最終話:親子の再会
カズオが現代の地球で新たな使命を果たし続ける中、ある日、彼はかつての家族のことを思い出していた。特に、息子のことが頭から離れなかった。息子はまだ小さかったが、しっかりとした夢を持っていた。それは、害虫駆除の仕事で人々の生活を守ることだった。カズオは、自分の無力さが原因で家族を捨てざるを得なかった過去を悔やんでいた。
ある日、カズオは大きな都市のビルの隙間に身を潜めていた。その日も彼は、都市のゴミや汚染を少しでも浄化しようと黙々と糞を転がしていた。しかし、突然、背後から強い光が照らされ、鋭い音が響いた。
「そこにいる害虫、もう逃げられないぞ!」
その声にカズオは驚き、振り返るとそこには見覚えのある青年が立っていた。青年はプロフェッショナルな姿勢で、手には最新の駆除機器を握りしめていた。カズオの心は瞬時に凍りついた。
「息子…なのか…?」
青年はカズオの声を聞くことはできなかった。彼は目の前の小さな虫が、かつての父親であるとは知る由もなかった。青年は確実な動作でカズオを狙い、駆除剤を撒き散らした。
カズオはその強烈な薬剤にさらされ、体が重くなり始めた。彼は必死に動こうとしたが、その力は徐々に奪われていく。しかし、その瞬間、カズオは息子の顔に何かを感じ取った。そこには、かつての彼が持っていた決意と同じものがあった。
「そうか…お前は、俺のようにならなかったんだな…」
カズオの目には涙が浮かんだ。息子は、父親を超えて立派に成長し、今や多くの人々を守る仕事をしている。それを誇らしく思いながらも、カズオは自分が息子の手で駆除される運命を受け入れた。
「これが…俺の最後の…役割か…」
カズオは微笑みながら、ゆっくりと目を閉じた。薬剤が彼の小さな体を包み込み、最後の瞬間が近づいていた。彼はもう逃げなかった。これは、彼が家族に与えることができる最後の贖罪だと感じていた。
「息子よ…俺は、お前の成長を誇りに思う…」
その言葉がカズオの心の中で響いた。彼は静かに、そして安らかに息を引き取った。目の前には、かつて彼が守ろうとして失敗した家族が、今や自分の手で新たな未来を切り開いていることが見えていた。
青年はカズオが息を引き取ったことを確認し、深呼吸をした。彼は、自分が今でも尊敬する父親のことを思い出していた。父親がいなくなった後も、彼はその背中を追い続け、そして今日もまた、多くの命を守るために戦っているのだ。
「任務完了だ…」
青年はそう呟きながら、立ち去っていった。彼の後ろには、カズオの小さな亡骸が静かに残されていた。しかし、その姿はどこか安らかで、まるで彼が成し遂げた使命に満足しているかのようだった。
カズオの物語は、ここで幕を閉じた。しかし、その魂は永遠に息子の中で生き続け、次の世代へと引き継がれていく。現代の地球で、糞転がしとしての彼の最後の行いは、この世界を少しだけ綺麗にし、息子の未来を照らしたのだった。
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