冒険234.忍び寄る影

 ===== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。

 大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。

 一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。

 久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。

 愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。

 愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。

 斉藤長一郎理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。

 夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。

 増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。

 金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。

 馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。

 馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。

 大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。

 田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。

 浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。

 新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。

 結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。

 安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。

 日向(ひなた)さやか一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。高木と結婚することになった。

 飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。

 稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。

 愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。

 工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向の巡査部長。。

 江南(えなみ)美由紀・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。

 伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。

 葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。

 越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。

 小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。

 下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。

 高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。

 筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。

 青山たかし・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。

 財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。

 仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。

 井関五郎・・・鑑識の井関の息子。EITOの爆発物処理担当。

 渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。

 草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。

 河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。

 久保田嘉三管理官・・・EITO前司令官。斉藤理事官の命で、伝子達をEITOにスカウトした。

 久保田誠警部補・・・愛宕の先輩刑事だった。あつこの夫。久保田管理官の甥。

 藤井康子・・・伝子マンションの区切り隣の住人。EITO準隊員待遇。

 中津警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。

 中津健二・・・中津警部の弟。興信所を経営している。大阪の南部興信所と提携している。

 西園寺公子・・・中津健二の恋人。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。

 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。

 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。

 根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。

 南部寅次郎・・・南部興信所所長。

 山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。今は、非常勤の海自事務官。

 物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。

 依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル東京支配人。

 依田[小田]慶子・・・依田の妻。やすらぎほのかホテル東京副支配人。

 福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。今は建築設計事務所に非常勤で勤務。

 橋爪警部補・・・丸髷署生活安全課刑事。愛宕の相棒。

 松下宗一郎・・・福本の元劇団仲間。

 服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。

 田尾美緒子・・・白バイ隊隊長。巡査部長。

 本郷隼人二尉・・・海自からEITO出向。

 大蔵太蔵(おおくらたいぞう)・・・EITOシステム管理部長。

 大文字綾子・・・伝子の母。

 青木新一・・・Linenが得意で、複数のLinenグループの友達を通じてEITOに協力をしている。

 中山ひかる・・・アナグラムが得意な大学生。伝子達が卒業した大学に入り、伝子達の後輩になった。EITOにたびたび協力している。

 中山千春・・・ひかるの母。宝石商を営んでいる。

 池上葉子・・・池上病院院長。

 福本日出夫・・・福本の叔父。タクシードライバー。元警視庁刑事。

 松下[東山]紀子・・・松下の妻。松下が勤めていた酒屋の娘。

 芦屋三美・・・EITOの大株主でもある、芦屋グループ総帥。

 天童晃(ひかる)・・・かつて、公民館で伝子と対決した剣士の一人。EITO顧問。


 枝山浩一事務官・・・EITOのプロファイリング担当。


 =================================================

 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午前9時。EITO本部。会議室。

 七五三作戦の次の日である。枝山事務官が入って来る。

「お久しぶりです。皆さん。米軍の研修からただいま戻りました、理事官。」

「ご苦労さん。和知探偵のことは?」「喜んで、提供して頂きました。今後の作戦に役立てばいいですね。作戦と言えば、相変わらず、大文字さん、いや、アンバサダーの判断力は、今更ながら素晴らしいですね。」

 枝山から褒められた伝子は、照れながら、「いや、総理のお孫さんのことは、中津さんから言われるまで忘れていました。陽動でも油断出来ないとアドバイスしたのは、ウチのダーリンです。」と言い返した。

 皆、クスクスと笑っている。「元反社の方は、露店もあるだろうと他の神社の警戒を頼みましたが、七五三はあまり儲からないので露店を出さない、と言われ、日枝神社の方に応援を頼みました。あ。今は千歳飴、社務所で扱うそうです、問屋から仕入れて。お守りと同じですね。」

「それはそうと、今日はメンバーが少ないですね。」と枝山事務官が言うと、「今日は、みちるの、いや、警察組は白藤の家の新築祝いにDDメンバーと一緒に行っています。」と伝子は応えた。

