ミエルミライ

@kuroru15858885

第1話 出会い

よく晴れた朝だった。

窓とカーテンの隙間から差し込む光がつぶっていた目にあたり、その刺激で彼女は目覚める。

彼女の名前はミライ。

これは数奇な運命を背負った少女の物語である。


その少女、ミライが目を覚まして、ベッドのすぐ上にある置き時計を見るとまだ九時にいかないくらいの時間だった。

ミライは気だるそうに布団から出て起きると、近くに置いてあったメガネを手に取り、洗面台に向かった。

そこで顔を洗い、歯磨きをして髪を整えて、朝の支度が終わると、クローゼットに向って手前から順番に取って行った適当な服に着替える。

カベに掛けてあったカバンを手に取り、飛び出すように玄関の扉を開けてミライは家の外に出た。


ミライが住んでいるのは、住宅街にある三階建ての集合住宅でそこの真ん中、202号室であり、家の外に出ればすぐ横に階段がある。


ミライはその階段を走るように、かけ足で降りていった。そうして建物の外に出てみると、空は雲がほとんど出ていないほど快晴で、日差しが降り注いでいる。

そんな空の下を、ミライは日差しのことなんか気にしていないように、一目散にある場所に向かって走っていった。

しばらくの間、道路または坂を走っていると、目的地にミライはたどり着いた。


そこはゆるい坂を登った先にある、自販機が立ち並ぶ道路の上だった。

ミライはその中の一つの自販機の前に立ち止まる。

その自販機ではめずらしいことにカレーパンや揚げパンなどのパン類が売ってある自販機であり、ミライはそこからカレーパンを選び、ボタンを押して購入した。

自販機から買ったパンを取り出すと、早速ふうを開けてミライは食べ出す。

その様子を気付かれないように、遠くから隠れて見ている人影があった。


ミライは買ったカレーパンを食べながら、来た道をそのまま帰っていく。

隠れて見ていた人物も、その後を付いていった。

そのことに、ミライは当然気付かないはずだったが、不思議なことに彼女の脳裏にある人物像が突然浮かんだ。その人影は自分より大きくて、どこか懐かしい雰囲気をまとっている。

その人影が何かわからなくて、でも知りたくてふいにミライは後ろを振り向いた。なぜ、そんなことをしたのかミライにも分からなかった。そこで、隠れて付いてきた人とミライの視線が交差する。


その人物は、手提げカバンを持って、もう片方の手で日傘を差している身長の高い女性にミライには見えた。

目を合わせながら、ミライが近付いて声をかえようかと考えていると、その人は突然振り向いて一目散に逃げてしまう。

ミライはその人に何故かなつかしさを感じていて、その理由を聞きたかったから、その背中をすぐに追った。

だが、足の速さで追いつけずにどんどんと距離を取られて、しまいには見失ってしまう。

ただ、ミライはこのマチのことはよく知っていたので、彼女が駅に向かっていることには気付いていたから、見失っても追いつく可能性を信じて追い続けた。


そして駅に着くと、改札に手をかざして進んでそのまま駅のホームへと進んでいく。

駅のホームに着いた時には、ちょうど今発車する電車の扉がしまるところで、ミライは飛び出すようにその電車に乗った。乗ると同時に電車が発車し、周りの景色が後ろへと流れていく。

乗った車両にはその女性の姿は見えず、探すためにミライは次の車両へとどんどん移動していった。


そして、ついにミライは彼女と出会う。


その女性は背が高く、肌は白くて人形のようにすき通っていた。

ミライがしばらく見つめていると、


「何の用?」


とぶっきらぼうに話し掛けられる。あわててミライは


「何の用という訳ではないんだけど...」


と話し返す。そのまましばらく沈黙が続き、それが気まずくてとりあえずその女性の隣にミライは座ることにした。そんな二人の間に、電車の窓から光が差し込んでいる。

その後、ミライはポツポツと話し始める。


「あなたのことをどこかで見たことがある気がするんです」


「前にどこかであったことがありますか?」


そんなミライの問いかけを聞いた彼女は少しの間黙った後、


「知らない」


と答える。

その返事を聞いたミライは明らかに落ち込んでいた。


「そうでしたか」


と返事をするとそのまま黙りこくってしまう。

しばらくの間、二人の間に気まずい沈黙の時間が過ぎていった。

その間も、電車はガタゴトと音を立てて、窓から見える街並みは前から後ろに流れていく。


「次は◯◯◯駅に止まります」


電車の中にアナウンスが響き渡った。

そうこうしている内に電車は次の駅に着こうとしている。

その女性は、次の駅で降りるために手荷物を持って、腰を上げようとしていた。

ミライは何を話したらいいか分からなかったが、このまま別れることになるのは嫌だった。だが、そのための続く言葉が見つからない。

そうこう悩んでいる間に、時間が経って電車は駅に着き、扉は開いてしまう。

今まさにその女性が駅を降りるために歩き出していた。

ミライは、このままここで別れてしまうと二度ともう会えない気がして、それが嫌で彼女に手を伸ばした。


その時、勢い余って彼女と同じ駅のホームへと降りてしまう。

すると、そこでは足元には光る点字ブロックがあり、壁にある広告は動画が流れており、空が透けて見えていて、そこには空を掛ける道路や飛んでいるロボットがいた。

ミライは、これまで見たことがない景色が広がっていてとても驚いている。そんなミライがいることを彼女も驚いた目で見ていた。


電車を降りた先には、別世界が広がっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る