最終話:絶望の結末version

カズオは、息子との戦いの中で、次第に力尽きていく自分を感じていた。異世界で得た力を駆使して戦ってきたが、息子は容赦なく駆除の手を緩めることはなかった。息子はまだ父親が目の前の糞転がしだとは知らない。彼の目には、ただの害虫にしか映っていないのだ。


「これで終わりだ…!」


息子は鋭い動きでカズオを捕らえた。彼の駆除器具が、ついにカズオの小さな体をがっちりと掴んだ。カズオは必死にもがいたが、異世界での力も、今やほとんど残っていなかった。


「逃げられないぞ!」


息子の声が響く中、カズオは自分が完全に捕らえられていることを悟った。彼はかつての人間の姿を思い出し、そして愛する息子の顔を最後にもう一度見つめたかったが、それは叶わない。今の彼は、ただの糞転がしであり、息子にとっては駆除すべき害虫に過ぎなかった。


「すまない…息子よ…」


カズオは心の中でそう呟きながら、自らの運命を受け入れた。息子はカズオを駆除器具に収めると、そのまま家の中へと運び入れた。


「こんなところで捕まるとは…」


カズオは息子の行動をただ黙って見守るしかなかった。息子は迷うことなく、カズオをトイレに持って行き、容赦なくその蓋を開けた。


「これで終わりだ。」


息子はカズオをトイレに投げ入れた。水がカズオの体を包み込み、冷たさが一気に彼の体を襲った。カズオは必死に逃れようとしたが、息子の手によってすでに水を流すレバーが引かれ、強力な水流が彼を呑み込んでいった。


「ぐっ…」


カズオは水流に巻き込まれ、体がぐるぐると回りながら排水管へと吸い込まれていった。その力は凄まじく、彼は抵抗することすらできなかった。息子の姿が、遠ざかっていく視界の中で、次第に薄れていく。


「俺は…ここで終わるのか…」


カズオはその瞬間、自らの死を受け入れた。かつての人間としての人生、そして糞転がしとしての異世界での冒険。すべてが一つの物語の終わりに向かって収束していくのを感じた。


「息子よ…すまなかった…」


カズオは最後の言葉を心の中で呟き、ついに排水管の奥深くへと吸い込まれていった。彼の体は、冷たい暗闇の中で完全に力を失い、その命はそこで終わりを迎えた。


息子はトイレの水が流れた音を聞きながら、駆除が無事に完了したことを確認した。彼はいつも通りの任務を終えたことに満足感を覚えながら、家を後にした。しかし、その背中にはどこか重たいものが残り、彼自身も気づかぬまま、父親の存在を心の奥底で感じ取っていた。


こうして、カズオの異世界での冒険と現実での苦闘は終わりを迎えた。彼は最後まで息子を守ろうとしたが、運命のいたずらにより、最も悲劇的な形でその命を終えることになったのだった。

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