学園で一番美少女な副生徒会長が、俺のペットになりたいらしい⁉

譲羽唯月

第1話 あなたと付き合いたいんだけど

 綾瀬晴馬あやせ/はるまが通っている高校には美少女がいる。

 その彼女というのは副生徒会長であり、周りからも人気のある人物――飯田瑠璃いいだ/るり

 瑠璃はポニーテイル風のヘアスタイルで、厳しめな指導をする事で有名だった。

 彼女とは二年生に進級した頃から一応、同じクラスメイトなのだが、今のところ殆ど関わりはなかった。

 あったとしても、挨拶を交わすくらいである。


 そんな平行線的な学校生活を送っている中、晴馬はある日を境に視線を感じるようになった。

 部活中も下校中も、それから教室にいる時も、誰かに見られているような気がするのだ。


 その視線の正体というのは、意外にも瑠璃からだった。

 しかしながら、なぜ、彼女からチラチラと見ているのかは不明であり、それが今の晴馬にとっての疑問であった。




「それでさ、この頃、俺の事を見てくる子がいて」

「そんなことが? その子とは会話したことがあったりとかは?」

「いや、全然ないよ」

「だったら、その子は晴馬と会話したいのかも」

「さあ、どうだろうね」


 授業終わりの放課後。

 晴馬は部活棟の部室にいた。

 パイプ椅子に座りながら、瑠璃の事について、同じ部員である中戸千秋なかど/ちあきに相談していたのである。

 彼女はセミロングヘアが特徴的で部活中は動物系のカチューシャをつけているのだ。


「そんなに気になるなら。その子に話しかけてみるとかは?」


 千秋からアドバイスを受けたのだが、自分からどういう風に話しかければいいのかわからず、晴馬は頭を悩ませることになったのである。


 ちなみに今、隣の席に座っている千秋とは違うクラスだが、晴馬とは同い年。今年に転校してきた子らしく、昔から動物が好きという理由で入部してきたのだ。


 今年、誰も入部してこなかったら、実質晴馬だけしかおらず廃部になってもおかしくなかったのである。

 晴馬も動物が好きで、高校入学当初から、この部活へ入部したのだ。


 しかし、ほぼ二人しか部員がいない現在、生徒会役員からの部費も殆ど貰うことが出来ず、今年は規模を縮小して活動していた。

 動物も小動物中心で、ハムスターやウサギ、亀など。二人で扱える範囲で飼育しているのだ。




「ねえ、ちょっといいかしら?」


 部室にいると、突然扉が開いて中に入り込んでくる子がいた。

 入部希望かとも思ったのだが、その子はクラスメイトであり、生徒会役員の瑠璃だった。


「もしかして、廃部宣告とかですかね?」


 晴馬は近寄って来た瑠璃に言う。


「いいえ、そうじゃないわ。あなたは、この部活って好きなの?」

「そ、そうですけど。だから、ここに所属しているわけで」

「そう」


 彼女は部室内を見渡していた。


「廃部にならないのでしたら、部費とかもう少し増やせませんかね?」

「部費? それは難しいかもね」


 彼女からハッキリと断られたのである。


「では、今日、ここに来た理由というのは?」

「それはあなたに話があってね。ちょっとだけ話をしたいの。今後の、この部活についてね」


 瑠璃は晴馬の目をしっかりと見て言ってきたのだ。

 真剣な表情であり、今後の部活動に大きく関わってきそうな内容だと思い、緊張した表情で唾を呑むのだった。


「今後の活動する上での条件交渉よ。だから今から、二人きりで話せるかしら?」

「今からですか?」

「ええ、今しかないから」


 晴馬が悩んでいると、背後の席に座っている部員が、話してきなよ的な視線を向けてきたのだ。


「わかりました」

「では、こっちに来て」


 晴馬はパイプ椅子から立ち上がると、生徒会役員である瑠璃によって部室から連れ出される事となったのだ。




 部室の隣の空き教室に二人はいる。


「話っていうのは、廃部の件ではあるわ」

「で、ですよね」

「でも、条件させ飲み込んでくれれば、私も何とかするわ」

「え? 生徒会役員たちは、俺らの部を廃部にすることが目的なんじゃ?」

「まあ、生徒会の方針としてはそうね。けど、私も廃部にしたくないの、本当はね」

「じゃ、俺の行動によっては存続できるんですか?」

「そうなるわ」


 ギリギリ希望の光を手に入れる事が出来、安堵するのだった。


「具体的に、どんな事をすればいいんですかね?」

「それは簡単な話よ。私と付き合ってくれればいいわ」

「……付き合う?」

「ええ、そうよ。単純なことでしょ」


 予想の斜め上を行く提案に、晴馬は目を点にしていた。


「嫌なら、ここで廃部が決まるわ」

「そ、それはダメなんで」

「じゃあ、私と付き合ってくれる?」

「は、はい。それならいいですけど」


 晴馬は承諾するように頷くものの、今まで接点のなかった子から、まさかの告白をされるとは思ってもみなかった。


「でも、どうして、こんな俺と付き合おうと思ったんですかね?」

「そ、それはまあいいじゃない。それより、本当に私と付き合ってくれるのよね?」

「は、はい。それは」


 晴馬は何度も頷いた。


「それともう一つ。私、あなたの部活に所属してみたいの。いいかしら?」

「いいですけど。生徒会役員の仕事は?」

「それは生徒会長に相談して、掛け持ち出来るようにするから。私、動物が好きだから。以前から入部してみたかったの」

「そ、そうなんですね」


 瑠璃が動物好きだとは意外だった。

 もしかしたら、この頃、彼女からの視線を受けていたのは入部したかったからなのだろうか。


「じゃあ、話は終わり。戻りましょうか」


 晴馬は彼女と共に、部室に戻る。




「アレ、もう話が終わったの? 結構早かったね」


 部室に入ると、パイプ椅子に座る千秋が、部活で使う資料ファイルを眺めていたのだ。


「一応、説明しておくとね、副生徒会長も今日からこの部活に所属することになったんだよ」

「そうなの? 急すぎない? というか、今後の話って、そういう話だったの?」

「そうなんだ。あと、条件として入部させてほしいって」

「へえ、そうなんだ。じゃあ、この部活は存続できるってことね。じゃあ、良かったね」


 彼女はパイプ椅子に座ったまま、ホッと胸を宥めているのだった。

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