冒険210.狙われた3党首
====== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子(だいもんじでんこ)・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字[高遠]学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
一ノ瀬[橘]なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「一佐」または副隊長と呼ばれている。EITO副隊長。
久保田[渡辺]あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。皆には「警視」と呼ばれている。EITO副隊長。
愛宕[白藤]みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。愛宕の妻。EITO副隊長。
愛宕寛治警部・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。
斉藤長一郎理事官・・・EITO司令官。EITO創設者。
夏目房之助警視正・・・EITO副司令官。夏目リサーチを経営している。EITO副司令官。
増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。副隊長補佐。
金森和子二尉・・・空自からのEITO出向。副隊長補佐。
馬場力(ちから)3等空佐・・・空自からのEITO出向。
馬越友理奈二曹・・・空自からのEITO出向。
大町恵津子一曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ一曹・・・陸自からのEITO出向。
浜田なお三曹・・・空自からのEITO出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からの出向。副隊長補佐。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からの出向。
安藤詩三曹・・・海自からのEITO出向。
日向(ひなた)さやか一佐・・空自からのEITO出向。伝子の影武者担当。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。EITOに就職。
稲森花純一曹・・・海自からのEITO出向。
愛川静音(しずね)・・・ある事件で、伝子に炎の中から救われる。EITOに就職。
工藤由香・・・元白バイ隊隊長。警視庁からEITO出向。
江南(えなみ)美由紀・・・元警視庁警察犬チーム班長。EITOに就職。
伊知地満子二曹・・空自からのEITO出向。ブーメランが得意。伝子の影武者担当。
葉月玲奈二曹・・・海自からのEITO出向。
越後網子二曹・・・陸自からのEITO出向。
小坂雅巡査・・・元高速エリア署勤務。警視庁から出向。
下條梅子巡査・・・元高島署勤務。警視庁から出向。
高木貢一曹・・・陸自からのEITO出向。剣道が得意。
筒井隆昭・・・伝子の大学時代の同級生。警視庁からEITO出向の警部。伝子の同級生。
青山たかし元警部補・・・以前は丸髷署生活安全課勤務だったが、退職。EITOに再就職した。
河野事務官・・・警視庁からのEITO出向。
財前直巳一曹・・・財前一郎の姪。空自からのEITO出向。
仁礼らいむ一曹・・・仁礼海将の大姪。海自からのEITO出向。
橋爪警部補・・・丸髷署生活安全課刑事。愛宕の相棒。
久保田嘉三管理官・・・EITO前司令官。斉藤理事官の命で、伝子達をEITOにスカウトした。
中津健二・・・中津興信所所長。
中津(西園寺)公子・・・中津興信所所員の1人だが、中津健二と結婚している。
中津敬一警部・・・中津健二の兄。捜査一課、捜査二課、公安課、EITOとの協同捜査等を経て、副総監付きの特命刑事となる。警視庁テロ対策室所属。村越警視正の部下。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
