異能力は花開く 〜大切な人を失う代わりに異能力を手に入れた俺は後悔しないように生きていきます〜

清涼水90

1話

「いってきまーす」

「こらヒカル!!お弁当忘れてるわよ」

「あ、忘れてた。ありがとう母さん」


僕の名前は夕霧ヒカル。

かっこいいお父さんと優しいお母さんの間に生まれた男の子だ。

今日は小学校の始業式の日。街はサクラの花びらが舞っていた。


舞っているサクラに目を輝かせながら歩く僕の肩がトントンと叩かれた。


「瑠璃!!!」

「おはようヒカル」

「うん。おはよー」


僕の肩を叩いたのは僕の幼稚園からの幼馴染みの瑠璃だ。

本名はみぞがくれるり。え〜っと、漢字で書くと溝隠瑠璃。

かっこいい字でしょ?本人は余り気に入っていないらしい。勿体ないよね。


「む...」

「どうしたの?」

「視線を感じる」

「あはは、それは瑠璃が可愛いいからだよ」

「.....そんなことない」


瑠璃はそう言って顔を背けてしまった。

幼馴染みの僕でもたまにビックリするくらい瑠璃は可愛いい。

なんていうか、人間離れしてるっていうか。女神様みたいなんだよね。

何回も告白されてるし瑠璃は可愛いいと思うんだけどなー


ん?僕?僕は可愛いい顔らしい。

お母さん似って周りから凄く言われる。

褒められるのは嬉しいけど僕はかっこいいって言われたいからな。複雑な気分だ。


「そういえばヒカルは宿題した?」

「え?春休みって宿題無いんじゃ....」

「新小学生6年生は自由研究がある」

「ジユウケンキュウ?」

「やってないなこれは」


嘘でしょ。毎年春休みは宿題無かったじゃん。

なんか瑠璃が忙しそうだな〜って思ってたけど。

まさか自由研究の宿題があったなんて。これが絶体絶命ってやつか....フッ。


「また馬鹿な事考えてるなヒカル」

「そ、そんな事ないよ」

「ふーん」

「そ、そうだ!瑠璃は何を研究したの?」

「異能力」

「え?なんて言ったの」

「秘密って言ったの。どうせヒカル真似しようとしてたでしょ」


ギクッ!!!

流石僕の幼馴染み....


「まっ!!いいや。自由研究のことは忘れよう!!!」

「現実逃避....」

「僕、むずかしいことはわからない」

「ジーーーーー」

「ピューピュー」


瑠璃は昔から細かいところあるからな。

ここはなんとかして話題を逸らそう。え〜っと、


「サクラが綺麗だよね?」

「は?」

「い、いやその。ほら、サクラ綺麗じゃん」

「まぁ、確かに」

「でしょでしょ?」

「そういえばヒカルってサクラの花言葉知ってる?」

「花言葉?う〜ん、知らないかな」

「じゃあ教えてあげる。サクラの花言葉は....私を忘れないで」


サクラの花言葉ってそんなんだっけ?

なんかイメージと違うな....


「ヒカル、今日私はヒカルの前から姿を消す」

「何言ってるの瑠璃。冗談でもそういう事は言っちゃ駄目だよ。」

「私達の研究が今日実を結ぶ。その代わり君は....」

「なんか今日の瑠璃変だよ!!」

「ごめんね。でも、もう止められない。」


瑠璃がそう言った瞬間、僕の視界をサクラの花びらが埋め尽くした。

そしてサクラの花びらは僕の体の中に入ってきた。


「っ」


サクラの花びらが体に入ってきて、僕は気絶した。

想像を絶する痛みが僕の体を襲ったからだ。

気絶する瞬間に周りを見ると瑠璃以外の人は皆倒れていた。

そう、瑠璃以外は......





ー瑠璃sideー


「ごめん。ヒカル」


瑠璃はそう言うと目の前で倒れている大好きな少年の頭を撫でる。

ずっとこうしていたい。でもそれは許されない....


