第7話 信じちゃう私

私は占いが好きだ。

優柔不断な私の道しるべになってくれる。

占いには「星占い」「四柱推命」「手相」「タロット」「水晶占い」「姓名判断」色々あるが、私が今ハマっているのはタロット占いだ。今日も放課後久美と占いの館へ遊びに行く。"占いの館"といっても雑居ビルの二階に入っている個室のブースだ。


慣れた様子の久美に連れられて、雑居ビルの階段を上ると占い師に手招きされ、入室した。沙夜がここに来るのは二回目だ。

占い師は艶やかで上品な顔出ちをしている。

(卑弥呼が存在していたらこんな顔なんだろうな。)


「こんにちは。今日はどんなことを占おっか?」

占い師が高そうな指輪を弄りながら質問する。

「うーん。どうしよ。」

優柔不断な沙夜が悩んでいると、久美が横槍を入れてきた。

「やっぱ恋愛でしょ!」

「じゃあ、それで!」

(たしかに失恋したばかりだし、ちょうど良いか...。)

「オーケー。じゃあ始めるね。」

占い師が、タロットカードを広げて徐に混ぜる。その後、広げたカードを集め山札にしてカットしていく。そして、1枚ずつ表にして置いていく。

「あー、良い話と悪い話あるけど、どっち先にする?」

占い師が眉を顰め、沙夜に訊ねる。

ネガティブ思考な沙夜は、こういう時必ず悪い方が気になる。

「悪いほうで!」

沙夜からの注文を受けると占い師が続ける。

「高校生活中は彼氏諦めた方が良いかもね。」

話の内容とは裏腹にポップな言い方をした占い師は、矢継ぎ早に話す。

「でも大学で良い人できるよ!これが良い話!」

沙夜が話の内容を頭で整理しきる前に、隣にいた久美が喜ぶ。

「沙夜良かったじゃん!」

自分より嬉しそうな久美に苦笑しながら、沙夜も安堵する。

「じゃあ、次は久美ちゃんの番だけど、隣のブースに行ってくれる?」

占い師が提案する。

「えー。なんで沙夜と一緒じゃないの。」

ブツブツと不満を言いながら、久美が隣のブースへ移動する。久美だけ隣に移ったことを、沙夜も不思議に思った。

久美が居なくなったことを確認した占い師は、沙夜に顔を近づけ、小声で話す。

「私、人相学もやってるんだけど大丈夫?」

「大丈夫って何がですか?」

心当たりのない沙夜は、首を傾げる。

「詳しくは言わないけど、頼ってる物あるよね?」

(えっ、まさか分かるわけないよね...。)

薬のことが頭に浮かんだ沙夜は、動揺を隠せない。占い師は続ける。

「それ辞めないと、20代で命に関わるかも。」

「えっ...。何か対処法は無いんですか?」

必死な沙夜の表情を見て、占い師は手を握り、優しい笑顔で返す。

「何かあったらまた来て。私がついてるから。」

占い師の包み込むような手の温もりを感じた沙夜は、涙を浮かべた。

「ありがとうございます。」


久美と合流した沙夜は、雑居ビルを出た後も、占い師に言われた言葉が、一日中頭の中で反芻していた。

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