第53話 惨殺

「よせ! 無茶だ!!」


 ダメだ。怒りで俺の言葉が届いていない!


「……ちいいいいいぃぃ!!!」


 俺は3人を止めるため、飯塚に向かって走り出す。

 だけど到底……飯塚と接触するまでに止めることはできない。


「あぁ~ん? さっき狩りごっこした時に取り逃した連中か。女以外は喰っちまうか~」


 飯塚は右拳を肥大化させ、振り下ろす。その餌食になったのは大剣使いの女性だった。


「イヴィナ!!!?」

「あ、間違えて殺しちまった。まぁいいか」


 肉片が、真っ白な雪の上に散らばる。


「てんめぇ!!!」


 ブーメランのオーパーツを持った男が飯塚に向けてブーメランを投げる。しかし、


「おっせぇな」


 飯塚はブーメランを蚊の如くはたき落とし、顔を肥大化させ――


「うわあああああああああっっっ!!?」


 ブーメランの男の腰から上を喰いちぎった。ブーメランのオーパーツは主人が死んだことで消滅転移した。


 だ、ダメだ……まるで飯塚の動きを見えていない!!!


「あ、あああ……!?」


 戦意喪失し、逃亡する最後の1人。飯塚はニタリと笑い、右腕を伸ばす。


「そこまでだ!」


 俺は両者の間に割り込み、飯塚の手を義手で弾く。


「あ~あ、一手見逃したねぇ、葉村くん」

「なに?」


 そこで俺は気づく。飯塚の左手が地面に突き刺さっていることに。


「しまった!!」


 背後を振り返ると、杖の男は地面から突き出た飯塚の左手に握りつぶされていた。あの野郎……腕を伸ばして、地面の下に腕を通して、下から捕まえやがった!!


「だっはははぁ!! コイツ等3人共、前の俺よりは強かったんだぜぇ! なのにコレよ! 瞬殺よぉ!! さいっこうだぜぇ!!!!!」

「……何がしたいんだよお前」

「あぁ?」

「お前が報復したいのは、ぶっ殺したいのは俺達だけじゃないのか? なんで無関係なアイツらまで殺した!!」

「報復? ああ、すっかり忘れてた。もうどうでもいい。今はただ……人間を玩具にもっと遊びたいねぇ! まずはこの迷宮都市を俺だけの奴隷帝国にする! 俺だけの玩具箱にしてやるよぉ!!」

「クズが……堕ちるとこまで堕ちたな……!」


 体とオーパーツを自在に変化させ、飯塚は攻撃してくる。


「くっ!?」


 【幻影自在陣】を使う隙が無い。

 奴に効くアイテムもない。逃げるのも不可能。

 あらゆる手段を頭に浮かべるが――突破口が何1つない!!


「つーかさぁ、俺に構ってばかりでいいのか? あっち、やばいんじゃねぇの?」


 飯塚の指さす方を見る。


「きさ、らぎ……?」


 如月が、人狼――ワーウルフの大群に襲われていた。


「ここにいるのは俺だけじゃねぇ。魔物だっているんだぜ?」

「くそ!!」


 如月の方に向かって走り出した瞬間、


――ゴオォン!!!


「……あれ?」


 気づいたら宙に浮いていた。

 飯塚に殴り飛ばされたのだと、気づくのに数秒かかった。


「はい、おしまい」


 遅れて全身に激痛が走る。

 義手が、オリジンが、今の攻撃でひしゃげた。

 どんな攻撃にも耐えたオリジンが――


「負け、たのか……」


 意識が、暗く沈んでいく。



 ――――――――――

【あとがき】

『面白い!』

『続きが気になる!』

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何卒、拙い作家ですがよろしくお願いします!

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