「瑠璃」

「パパ!!」

「恐らく後2分程で皆目を覚ます。体への負担が少なくなるようにしたからな。」

「そっか」


私の名前は溝隠瑠璃。

生まれながらの異能力者だ。私の母は私を生むとすぐに死んだ。

想定外の死だったらしい。

それから私の周りには不幸が連続して起こるようになった。

飼い犬が近所の苛めっ子たちに殺された。

パパは部下の裏切りで勤めていた研究所をクビになった。

流石におかしいと思った。私の周りだけいつも不幸だ。

最初はお祓いをした。効果は無かった。次にパパに私の血を研究してもらった。

そしたら....私の血にはロベリアという花の成分が多く含まれてることが分かった

異常な量だとパパは言った。不幸の正体はそれだった。


不幸の正体が分かった後、私とパパは花の成分について研究した。

細かい事はとばして結論から言うと、花の成分は異能力を形作る部品だった。


異能力

私とパパは不幸の正体をそう名付けた。

簡単に説明すると、人の体には生まれつき花の成分が少量入っている。

私の場合はロベリアっていう花の成分だった。

その花の成分は少量なら特に効果は無いのだが、花の成分が体の許容範囲を超えるとそれは人知を超えた力として姿を現す。

私の場合、生まれた時から成分の量が許容範囲を超えていて、その人知を超えた力が不幸を呼び寄せる物だった。ママもわたしを生んだせいで死んだ。


そしてもう一つ研究で分かった事があった。それは、異能力は花言葉に由来するということ。ロベリアの花言葉は.....悪意。


パパはすぐに花の成分を少なくする薬を作った。だけどそれは遅かった。

わたしの異能力はついにわたしにも牙を向いた。

わたしは片腕を失った。今の腕はパパが作ってくれた義手だ。

でも問題はそこじゃない。私の腕は私の体から離れた瞬間花びらになった。

花びらはあっという間に増えて世界中に散らばった。その日は異常現象として世界中でニュースになったくらいだ。

パパの仮説では悪意そのモノが世界中にばら撒かれたらしい。


このままでは世界中が不幸になってしまう。だからパパは人体にある花の成分を強制的に増幅させる薬を作った。

パパはそれをまず自分に投与した。パパの中の花の成分はサクラ。花言葉は純潔。

今のままでは皆無抵抗に悪意にさらされる。でも世界中の人が異能力者になれば私の異能力に対抗できるかもしれない。

パパは異能力は悪意に対しての追尾性を持っていた。

その効果を利用してパパはサクラの花びらと化した花の成分を増幅させる薬を世界中にばら撒いた。今はその薬の効果で皆の体に異能力が宿ってる時間だろう。


「瑠璃。もう行くぞ」

「うん....」

「安心しろ。私達の記憶は全て消えるようにしている」

「もうヒカルには会えない?」

「混乱が収まればまた会えば良い。その時は初対面だがそこは我慢してくれ」

「混乱か.....」

「瑠璃?」


ずっと考えてた。私は死んだほうが良いんじゃないかって。

私が生まれてこなかったらママも太郎(飼い犬の名前)も死ななかった。

パパだって研究所をクビにならなかったしヒカルが危険になることもなかった。

異能力者になったからといって私の異能力を防げるとは限らない。

一番可能性が高いのは私自身の死。

私には死ぬ勇気がなかった。でも、ヒカルを守るためだったら.....


「ごめんなさいパパ。私やっぱり死ぬ」

「何を言ってるんだ瑠璃!!!お前が死ぬ必要はない。それにもう.....」

「パパは花の成分を減らす薬も作ってたよね。私が死んでロベリアの花の成分が世界から消えかけたらすぐにパパの異能力でそれをばら撒いて」

「駄目だ!!!!お前は死ななくても.....」

「私が生まれたせいで色んな人の人生を狂わせた。これは償いなの」

「させない。お前を眠らせてでも....なっ!!!」


私の異能力がパパに牙を剥く。瓦礫の山が私とパパを隔てる。


私はヒカルのところまで行くと自殺用の薬を飲んだ。

最期は大好きな人の側が良い。


「大好きだよ、ヒカル」 





ー瑠璃side終わりー




僕が目を覚ますと見知らぬ人女の子が死んでいた。

周りを見るとそこは地獄絵図だった。

異形の姿をした人がいて、周りの人を殺してた。


「ッ」


僕の頭に鈍い痛みが走った。

なにか大事なものを忘れてる気がした。その忘れてるものは目の前の女の子が関係しているように感じた。見覚えがある女の子だった。

確か名前は.......何だっけ?