「ああ、全焼したのでしたね。で、どの辺に引っ越されたのでしょうか?」「元の場所です。みちるの強い要望に、署長も受け入れられて。『新築瓜二つ』という、建築会社の商品です。元の家のイメージそのままだそうです。私達も午後からお祝いに行きます。愛宕夫妻は、元の賃貸マンションに空きが出たので仮住い、白藤署長夫妻は官舎に仮住いでした。」

「トラウマになりませんか?」「私達も心配しましたが、池上先生は、かえってショック療法になると、おっしゃっていました。」

「私も、おっしゃっていました。」と、須藤医官が、高坂看護官と入って来た。

「枝山君。連行する。抵抗は無意味だ。」そう言って、須藤は高坂と一緒に枝山を連れて出て行った。

「連行って、今言われた?「私にも、そう聞こえた。」

 仁礼と財前の言葉に苦笑した夏目が「健康診断だよ。研修中行ってないだろ?医官にとっては、『罪』なんだよ。」と言った。

「仁礼や財前には、刺激的なシーズンだな。」と、増田は言った。2人は、曖昧な笑いを返した。

 午前9時。新愛宕邸。

「本当に、前のままの感じだなあ。リフォームしたみたいだ。」と、青山は言った。

 伝子が説明した通り、愛宕とみちる、そして署長夫妻の家は、すっかり再現されていた。そして、警察組という、あつこ、結城、あかり、江南、小坂、下條、工藤が来ていた。EITOから離れた早乙女や、EITOに就職した静音も来ていた。

 下條は、まだ三角巾をしていて、病院からの『外出』だった。

 DDメンバーは、物部、福本、娘を抱いた祥子、依田、慶子、山城、蘭、南原、文子、服部、コウがやって来ていた。

 全焼したので、前回のような荷物搬入は無かった。あつこは息子の健太郎は連れて来なかった。あつこは「本当の流産」をした、みちるに遠慮したのだ。

 やがて、久保田警部補や橋爪警部補、中津警部もやって来た。

 最初に、署長が挨拶をした。「皆さん、ご多忙の所、実に有り難い。ありがとうございます。みちるの要望で、前と一見変わらない家が出来たので驚かれたでしょう。前回に懲りて、セキュリティーシステム、防火システムは万全です。斉藤理事官から、警護の進言があったので、付近には中津興信所メンバー、1キロ四方は警邏課と筒井警部の巡回が付いたので、ゆっくりして行って下さい。」

 午後1時。

「本当に、前のままの感じだなあ。リフォームしたみたいだ。」と、高遠が言った。

 みちるが何故かクスクスと笑っている。

 午前中の来客と代わって、伝子夫婦とEITOメンバの金森、増田、馬越、田坂、安藤、浜田、日向、稲森、飯星、伊知地、葉月、越後、馬場、高木、財前、仁礼がやって来た。

 なぎさと井関はEITOで留守番だ。なぎさの心情が分かる伝子は、井関を残した。

 宴会の話題は、出産や育児は話題として、タブーになっていた。一部の人間を除いて、『伝子も流産した』ことになっているからである。

 興が乗って、署長は、みちるの思い出を語ろうとしたが、署長夫人が制した。みちるが流産を思い出すと辛いからだ。

 話題は、俄然、ダークレインボーとの闘いになった。

 ダークレインボーの幹部『幹』は、皆、不幸な過去を持っていた。生きて拘置所にいるのは、オクトパスこと山下のみだ。

 久保田管理官がやって来た。丁度、山下の話題が出ていたので、久保田管理官は話した。

「こういう時に、仕事の話ばかりも味気ないが、山下はやはり、レッドサマーの情報は何も持っていなかった。ただ、最近幹部になったのかも知れない、とは言っていた。最初我々は、レインボーという名前から7人の幹部と想定していたが、山下は笑って『ヒーロー映画じゃないんだから、倒せば数が減るというのは、所謂希望的観測じゃないのか?』と言ったよ。」

