ているのかな?現場から直行したんだよね。」「ああ。時間が時間だからな。オスプレイで送らせた。箱根のやすらぎほのかホテルにも、ヘリポート出来ているんだ。」「それで、EITO御用達か。」

「先輩。高遠。江南さんからメール来たよ。明日、引き払ってから、ウチに来るって。」

「ああ、サチコとジュンコか。暫く会ってないな。」と、伝子は応えた。

「大文字。その途中で狙われるって事はないよな、流石に。」「可能性はある。だから、配置した。」と、にべもなく伝子は言った。

 翌日。午前11時。東京駅。

 駐車場から、青山と江南が乗った車が出てきた。

 午前11時半。高速2号線。

 追跡してきた三台の車が、煽り運転で幅寄せしてきた。

 三台の内、一台が拳銃で撃って来た。

 青山の車の上にホバーバイクが現れ、乗った。青山は運転を江南に任せて、車上のホバーバイクに移った。ホバーバイクとは、民間開発の『宙に浮くバイク』で、EITOが採用、改造して戦闘または運搬に使用している。

 ホバーバイクを運転してきた金森が青山を前に乗せると、すぐに車から離れた。

 追跡車が、一気にスピードをあげ、青山の車を追い越して、前に前に回り込もうとした。ホバーバイクから金森がブーメランを投げ、青山は『ウッドフルーレ』を発射した。

 これは、青山が大蔵に提案して、ホバーバイクの装備にしたものだ。『足止め用の武器』だ。

 追跡者は横転した。江南は、急ブレーキとスプリングジャッキで駆使して、ウイリー状態で急停止した。スプリングジャッキとは、この為に開発するように、江南が本郷にアイディアを出したものだ。まるでSF映画のような展開に、残りの2台はすぐに停まり、中から人が手を挙げて出てきた。ホバーバイクは去って行った。

 白バイ隊とパトカー数台が近づいて来た。

 田尾隊長は言った。「煽り運転ですね。器物破損も追加かな?署で田代刑事に可愛がって貰いなさい。連中は、逮捕連行され、パトカーは去って行った。

「では、我々が『先導』します。江南警部補。もとい、青山警部補。」

「今は、EITOの事務員よ。」と、江南はにっこり笑った。

 午後2時半。福本邸。

 元警察犬のサチコとジュンコが、江南に貰った『おやつ』を食べている。

「無事で良かった・・・って、先輩に抜かりはないか。」と、」祥子は、赤ん坊のめぐみを抱いて言った。

「江南さんも、祥子ちゃんに負けない元気な赤ちゃん、産んでね。」と、明子が言った。

「お義母さん。まだ、早いわよ。新婚旅行から帰ったばかりなのよ。」

「そうだったわね。」と、明子が言い、皆で笑った。

 Linenのテレビ電話で、伝子達も見て笑った。

 午後3時。馬場のアパート。

「ただいまー。」と、金森が帰って来た。

「お帰り。無事で良かったね。」「うん。さっき田尾さんから連絡があった。単なる、チンピラの煽り運転だったらしい。拳銃はモデルガン。住まい、どうするんだろう?」

「さあね。当面は今のままだろう。でも、副総監が仲人なんだから、何とかなるんじゃない?」2人は休暇の続き体勢に入った。

 午後6時。

 Redにレッドサマーのメッセージがアップロードされた。

《いやー、待たせちゃったね。》

 ―完―


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