根津あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。
藤井泰子・・・伝子のマンションの区切り隣の住人。モールで料理教室をしている。
大文字綾子・・・伝子の母。介護士。高遠を婿殿と呼ぶ。伝子に「クソババア」と呼ばれることがある。
池上葉子・・・池上病院院長。高遠の中学卓球部後輩彰の母。彰は故人。
真中瞳看護師長・・・池上病院看護師長。
山城順・・・伝子の中学の後輩。愛宕と同窓生。今は、非常勤の海自事務官。
山城(南原)蘭・・・山城の妻。南原の妹。
物部一朗太・・・伝子の大学の翻訳部の副部長。故人となった蘇我義経の親友。
渡伸也一曹・・・EITOの自衛官チーム。GPSほか自衛隊のシステム担当。
大蔵太蔵(おおくらたいぞう)・・・EITOシステム管理部長。
本郷隼人二尉・・・海自からEITO出向のシステムエンジニア。本郷弥生2等陸佐の弟。
枝山浩一事務官・・・EITOのプロファイリング担当。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
午後2時半。池上病院。伝子の病室。
高遠は、床頭台のPCを出して、EITO本部と話していた。
「今、Zedの画像を確認したところです。伝子に替わります。」と言って、高遠は画面を伝子に向けた。
「理事官。今日、大蔵さんは、秘密基地の方ですか?」
「いや、本部の研究室に本郷君といるよ。」と理事官が答えると、「その研究室にも繋がりますか?」と伝子は尋ねた。
「勿論だ。渡、マルチに出してくれ。」「了解しました。」
画面の隅に、大蔵が映った。
「とうとう、池上病院にも支部が出来たんですね。嬉しいなあ。」「えっと、大蔵さん、気になるので調べて貰えませんか?前に、オクトパスが犬笛モードの音声、仕込んでいたでしょう?」「ああ。あ、そうか。あのZedの画像、変に間がありましたね。」
「福本家のサチコやジュンコに確認してからだと遠回りだから、あの時の解析システムで調べて、もし仕込まれていたら、再現して貰えないですか?」
「今、やってます。」と横から本郷隼人が応えた。「15分、いや、20分下さい。一旦切りますよ。」隅の研究室の映像だけが消えた。
「大文字君。オクトパスのように、何か『ヒント』をサンドシンドロームは仕込んだと言うのかね?」
理事官の質問に「イエスです。あ・・・はい。」と伝子は応えた。
「ヒントって、詰まり、3党首の行方もしくは身代金のことが含まれている内容かな?」と夏目警視正が言った。
「その通りです。」「分かった。本郷君から連絡して来たら、こちらから呼び出す。」
そう理事官が言うと、PCの画面は消えた。
「ただの誘拐とは思えないな。」と、入って来た中津警部が言った。
「私は、サンドシンドロームの琴線に触れたのなら、作戦変更したのではないか、と思いますね。枝山事務官の言う、つけいるチャンスがあるかどうかは分かりませんが。」
「仮にも、組織の『枝』だからね。とことん困った場合は、山下に知恵を借りると言っておられますよ。勿論、司法取引で減刑とかが交換条件になりますが。」
「とにかく、やれる所までやるしかないですね。正式な初戦だし。」
「そうですね。コスプレイヤーの事件が繋がって来るとは、想定外でしたね。『妹分』というのは、『枝』ですかね。大文字シスターズより絆が深いのかな?」
「中津さん、笑えない。」「失礼しました。」
2人が会話をしている内に、画面に、EITO研究室が映った。
「再生しますよ。」と本郷が言った。
《
心がおんなだろうが、おとこだろうが、イチモツがあれば男だろうが。
》
「成程。なぎさ。」「はい、おねえさま。」画面になぎさが映った。」
「SATの隊長に連絡して、議員会館のトイレを調べて貰ってくれ。徹底的にな。」
「議員会館のトイレ?」「以前、最初のLGBT法案が出来た、きっかけになった経産省の職員。心が女の男性職員。彼専用のトイレになっちゃったでしょ。彼が辞職した後も、女性職員が気味悪がって使用していない、って先月話題になっていたよ。まあ、ひかる君情報だけどね。」と高遠が言い添えた。
