冒険222.レインボーブリッジ封鎖しました(後編)
===== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田誠警部補・・・愛宕の先輩刑事だった。あつこの夫。久保田管理官の甥。
愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。
斉藤長一郎理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
村越警視正・・・副総監付きの警察官幹部。あつこがEITOに移ってから、副総監の秘書役を行っている。
増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
日向(ひなた)さやか一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。
江南(えなみ)美由紀・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。
青山たかし元警部補・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。
河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
橋爪警部補・・・丸髷署生活安全課刑事。愛宕の相棒。
久保田嘉三管理官・・・EITO前司令官。斉藤理事官の命で、伝子達をEITOにスカウトした。
山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。今は、非常勤の海自事務官。
山城[南原]蘭・・・山城の妻。南原の妹。
物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。
依田俊介・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。あだ名は「ヨーダ」。名付けたのは伝子。やすらぎほのかホテル東京支配人。
依田[小田]慶子・・・依田の妻。やすらぎほのかホテル東京副支配人。
福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。今は建築設計事務所に非常勤で勤務。
福本[鈴木]祥子・・・福本が「かつていた」劇団の仲間。福本の妻。
南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。元高校の国語教師。妻文子と塾を経営している。
南原[大田原]文子・・・南原の妻。
服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。
服部[麻宮]コウ・・・服部の妻。
渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。
草薙あきら・・・EITOの警察官チーム。特別事務官。ホワイトハッカーの異名を持つ。
大文字綾子・・・伝子の母。介護士をしている。
南部[江角]総子・・・伝子の従妹。EITO大阪支部のチーフ。
幸田仙太郎所員・・・南部興信所所員。総子のことを「お嬢」と呼ぶ。
中津健二・・・中津警部補(中津刑事)の弟。興信所を経営している。大阪の南部興信所と提携している。
西園寺公子・・・中津健二の恋人。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。
守谷哲夫・・・SAT隊長。
東山英一・・・SAT副隊長。
市橋早苗総理・・・移民党の現総理。
能美哲夫・・・農水省大臣。
仁礼海将・・・海自の、上から2番目に偉い人。
安住信次・・・海上保安庁の一等海上保安正。
天童晃(ひかる)・・・かつて、公民館で伝子と対決した剣士の一人。EITO東京本部トレーニング顧問。EITO準隊員。
和知南・・・国枝大学学生。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
翌日。午前9時。EITO本部。会議室。
「私、知らなかった。お台場の『自由の女神』なんて。」と、あかりが言った。
あかりが視線を向けると、下條と小坂が「わ、私たちも知らなかったです。あまりテレビ観ないし。と言い訳した。「嫌いなユニゾンだな。」と、あかりは凄んだ。
「ま、私も草薙に言われる迄は知らなかったよ。」と、理事官が助け船を出した。
「では、会議を始めよう。」会議は午前中一杯を使って行われた。
正午。目黒区。あるマンション。
中津健二は妻でもある、公子と一緒に以前の事務所に荷物を取りに来ていた。妻とは言っても、事実婚である。だから、対外的には中津は公子のことを『西園寺』と言っている。
伝子のマンションと違い、中津のマンションは『賃貸』である。以前、『目黒区レイプ事件』があった、舞台でもある。
「あのう。『所員募集』って貼り紙があったと思うんですけど。」と、声をかけてきた女性がいた。
