第40話 どうする!? アメリア!?

・登場人物・

ヤマト……主人公。勇者で憲兵団団長。

アメリア……女魔法使い。二発かましてちょっとスッキリした。

カレンテ……駐在部隊の女性隊長。趣味は人間観察。

ンゴ……憲兵。本当はンゴニー。

ブルボン……憲兵。本当はバラボン。

サイナリア……妖精。自称二十三歳。

ボーラン……悪徳商人(確信)。準貴族。

クードク……飼育員の男性。感情が見えない。


**********



 カッコイー!


 あたしは大きくて黒い狼のような動物の前に居た。


 見た目は狼そのものだが体は一回り大きく背中には大きな羽が生えている。


 あたしがしばらくそうして狼を眺めていると。


「これはマルコシアスっていう妖獣だよ」


 ンゴがそう言いながらあたしの隣に並ぶ。


 あたしは距離を詰めてくるンゴから少し距離を取る。


「コイツはフェンリルとよく比較されるんだけど、めちゃくちゃ気性が荒いらしくて、魔族の――」


 なんか聞いてもないのに突然解説を始めた。


「ふーん」


 あたしは適当にそう言って隣の檻へと向かう。


 そこには大きなトカゲのような生き物が入っていた。


「それはサラマンダー。生物的にはトカゲだけど、よくドラゴンと混同されるんだ。こいつはまだ子どもだから――」


 あたしが移動するとンゴも横についてくる。


「キミ、アメリアだっけ? 年はいくつ?」


 何だコイツ……。


「……十七だけど」


 での身体年齢はそうだがあたしは転生者なので本当はもっとお姉さんだ。


「ふーん。オイラは十九」


 別に聞いてねー。


「あのさアメリアちゃん。なんでここに残ろうと思ったの?」


 いきなり付けかよこいつ……ヤマトと同類だな。


「は? ここの動物見たかったからだけど?」


 あたしは強めの口調でそう言って立ち上がり別の檻に向かおうとする。


「いや、それだけじゃないでしょ?」


 そいつは懲りずにあたしの後ろを付いてくる。


((ちょっとアメリア。なに話してるのか分からないけど、こいつなんかやばくない?))


 言葉が伝わらなくても分かるヤバさがここにいる。

 なんか本気で嫌だ。


「なあ悪いけど一人でゆっくり見たいんだよお前は仕事しなきゃじゃないのか?」


 キレられても面倒なのであたしは一応言葉を選んだ。


「いや、オイラは団ちょからキミを見てるよう言われたから」


 こーれは優しく言っても駄目みたいですね。

 なんであたしの周りの男共はこんなに言葉が通じないんだ?


「別に遠くからでも見れるだろあたしは一人が好きなんだ」


「でも、背中のそれはいいのか」


 ンゴはサイナリアを指差す。

 一瞬言っている意味が分からなかったがサイナリアがいるとひとりじゃないだろという屁理屈のようだ。


 めんどくせー!

 ああ言えばこう言う!


「いいから仕事しろよ! 後で隊長に言いつけるぞ?」


 あたしはンゴを指差して先ほどより更に強めに言う。


「あん? 何だお前。勇者ヤマトと居るからっていい気になんじゃねえぞ?」


 うわ何だコイツ突然切れるじゃん。


 ンゴはそう言ってあたしの腕を掴もうとするのであたしは反射的にそれを回避する。


「触んなハゲ!!」


 あたしがついに暴言を吐くと、


「あんだとこのアマぁ!!」


 ガシャン!!


 隣の檻から大きな音がした。


 ビックリしてその檻の方を見ると、大きな白い狼がこちらを睨みつけている。


「チッ!」


 驚いたことで興が覚めたのかンゴは大きな舌打ちをしてあたしの元を離れる。


((いのちびろいしたわね! もうちょっとであたしの大魔法がさくれつしていたところよ!))


 あたしは先ほどの音の主の所に進む。


 そこにはあたしの身長の二倍はあるのではないかという狼が大きな檻の中で座っていた。


「ヤマトがたしか”フェンリル”とか言ってたっけ」


 どれだけここに入れられていたのか分からないが見るからに窮屈そうで白い毛並みは少しくすんでいるようにも見える。


 もしかしてあたしを助けてくれたのか?


((かわいそう))


 出してあげたい。


 心が揺れるがさすがの私でもこれを外に出すのはまずいことくらいは分かる。


 あたしはそこから目線を逸らすとあえてそちらを見ないように奥へと進む。


 そしてふと奥の方に極端に小さな檻があることに気づく。


 あたしは吸い込まれるようにそこに近づくとその中のと目が合った。


 チャララララ~ン チャラ~ン チャラ~ン


 目と目が合った瞬間にそんなBGMが脳内に流れた。


 そこに居たのは赤い目をした小さな白ウサギだった。


 きゃわわわわ~~~!!


 あたしは思わずその檻に駆け寄るとその中を覗き込む。


 ウサギは一瞬ビックリしたような様子で後ずさったがその後はあたしの事を赤い目でじっと見つめていた。


((なんでこんなところにウサギさんがいるのかしら?))


 サイナリアのそれにあたしも同感だった。


((もしかしたら他の希少動物に紛れてたんじゃないのか?))


 あたしはそっと手を伸ばしウサギの鼻先に指を持って行こうとする。


 バチッ


「うっ!」


 檻に触れそうになった瞬間電撃のようなものが指先に走った。


((まあ! こんなかわいいウサギさんにまで封印をするなんて!))


 あたしは今度は結界に触れないギリギリまで指を出してみるとウサギはそれを嗅ごうとその指に寄って来る。


 クンクンしている。


 KAWAII……。


((ねえアメリア、このウサギさん出してあげない?))


 サイナリアがあたしに提案する。


((でもあたし解除魔法苦手なんだよ))


 あたしがそう言うと、


((だいじょうぶ! あたしこう見えてもまほうがとくいなの! かいじょまほうなんて、はちみつをを水にとかすくらいたやすいわ!))


((でも逃げちゃったら流石に怒られるんじゃ))


 一応ヤマトには何も触れるなと言われている。


((だいじょうぶよ! ここはちかしつだし、まわりはけっかいで守られてるから!))


 彼女はそう言うが……。





 どうする~!?


 ア・メ・リ・ア~!?

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