「了解しました。」画面が消えると、中津警部は、「一旦、警視庁に戻ります。それにしても、以心伝心ですか。羨ましい。ウチなんか、胡椒一つ取ってくれやしない。」と言いながら、出て行った。
「冷めたんだな、愛情が。うちは冷めないよな。」「うん、永遠に。」
「熱いわね。残暑が長いからかしら。」と言いながら、藤井が入って来た。
「明後日、退院ですって?また台所から飛び出すの?」「当面は自粛・・・って訳にもいかないかな。なるべく自宅療養するけど。」「なぎさちゃんが頑張っているからね、心配ないよ。」と、2人に割り込んで高遠が言った。
しばらく、おしゃべりをして、藤井は帰って行った。モールの料理教室があるからである。今は、伝子を気遣って、料理教室は週一回にセーブしている。藤井は、もう身内同然だからである。
午後4時半。
伝子のスマホが鳴動した。「おねえさま。SATが調査したところ、トイレのくず入れに紙片がありました。読みます。『第一関門突破。おめでとう。ご褒美に第二のヒントをやろう。3党首の、おめでたいことを探してみろ。』」
「おめでたいこと?漠然としているな。3人共通のことなのか、3人の内の1人に関わる何か、なのか?」
「今、各党に調べて貰っています。」「そうだ。中津興信所にも、調べて貰え。例えば、3人の内の1人の学校のイベントだったりしたら、党では分からない可能性がある。」
「了解しました。」スマホの通信が切れると、高遠は言った。
「今の例みたいな場合は、早急に警備をつけないと、危ないね。僕は、3党首は絶対殺されない、と思う。3党とも、親那珂派だからね。言わば、例えが適切じゃないかもだけど、『疑似餌』だよ。」
擬似餌(ぎじえ)とは、魚を釣る際に、本来魚が食べない物を餌として用いるもののことである。
「サンドシンドロームは『釣り』しているのか?何を釣るんだ?」
高遠は、妻の問いに平然と答えた。「大文字伝子。」「聞かなければ良かった。」
「大きな魚ね。」と言いながら、綾子が入って来た。
「どっから沸いてきたんだ?」「虫じゃないのよ、あなたの母親は。今日は時間が空いたから、早めに来たのよ、婿殿。」
「ありがとうございます。ちょっと休憩してきます。」
高遠がロビーを通過すると、物部がいた。
2人は、食堂権喫茶室で雑談をした。「そうか、引っ越しは手伝わなくていいか。でも・・・その日が『たたかいの日』の場合もあるな。その時は、声をかけろよ。」
真中看護師長が、高遠を探しに来た。
「奥様が及びです。」真中看護師長が去った後、「何か進展があったのかも知れません、副部長。」と高遠は物部に言うと、「俺も行く。」と、物部も席を立った。
伝子の病室。
伝子は、床頭台のPCの前に椅子を置き、操作していた。
画面には、中津健二が映っている。「ああ、お久しぶり、物部さん。サンドシンドロームが伏せて残したメッセージはやはり『誕生祝い』のことでした。違憲異種党の代表小泉健太郎の家族には、誕生祝いや結婚祝いに相当する人物はいなかったのですが、家政婦の娘が誕生日でした。この娘桜井昭子は高校生で、花が好きで、よく下校時に花をウインドウショッピングしていたようです。」
「ウインドウショッピング。中津さん、それ死語ですよ。要するに、見るだけで買わないってことでしょ。」「そうですか。その通りです。で、今日に限って店員が出てきて、花束を差し出したそうです。メッセージカードを添えて。ある人から渡してくれ、誕生日のサプライズプレゼントだからと頼まれた、と店員が言うんです。」
横から、根津所員が顔を出した。「ひょっとしたら、と思って先日撮影したから取り出した写真を店員に見せたら、この人だ、って言うんです。詰まり、花屋に頼んだのはサンドシンドロームの『妹分』です。」
「中津さん。そのグリカ、グリーティングカードを調べましたか?」「ええ、鑑識に廻すまでもなく、『あぶりだし』でした。柑橘類の匂いがしたし。」
「あぶり出し・・・懐かしいな。ミカンやレモンの絞り汁で書くんですよね。」と、物部が言った。
「そうです。家政婦さんの家で、不審な花束が届いたといいうのでお邪魔したんdぇす。それで、コンロを借りて、あぶり出したのが、このメモ。」と、中津は画面にカードを差し出した。そのメモには、こうあった。
