幕間 ビルタの暗躍

 時点をソーニャが連れ去られた直後に遡らせる。

 

 昏倒するソーニャを鉤爪を使って運ぶビルタは、コルキオン王国の遥か上空を飛翔していた。


(一刻も早くこの娘をアルジオーゾ様のもとへとお連れしたいのは山々だが、表部隊の合流ももう間も無く。そっちを先に片付けなければなりませんね……。全く、休む暇もありはしない)

 

 ビルタは地上に着地し、閉店したテラスの席にソーニャを座らせる。

 再び上昇すると、城壁の上にある回廊の端に音もなく降り立った。回廊に見張りは三人いるが、城壁の外を向いていてこちらには気づいていない。

 まず一番手前の見張りに走り寄って肉薄し、鉤爪で喉元を切り裂く。声を出すことなく倒れ込み、絶命した。

 次に羽毛の中から杖を取り出し、詠唱を始める。


「風の精霊シルフよ、其の身に纏いし無数の風を重ね束ね石巌と成せ——エアブラスト!」


 見張りは圧縮された空気の塊によって浮き上がりながら吹き飛ぶと、回廊の突き当たりにある壁に高速で直撃し、微動だにしなくなった。

 その付近にいる弓兵の見張りが、回廊に立つビルタに気づいた。


「なっ、誰だ貴様は!」

「幹部アルジオーゾの側近をしておりますビルタと申します」

「異形な魔物め、同僚の仇を討たせてもらう」


 見張りは弓に矢を番えると、弓を構えて矢を放った。

 ビルタは羽ばたいて空に浮上し、悠々と攻撃を躱す。

 そのまま上空で闇に紛れながら、見張りの追跡を見失わせる。

 そして上空から急降下し、勢いのまま真下にいる見張りの頭部にくちばしをぶつける。

 斧を振り下ろされたかのように、衝撃で頭部がパックリ割れ、血が噴き出した。

 これで三人の見張りを片付ける。

 回廊に戻ってきたビルタは、次をどういう攻め方にするか戦術を企てる。


(北門の左右に設けられている門棟の内部を制圧後、表裏の門番を撃破という手順で参りましょうか)


 回廊から梯子で下りた先の通路に飛んで着地し、門棟のドアを見つけ、中に入っていった。


 ビルタは、二つの門棟にいる兵士と門番を全て撃破し、制圧を完了させた。 

 ソーニャを回収し、遥か上空へと再び飛翔すると、カーディグラス城へと向かっていった。

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