「ああ。引っ越したんですよ。前払いで家賃払ってたから、倉庫代わりにしています。所員はねえ。定員に届いたから、もう募集していないんです。」
中津の返事に、「困ったな。実は私、所謂帰国子女で、日本のことあまり知らないんです。で、探偵に憧れていて、アルバイトで雇って貰って修行したいんです。一人くらいいいでしょ?所謂『お茶くみ』からで。」と強引に応募してきた。
名刺を差し出してきたので、見ると、公子と同じ女子大の学生だ。
「所長。1ヶ月様子見ってことでどうですか?私も授業がある日もあるし。」「ふうん。・西園寺と同じ大学かあ。じゃ、明日から、ね。」
そうこう言っている内に、何かきな臭い臭いがしてきた。
「臭うな。上の階だ。」3人は上の階に階段で移動した。端の部屋から煙が出ている。
その女子大生、和知南は、素早くスマホで119番にかけた。
公子は、階の中央にある非常ボタンを押した。
中津は、ハンカチを口に咥えて、部屋に飛び込んだ。
公子や南が部屋に入ろうとしたが、押しとどめた。中に人が倒れているが、ぱっと見で亡くなっていることは分かった。その人の周りには、血だまりが出来ていたからだ。
「降りよう。」
午後1時。マンションの外。
火は消し止められたが、中にいた人は中津の判断通り、既に亡くなっていた。いや、殺されていた。
鑑識の井関が、馴染みのある中津にそっと教えてくれた。「発火時限装置が見つかったよ。どうやら、犯人は惨殺だけでは欲求が足りなかったらしい。あれ?中津君、引っ越したんじゃないの?」「先払いしてあるので、倉庫に使っていて、荷物取りに来たんです。」
「ふうん。美女が2人もいて、羨ましいな。」と言っている井関を、部下が呼びに来た。
先ほど、事情聴取した、目黒署の蒲池警部補が呼んだのだろう。
「じゃ、帰ろうか、西園寺君。あ、和知君。新しい住所は、こっちね。君の部屋は現場の真下だね。あ。ひょっとしたら、レイプ事件の時、もう住んでた?」
「はい。引っ越した人多かったけど、私は引っ越したばかりだったし、幽霊信じないし。」「あ。そうなんだ。じゃ、明日ね。」
午後2時。総理官邸。応接室。
エマージェンシーガールズ姿のなぎさがいた。農水大臣の能美哲夫は、市橋総理に言った。「本当に私が狙われるんですか?EITOの、総理の評価は存じ上げていますが、私は何故狙われるのでしょうか?」と食ってかかった。
「東日本大震災の時に事故を起した原発のALPS処理済み水の放流、2回目は、いつだったかしら?立ち会いに行かないように大臣にお願いしたのも、ここにいて守って貰ってとお願いしたのも、テロからの防衛の為です。今日は、副隊長に指揮を任せた隊長は、素晴らしい情報力、判断力と常々思っています。任せましょう。」
「大臣。ご自身への恨みから敵は攻撃するんじゃなくて、日本政府を貶める為にあらゆる手段を使って攻撃をしかけて来るんです。ご自宅の方にも、既に警備体制を敷いております。」と、なぎさが言った。
30分後。窓から催涙弾が撃ち込まれた。遠方からの攻撃だった。
数分後。総理官邸。執務室。
ガスマスクをした一団が、雪崩込んでいた。
「誰を探している?大臣も総理ももう、この建物内にはいないぞ。」エマージェンシーガールズ姿のなぎさが言った。一団は、接近戦が得意の金森、大町、馬越、飯星、江南と共に、なぎさは制圧した。
なぎさは、長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛のような形だが、特殊な音波を出す、EITO開発の信号装置だ。
同じ頃。能美の自宅。
3人組の男に誘拐されようとしていた能美の孫は、女性警察官姿の早乙女、結城、あかりによって阻止、逮捕された。結城は長波ホイッスルを吹いた。
同じ頃。海自の護衛艦『もがみ』がレインボーブリッジに到着した。
また、横浜海上保安部から『巡視船いず』がレインボーブリッジに到着した。
レインボーブリッジの橋桁等には、昨夜陸自の総力を挙げて爆発物を確認していた。
女性警察官姿のあつこは、それでも、海自と海上保安庁に協力を求め、レインボーブリッジを封鎖し、橋の両側に工藤が率いる白バイ隊を配置した。
レインボーブリッジの外側には、青山、高木、馬場、井関の乗ったホバーバイクが待機した。ホバーバイクとは、民間開発の『宙に浮くバイク』でEITOが採用、改造した戦闘及び運搬用のバイクである。
同じ頃。お台場海浜公園。『自由の女神像レプリカ』付近。
大勢の人間が集まっていた。サンドシンドロームがRedで発表したからだ。
大勢の警備員に交じって、物部、栞、山城、蘭、依田、慶子、福本、祥子、南原、文子、服部、コウ達は群衆整理に追われていた。
総子と幸田も周囲に目を配っていた。周囲に目を配っていたのは、南部興信所の2人だけでは無かった。
中津興信所の、中津健二、西園寺公子、高崎、泊、根津も、そして、臨時雇いの和知も周囲に目を配っていた。
同じ頃。廃墟になった、元テレビ局。ある部屋。
立ち入り禁止の筈が、十数人の男達が陣取っていた。
