第78話 マルコス平野の戦い④
俺達は敵の背を攻撃しつつ、味方の間を駆け抜けていく。
そうして、味方の陣を抜けた後、俺は視線を左側……敵歩兵がすぐ側まで来ていることに目がいった。
「全軍追撃中止! 即座に戻る!」
「は!」
俺は敵の追撃をやめ、シュウの元に戻る。
時間は刻一刻を争う。
最善手を打てなければ即座に詰む。
「シュウ!」
「ユマ様! これはまずいです!」
「わかっている!」
今現在の状況は、敵は5000の兵を2500ずつに分け、落とし穴の左右から進軍していた。
このまま待っていると、落とし穴を迂回するようにして、敵に挟まれる。
では後ろに逃げたらいいのではないか、と思うかもしれないが、それもできない。
敵の騎馬がフタをするように再度攻撃してくるだろう。
もうちょっと説明すると、中央に俺達グレイル軍。正面には自分達で仕掛けた落とし穴。
左右からは敵歩兵が挟んできて、後ろを騎士団がフタをする。
自分達で作った落とし穴を利用された包囲殲滅だ。
今のところ落とし穴は動かず確定。
左右の軍はもう目と鼻の先。
後はカゴリア騎士団が後ろを突けばそうなってしまうといった状況。
「シュウ! 後方の部隊に2000で敵左翼を抑えるように伝令を出せ!」
「わかりました! 残りは!?」
「残りはすべて敵右翼に向かって突撃する!」
「敵騎馬はどうするのですか!?」
「俺達騎馬が敵歩兵を抜く! そのままこちらに向かってくる敵の横っ腹斬り裂く!」
「そんな無茶な!」
「無茶でもやるしかない! すぐにとりかかれ!」
「はい!」
これは俺達グレイルの騎馬は500しかいない。
でも、500だからこそ、奴らよりも早く行動に移せるというメリットもある。
俺達騎馬が敵歩兵陣を突破し、味方の歩兵が敵歩兵に突っ込み、乱戦になれば敵騎馬も突撃はできない。
さらに、敵騎士団の移動中に、俺達が側面をつければ、それだけで敵の足は鈍るはずだ。
「突っ込むぞ! 俺の背を信じろ!」
俺はそう言って、騎馬を率いて敵陣に突撃する。
ズバァァァアア!!!
俺はハルバードに斬魔法を付与して、敵陣に斬り込みを入れる。
「とにかく抜くことだけを意識しろ!」
「は!」
敵騎馬は3000……それだけの数がいると、迂回してこちらに向かってくるのも時間がかかる。
だが、それが終わってこちらに届いてしまえば、こちらの負けは決まってしまう。
そうなる前に、500で敵を止めねばならない。
「はぁあああ!!!」
「ユマ様に続け! ユマ様がいれば我々が勝つ!」
「そうだ! ユマ様に後れを取るな!」
兵士達の士気も高いのは本当に助かる。
俺達が敵陣を抜けるころには、敵の陣形はかなりボロボロになっていた。
ただ、当然こちらも無事なんてことはなく、かなりの数が減らされていた。
後ろの方ではシュウが指揮しているからか、俺達が斬り裂いた敵の穴を広げるようにして突撃していて、俺の意図通りに攻め立ててくれる。
このまま乱戦になれば、敵騎馬が突撃することはできなくなるだろう。
俺は俺で、これから突撃する相手の方に馬を向ける。
「よくやった戦友達よ! このまま敵騎馬の側面をつく!」
「おお!」
俺達は簡単に敵陣を斬り裂き、その後背に出た。
思いのほか簡単だったけれど、問題はここから。
最強と名高いカゴリア騎士団にさらに突撃をするのだ。
こちらの被害がどうなるか考えたくもない。
味方がどれだけ死んでしまうのか。
だが、やらねば全員が死ぬ。
そんなことは決して受け入れられないので、やるしかない。
俺達が突撃すれば勝てる。
そう確信したところで、想定外のことが起きた。
「よぉし! このまま敵陣に……なに?」
俺は味方を
「なぜだ……?」
俺が首を傾げ、どうしようか悩んでいると、俺達の後ろの山で、大きな音が聞こえてきた。
ドドドドドドドドドドド!!!
「後ろ!? 背後を取られたのか!?」
慌てて後ろを見るけれど、そこに掲げられている旗は見覚えがあるものだった。
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