「つまり、幹部や部下を倒して行っても、『補充』する筈だと?」と、増田が問うと、「その通りだ、増田隊員。これは、ヒーロー映画やゲームじゃない。エンドレスかと言われれば、その通りと答えるしかない。でもな。みんなはくじけない。私は、そう信じている。理事官も夏目警視正もだ。」と、久保田管理官は言った。

「私は、みちるが大文字君と出会って、みんなとEITOの運命共同体になれたことを誇りに思っている。言わない積もりだったが、やはり言おう。みちるが乗り越えられたのは、大文字君を始め、皆の協力があってこそだ。改めて礼を言う。ありがとうございます。」

 午後3時。EITO本部。食堂。

「井関。行っても良かったのに。」「隊長命令ですので。」

 なぎさの言葉に、井関は、にっこり笑った。

 草薙と渡が、コーヒーと煎餅を持って来て、2人の前に座った。

「我々は行きたかったけどね。」「理事官に怒られちゃった。」

「聞こえたぞ。仕事さぼりやがって。」と、斉藤理事官も、同じテーブルに着いた。

「一佐。来月警察側と自衛隊側から一人ずつ新人が入って来る。よろしくな。今知らせが来たばかりだから、大文字君はまだ知らない。明日の会議で改めて話す。」

「了解しました。レッドサマー、今日はお休みなんでしょうか?」「敵も準備があるからな、毎日事件起すとは限らない。山下に寄れば、那珂国の兵隊はレンタルらしいから、作戦の設計が出来たら、注文するんだろうな。まるで商品だ。」

 午後5時。

 理事官が解散を命じたので、なぎさも井関も渡も草薙も帰宅した。

 今日は、枝山事務官がいるので、夜勤として2人の代行をすることになっている。

 午後6時。伝子のマンション。

「今日、どうする?おさむに会いたくなった?」「うん。なぎさが迎えに来る。だから、今夜の『バトル』は、オアズケな。」「獰猛な性欲、今日は抑えてくれるんだな。」

 夕方、綾子が来ることが多いが、今日は、午後から来て、5時には帰った。

 伝子の子供のことは、一部の人間しか知らない。危険なので、伝子の母綾子にも伏せてある。

 午後9時。池上家。おさむの、通称育児室。

「すくすく育っているわ。」おさむを抱かせて貰って、なぎさが嬉しそうに言った。

「すまんな。秘密の共有なんかさせて。」「ううん、いいの。おねえさまの役に立ちたいから。それより、みちるの勘通り、やってくるかしら?」「五分五分だな。」

 午前1時。新愛宕家。お勝手口。

 みちるの勘は当たっていた。叔父である、署長は敵が多い。以前の火事は、『死の商人』グループが関与していた。しかし、署長の、刑事時代の事件が関係していないとも限らない。『鬼の白藤、仏の黒田』という、所謂『良い刑事、悪い刑事』のコンビで、相棒の黒田刑事と有名だった人だ。

 お勝手口から、賊の一団が侵入した。

 数人がかりで台所近くに灯油を撒こうとした瞬間。けたたましいサイレンが鳴り、あたりはスポットライトの明りで真昼より明るくなった。

 署長とみちるが現れ、みちるは、連中に水鉄砲を浴びせた。

 みちるが撥ねのくと、どこからか庭の散水機の水が、男達に振りかかった。

 午前2時。床の間。

 みちるは、署長の膝枕で、すやすやと眠っていた。愛宕は、

 愛宕は、そっと襖を閉め、寝室に戻った。みちるにとって、最高の寝具は、叔父の膝枕だった。「おじちゃん子」だった証だ。

 午前3時。Redにレッドサマーのメッセージが載った。

 翌日。EITO本部。会議室。

 愛宕の報告に、皆は爆笑した。

 ―完―



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