その一人が、今にもロケットランチャーの引き金を引こうとしていた。
どこからかともなく、ブーメランが跳んできた。ブーメランは男の顎をこすった。
そして、シュータが男の脚に刺さった。シュータとは、EITOが開発した、うろこ形の手裏剣で、先端に痺れ薬が塗ってある。
エマージェンシーガールズの日向、田坂、安藤、浜田、工藤が雪崩込み、一団を制圧した。
日向は、長波ホイッスルを吹いた。SATがなだれ込んで来た。
「後はお願いします。」とエマージェンシーガール姿の日向はSAT隊長の守谷に言った。
「了解しました。公園の方は、東山達が待機しています。」
午後3時。レインボーブリッジ。
何も起こらなかった。
午後3時。お台場海浜公園。
何も起こらない。日常通りだ。
「何も起こりませんねえ。」と和知が言うと、「起こって欲しいのか?」と近くにいた男が和知に拳銃を突きつけた。
そして、群衆の中の幾人かが武装スタイルになった。いつの間にか、機関銃や刀を持っている。
「そこまでだ!」という伝子の声が聞こえ、エマージェンシーガールズが現れた。
伝子、増田、伊知地、稲森、静音、葉月、越後、小坂、下條、らいむはバトルスティックで立ち向かい、総子と幸田は、避難誘導を始めた。東山率いるSATはエマージェンシーガールズに続いた。
中津健二達が戸惑っていると、和知は、隙を見て自分に拳銃を当てていた男に肘鉄砲を食らわせ、逃げた。
男は戸惑ったが、エマージェンシーガールズに向かって行った。
中津達も、その場から避難した。
エマージェンシーガールズとSATは一団の闘いを30分で終了させた。
30分後。海自の船と海上保安庁の船は引き上げて行った。ホバーバイク隊はオスプレイに引き上げた。
伝子に海上保安庁の安住信次保安正と仁礼海将から、お礼の連絡がEITOを通じてあった。
レインボーブリッジでは、あつこが長波ホイッスルを吹いた。白バイ隊も引き上げた。
そして、お台場海浜公園では、増田が長波ホイッスルを吹いた。
警官隊が、逮捕連行にやって来た。伝子に筒井から『異常なし』の通信が入った。筒井は、ある戦闘を機に、敵の撮影者がいないかどうか、戦闘中撮影し、監視している。
午後3時。福島第一原発近く。
政務官の牧田は、100先の放流反対デモを気にしながら、車を降りた。遠くに巨大なタンクが並んでいるのが見える。
「放流反対!」牧田にナイフで突進してきた人物を牧田は簡単に交わし、ナイフを叩き落とした。数人の男達がバットで殴りかかろうとしたが、牧田は素早い動きで杖を振り、『面』と言って、男達を地面に叩き伏せた。
「ご苦労様です、天童さん。」と言って、愛宕警部と橋爪警部補、警官隊がやって来た。牧田は天童の変装だった。
愛宕警部は長波ホイッスルを吹いた。
午後5時。JR目黒駅前。権之助坂。
坂の入り口近くの交番から50メートル。介護施設の前に路上駐車している車があった。
中津興信所の2台の車に便乗していた総子と幸田は中津に礼を言った。暫く、車中で『興信所あるある』や『探偵あるある』で盛り上がったのだ。
そのせいか、和知は車から降りると、「あのー。実は私、こういう者です。」と、ササッッと身分証のようなものを見せた。「アメリカの探偵?」と中津は驚いて言った。
「所長。歓迎会は出ますので、ちょっと用事を済ませて来ます。」
そう言って和知は、駐車していたアウディに乗って去って行った。
訪問介護の「駐車許可証」が宙に舞った。「堂々と違反してるわ・・・。」と公子が言った。「いい車だわ。」と根津が言った。
「あの子。スパイかも知れん。」「お嬢もそう思ったか。俺も怪しい気がした。偽の許可証貼ってたし。」
「ウチ、学兄ちゃんに聞いたことあるんや。これ見て。」
総子は、高遠から総子に送られた来たLinenのメッセージを読んだ。
「2年半から5年かかるってか。大学ダブってたとしても計算合わんな。」と、覗き込んだ中津は言った。
「それに、ICレコーダーで録音してた。それで、新兵器登場や。」総子はバッグの奥からホイッスルを出した。
「長波ホイッスル?ちょっと違うな。」と幸田が言うと、「一心の会代表誘拐事件の時に二美ネエが使ったホイッスルの改良版や。まだ試作品やけどな。要は、スクランブルの音波を出して、録音の妨害をした、という訳や。」と総子が応えた。
「ああ。秘書がストリーキングさせられて、パラグライダーから音波出したホイッスルか。ふうん。」
「じゃ、ここでいいんだね、ふうちゃん。」「うん。図書館にとめているから。中津さん、またなー。」
総子と幸田は、中津興信所の連中と別れ、二美と待ち合わせしている目黒区図書館に辿り着いた。駐車場に、オスプレイが『駐車』していた。
オスプレイの横には、二美が立っていた。
「コマンダーが支部でお待ちかねみたいよ、総子。」
「土産話やったら、仰山あるで。」
午後7時。レインボーブリッジ。
レインボーブリッジは『青色』にライトアップされた。
―完―
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