【東京の4つの出口】
「東京の4つの出口?一杯あるじゃないか。」「落ち着けよ、物部。東京都から郊外へ出る道路のことじゃないだろう、多分。」と伝子は言った。
「東京駅、東京国際空港、新東京国際空港、東京タワー、東京スカイツリー・・・あ、4つじゃないな。」と高遠が言うと、「落ち着け、高遠。空港は千葉県だ。東京ディズニーリゾートもな。」と物部が言った。
「取り敢えず、東京駅、東京タワー、東京スカイツリーには、機動隊とSATを向かわせたよ。問題は4つ目だが・・・。」と久保田管理官は唸った。
「僕なら、東京ドームを狙うな。」と、山城が入って来た。
「先輩が言う通り、地理的な移動通路でないとしたら、色んな考え方が出来る。先輩。『出口』って引っかけじゃないですかね。」
「山城。私はいい後輩を持った。こっち来い。撫ぜてやる。」「撫ぜるなら、蘭のお腹に願います。妊娠しました。流産した先輩に報告するのは、ひょっとしたら、失礼かも知れないけど・・・。」
蘭は、伝子の側に来た。「先輩に撫ぜて貰えば、きっと賢い子になるわ。スポーツ万能も期待大ね。」「贅沢な奴だ。」伝子は蘭のお腹を撫ぜた。
その時、ディスプレイに理事官が出た。「久保田管理官。そちらにも連絡が来たと思うが、東京駅、東京タワー、東京スカイツリーにそれぞれ死体が出た。いや、発見された。一佐達に、東京ドームに向かわせた。3党首はいないかも知れないが、何か企んでいる。」
午後6時。東京ドーム。
ピッチャーマウンド。コンテナが置かれ、3人の男が中に横たわっている。
コンテナの横から、剣が刺さっている。到着した、なぎさ達は息を呑んだ。
コンテナの横にいるのは、根津所員が見つけ出した、女だった。EITOでも写真はもう確認済みだった。
「遅かったな、EITO。お前らがグズグズするから、野党党首達は、このザマだ。親那珂派だから、殺さないと思ったか?見せしめのオモチャには丁度良かったよ。」
「名前くらいは聞いておこうか。名無しの女じゃさまにならんだろう。」
「織り姫、でいいかな?」「織り姫?来年のランデブーまでは随分と時間があるが。」
「お前は?人にきくだけ、か。」「エマージェンシーガールズ2号。『力ずくの2号』だ。」
織り姫は、指を鳴らした。
ドームの色んな『入り口』から2000人の那珂国人の兵隊が現れた。
ドームの屋根が開いた。なぎさはインカムに向かって叫んだ。「散開!!」
集まっていたエマージェンシーガールズは、シュータなどを投げながら、入り口の方に向かった。シュータとは、うろこ形の手裏剣で、先端に痺れ薬が塗ってある。
屋根が開くと同時に、MAITOのオスプレイが降りて来た。那珂国の兵隊達は、防水らしき服を纏っていたが、役に立たなかった。オスプレイが落したのは消火弾ではなく『グミ水弾』だったからだ。
銃や機関銃は粘着液で汚れ、自らもネバネバに喘ぐようでは、戦闘にはならない。
なぎさは、長波ホイッスルを吹いた。長波ホイッスルとは、犬笛の様な特殊音波で、待機している警官隊に合図を送ることが多い。EITOには逮捕はできても、それ以上のことは出来ない。だから、逮捕連行は警察の仕事だ。
愛宕が、ジープや護送バスの警官隊を引き連れ、入場した。
「なかなかの別嬪ではニャアかね。勿体ない話でかんわ。」と、ボスの織り姫を逮捕しながら、橋爪警部補は言った。
「人でなし!」と言いながら、あかりが織り姫を叩こうとした。
「止めろ、5号!!手が・・・けがれる。」と、なぎさは叫んだ。
警官隊が引き上げるのを見て、あつこが皆に叫んだ。「撤収!!」
午後7時。池上病院。伝子の病室。
あかりが、伝子に土下座をしていた。高遠はじっと見ている。
池上院長が綾子と共に入って来た。
「やっぱり、何か宗教の儀式?」と院長が言うと、綾子が高遠に「宗教法人って、儲かるの?婿殿。」と言った。
高遠は、黙っていた。そして、自分に言い聞かせていた。「きっと、夢だ。」と。
―完―
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