「きゃあああああああああ!!!!!」


僕のすぐ後ろで悲鳴が聞こえた。咄嗟に後ろを振り向くと女性が化物に食べられていた。


[異能力の暴走。それは瑠璃が懸念していたこと。だからこそ父に花の成分を減らす薬を持って来るように言ったのだが....瑠璃の父はその薬を使わなかった。彼は世界を恨んだ。瑠璃が生きていけなかった世界を......]


「た、助けて。いやよいやよ私まだ死にたくなあああああああ!!!」


女性は死んだ。呆気なく......


「ひっ....」


僕は走った。無我夢中で走った。目的地もなくただ走った。

気付いたら僕は僕の家の前まで来ていた。


「ハア、ハア。父さん、母さん」


怖くて怖くて早く父さんと母さんに会いたかった。


「あれ?鍵が空いてる」


僕は不思議に思いながらも扉をあけた。


「..............................?」


扉を開けてすぐ目に入ってきたのは血だらけになった母さんだった。


「なんで血だらけなの?ねえ母さん、ねえ。返事してよ!!!!」

「その声は.......ヒカル......か?」

「父さん?助けて、母さんが死にそうなんだ」

「逃.....げ.....t」


父さんも血だらけだった。


「え?なんで父さんも血だらけなの?何で倒れたの?」


意味が分からないよ。父さんと母さんは血だらけだし瑠璃は変だったし.....瑠璃?瑠璃って誰だっけ?


「それは俺が殺したからだ」

「ヒッ!!誰?」

「俺?俺は闇の騎士だ」


僕の家にいる太った中年のオジサンはそう言った。


「や、闇の騎士」

「そうだ。俺は闇の騎士。この世界で暗躍する者だ!!!」

「父さんと母さんを殺したって言うのは?」

「本当だ」

「なんで?なんで殺したの?」

「ムカついたから。俺より幸せそうな顔しやがってよお!!!腹立つよな。生まれながらに勝ち組。ヒヒッ、まずは妻から殺してやったよ。まぁ可愛いいから後で有効活用するけどな。その後は夫のほうだ。気持ちよかったよ。」

「......酷い」

「酷い?それを言うならその男のほうが酷い。その男は俺の好きな人を妻にした。俺のほうが先に好きだったのにもかかわらずだ。その女もそうだ。黙って俺の女になれば生かしてやったのに、高校時代から好きな俺を差し置いてまたその男を選んだ。挙句の果てには子供まで作ってやがる。死んで当然なんだよ!!!!!!!」


その言葉を聞いた瞬間、僕の中で何かが切れた音がした。


「父さんと母さんを返せぇぇぇぇ!!!!!」

「五月蝿えガキだ。このナイフが見えねえか...ぇなんで?」


男が持っていたナイフは宙に浮き男を刺した。


夕霧ヒカルの体の中にあった花の成分は三色菫。英名で言うとパンジーだ。

花言葉は.......一人にしないで。

能力はヒカル以外の物を有機物、無機物問わず操れるというもの。


ヒカルによって操られた男のナイフは何度も何度も男を刺す。

男は逃げようとするがヒカルの能力によって座らされる。


「痛い、痛い。何故俺がこんな目に.....チート能力は俺だけじゃなかったのかy.....ぎゃああああ!!!クッソ、ハーレムの夢がなんでぇ?」


僕は感情のままに男を刺した。男が動かなくなっても刺し続けた。

数時間程刺し続けたところで僕は気を失った。


僕はその後、警察の人に保護されたらしい。

警察の人が言うには僕の手の中には1つの花があったらしい。

警察の人はあまり花に詳しくなかったようだけど頑張って調べてくれた。


その花の名前はポインセチア。花言葉は.....幸運を祈る。













ー後書きー


この作品は決して花を悪く言ったりするのが目的ではないです。

もし嫌な花言葉がでてきてもそれを頭の隅にでもおいていただけたら幸いです。

作者としても初めてのファンタジー作品なので星レビューなどをいただけたらモチベーションに繋がります。

次回は一気に時間が飛んでヒカルが高校生になります!!!

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