2 雅なる慈愛の影法師

薄明の空に溶ける鐘の音が

霧の向こうに浮かび上がる

見えぬ影、音なき足音

それは慈愛の影法師、

雅なる微笑みを隠し持つもの


流れゆく風の囁きに

言葉なき言葉が紡がれ

静寂の中に響く

目には見えぬ、

感じることもできぬが

その影は確かに存在し


影法師の掌から落ちる

露の滴、光の欠片

やがて深い森の奥へと吸い込まれ

永遠の眠りにつく


流転する月影が

空を滑るように進み

その跡には何も残らず

ただ、影法師の気配だけが漂い


仄かな香りが漂う

無言の彼方より

その香りに導かれ

夢の中へと誘われる


しかし、夢の中でさえ

その姿は捉えられぬ

ただ、残された感触だけが

心の底に沈み込む


影法師は微笑む

慈愛をその内に秘めた

雅なる存在

彼の姿を見た者は

皆、やがて忘れるだろう

それが夢であったのか

現実であったのか

その違いすらも


この世に影を落とし続ける

影法師の行く末を知る者は

誰一人としていない


ただ、薄明の鐘の音が再び

霧の中から響くとき

彼の存在を思い出す

雅なる慈愛の影法師

その名は

風の囁きに乗って

どこか遠くへと消え去り

再び現れることもないだろう

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