ご近所さんのぐうたらJKと過ごす、インドアな休日

仲野ゆらぎ

第1話 ぐうたらJK、おはよう

 ピンポーン。ピンポーン……。


しん「はあ。やっぱり出ないな」




 俺はます信治。大学1年生。

 父さんと母さんはもうすぐ結婚記念日だとかで、

 ひとり息子を放ったらかし、熱海旅行へ朝早くに出かけていった。

 明日の夕方までは帰ってこない。


 まあ、大学も夏休みに入ったし、親がいないってだけなら俺も

 家で羽を伸ばせてよかったんだが……。




 ピンポーン。ピンポンピンポンピンポーン……――

 ゴンッ!(窓ガラスが蹴られる音)


信治「ん? なんだ今の音?」


 ピンポーン……ピンポー……ゴンッ。


信治「おい、里子りこ! いるんだろ? さっさと出てこい!」


 ピンポーン……ピンポー……ゴンッ。


信治「この音、近いぞ? あいつ、ふざけてるのか?

  ……ったく、なんで俺がこんなこと……」


 ガチャガチャ……ギィ。(玄関のドアが開く)


信治「え、開いた? まさか、鍵がかかってなかったのか?

  ……まあいい。おい、里子! 入るからなー?」


 ギィ……ガチャ。(ドアを閉める)

 ドタドタドタ……(廊下を進み、リビングのドアを開ける)ガチャ。


信治「……んなっ!? なんだ、その格好!?」




里子「んこー……、んこー……、」


 ゴンッ。ゴンッ。


里子「んこー……、ゴンッ。んこー……、ゴンッ。

  (いびきに合わせてリビングの窓を蹴ったくる音)」


信治「これ、寝間着か? 真っ黄色じゃないか。

  フードに動物の耳……キツネ?」


里子「んこー……、……んー……むにゃ……」


信治「おい、起きろ里子! いま何時だと思ってるんだ?」


里子「んー……おとーさーん? もうお仕事終わったのー?」


信治「誰がおとーさんだ、誰が。お前の親父さんなら、

  今年は単身赴任でずっとアメリカだろ」


里子「んこぁー……? 信ちゃん……?(寝ぼけながらも晴れやかに)

  わー、信ちゃんだー! 久しぶりー!」


信治「久しぶりー、じゃねえよ。

  いま何時だと思ってるんだ、っつってるんだけど」


里子「んー……イマナンジ? シンジ?

  そこにいるのはシンジ、うへへ」


信治「はあ!? ったく、昼過ぎに寝ぼけやがって……つーか、

  なんでソファで寝てるんだよ? 自分の部屋があるだろ」


里子「んー……なんでだっけ? 寝てたっけ?」


信治「寝てたっけ? って……俺に聞くなよ。しかも、

  高2にもなって、まだそんなぬいぐるみ抱いて寝てやがるのか」


里子「あ……! んこぁー!(寝ぼけながらも悲哀に満ちた声で)

  取っちゃやだー……! 里子のコサックー……!」


信治「コサック? こいつの名前か? ……ったく、お前なあ。

  せっかくの夏休みに、親から近所のJKの面倒を

  押し付けられた側の身にもなってくれよ。お前のおふくろさんも、

  出張で土日はいないんだろ?

  お前が俺んちに来るって話だったじゃないか」


里子「んあー……? そうだっけ? 里子、信ちゃんと約束してたの?」


信治「俺とお前じゃなくて、俺の母さんと

  お前のおふくろさんが、だけどな。……なんだ、聞いてないのか?」


里子「知らなーい。でも、そっか。信ちゃん、里子のこと

  起こしに来てくれたんだね? んへへ、ありがとー」


信治「ありがとー、じゃないだろ。本当にずっと寝てたんだな……。

  てことは、メシもまだってことか? とにかく、なんか食べるぞ。

  勝手に冷蔵庫開けていいよな?」


里子「んー……いいけどー……んこー……」


信治「おい、こら! 二度寝するな……って……、

  なんだこれ? ほぼからっぽじゃないか。

  入ってるのは水と、調味料と……ん? この見覚えある箱は……」


里子「メロンとー、みかんとー、なんだっけ……りんごー?」


信治「お中元じゃねえか! しかも、たぶんうちが送ったやつ……」


里子「それでいいよー。信ちゃん、切ってー。

  里子のコサックも、フルーツ大好きー……んこー」


信治「だから寝るな! ……はー……なんで俺が……」

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