第6話 地雷

「……ごめん。僕も慰めで言った。他人が家族の話題に簡単に踏み込んで、血の繋がり事を指摘されたら嫌だよね」

「いや、私の方こそごめん。血の繋がりがなくてもあまりに長い付き合いだからさ、急に言われると、ショックあるってだけ」


カッとなった分冷えるのも速い。静の誠実な謝罪に逆に申し訳なく思う。

私達は血の繋がりのない家族でありながら、それを忘れている。だからそれを指摘されれば突然水をかけられるぐらいのショックがあった。頭ではわかっているし、自分から自虐的に言える事だってある。でも他人に言われるのは許せない。

その事をすぐ察して静は謝ってくれた。高校生のころからこいつはできた人物だ。


「でも望、高校生で漫画家になろうとしてなれるってだけでも本来凄いことじゃないかな。普通、小さい頃から憧れて、それでもなれない人もいるのに」

「らしいね。高校生で漫画描き始めた、なんて話をしたら色んな人にびっくりされたよ。最初ろくに道具も知らずにアナログで描いちゃったし、それで出版社に持ち込みしちゃったし」

「持ち込みっていつごろ?」

「高3。卒業までに成果出したら漫画家目指していいって話になったから」


別れた後はまったく連絡を取り合っていなかったから、静はそこを知らない。明らかに無理して優等生になろうとしていた私が漫画家を目指すと言い出して、両親はほっとしていたようだった。

私は高校を絶対卒業することを条件に漫画を描きまくった。やることは多かった。それでなんとか編集さんにこれなら連載を狙えるという言葉を頂いた。そして高校卒業後に短期連載から始めて、数年経ってアニメ化する事になった。確かになかなかない事だろう。


「……静、本当に別れてからの記憶はないんだよね?」

「うん。そう言ってる」

「事故のすぐ後の事なら覚えてる? 聞いていい?」


自分達の馴れ初めは黒歴史すぎて恥ずかしさから疲れる。だから静についてを聞きたい。ここは全体的に、まずは事故について聞いてみよう。


「親の意見も混ざってるのでよければ結構話せるよ。事故は3ヶ月前の2月ころ。僕が歩いていて、車にはねられた。多分僕の不注意」

「不注意? よく無事だったね」

「まぁ、頭以外も怪我はしてた。でももう殆ど治っているよ。一ヶ月で退院した。その時の記憶はあんまりない。2か月後くらいには意識もはっきりしていたけど、この通り高校生の記憶しかない。3ヶ月して、記憶が望と別れるまでならあると気づいた」

「だからうちに来たのか……」

「自称彼女もいっぱい出てきたし、親も参っていたから」


怒涛の3ヶ月だったわけだ。

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