第34話 カップル同士の部屋割

「私の家も泊まりは禁止だったけど、裕介さん佳奈さんがちゃんと挨拶の電話してくれたから許されたんだと思う。大塚君と夕海も……一応明るくはきはきしてて親受けのいいカップルではあったし」

「あぁ……大塚だけはね。そこさえなければ本当にいい旅行だったんだけど」

「私と夕海が仲良くなるきっかけでもあるから、本当にいい旅行なんだけどね」


楽しい思い出のはずなのに、私達の表情はやや曇る。

大塚君は静の友人だ。サッカーが得意で明るい。夕海はその彼女でちょっとギャル入ってる。今は私の親友。そのときはまだ私と夕海はそれほど仲良くはなかった。彼氏の友達の彼女同士として接していたくらいだ。

この四人と保護者カップルでの一日目はとても楽しかった。各自カップルで自由行動して買い物したりバーベキューしたり。ただ、問題は一日目の夜に起きる


「確認し直すけど、あれは大塚君が100悪いんだよね?」

「うん、あいつは全員に嘘をついたから。夕海さんと一緒の部屋で過ごしたいからって僕らに嘘をついたんだ」


私が嫌悪感から勝手に罪を着せているわけではない。

この旅行は保護者がいる親公認の旅行なので、部屋は私と夕海、静と大塚君で別れていた。

しかし大塚君はそれが気に入らなくて、嘘をついた。『皆カップル同士で部屋を分けたがっている』と。


「確か私には『夕海とうまくいってないんだって? 静と一緒の部屋にした方がいいんじゃない? 夕海には明日までにちゃんと仲良くするよう言っとくから』だったかな」

「僕には『望ちゃんと夕海が気まずいみたいだし、部屋変えね?』だった」

「で、夕海から聞いたのは『静と望ちゃんが一緒の部屋になりたがってる』で、なんというか、豪快なシュート決める大塚君にしては綿密な嘘だよね」


私も姑息な嘘つきと言えなくもないけれど、大塚君ほどではない。私の嘘は人を引き裂くような事は言ってないんだから。

私はこの嘘を信じてしまって、『うまくいってたと思っていた夕海にそんなに嫌われてたとは』と落ち込んでしまったんだからタチが悪い。


親公認だからって男子高校生の性欲を甘く見ていた。そして私達も一緒の部屋で寝ても何も起きない特殊なカップルだったし、ちょっと派手目なカップルならそういうものだと思ったし。夕海もすんなり変更後の部屋割に納得する私達を見てそういうものだと思ったらしい。


「夜中夕海が泣きながら部屋のドア叩いて来たんだよね。『真っ最中だったらごめん! でもやっぱ無理!』って」

「就寝真っ最中だったねぇ」


夕海は流されかけていたけど、やっぱり大塚君に迫られて、でも無理となって部屋を飛び出て私達に助けを求めた。確かに私達は就寝真っ最中だった。


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