愛が紡ぐ光の道

牡蠣

### 第1話:運命の出会い

月が静かに照らす夜、深い森の奥にひっそりと


佇む「鬼森」。ここは人々の恐れの象徴であ


り、鬼が棲む場所と伝えられている。しかし、


その森の中に住む鬼、名を雷鳴という彼は、実


は誰よりも優しい心を持っていた。彼の姿は、


圧倒的な美しさを持ち、背は高く、そして流れ


るような黒髪が魅力的であった。しかし、その


外見とは裏腹に、彼は村人たちから恐れられ、


孤独な日々を過ごしていた。



一方、村の独特な風俗と伝説にとらわれ、生ま


れながらに不運な運命を背負った少女、瑠華。


彼女は可愛らしい容姿を持っていたが、周囲か


ら嫌われ、友達も一人もいなかった。村人たち


は彼女の存在を疎ましく思い、「悪運の持ち


主」として生贄にされるべき存在だと噂してい


た。



瑠華は、村の人々の冷たい視線に耐えかね、あ


る晩、決心をして鬼森へと向かうことにした。


彼女は、自ら命を絶つつもりで生贄になり、鬼


に慰めを求めた。たった一つの願い。それは、


心の底から解放されたいという思いだった。


彼女が鬼森の入口に差し掛かると、月明かりが


彼女を照らし、静かな森の空気が彼女の心を冷


やした。恐怖と孤独に包まれながらも、瑠華は


一歩一歩進み続け、深い森の中へと足を踏み入


れた。



その時、雷鳴が森の奥から姿を現した。彼はそ


の美しさと圧倒的な存在感で、瑠華を魅了し


た。彼は恐れられている鬼ではあったが、彼女


に向けられたその眼差しには優しさが溢れてい


た。



「ここに何をしに来たのか?」彼の声は低く、


どこか柔らかさを感じさせた。



瑠華は、自分が生贄になりに来た理由を告げる


ことができなかった。彼の存在に圧倒され、言


葉が出てこなかった。ただ、彼女の胸には自分


を受け入れてほしいという複雑な気持ちが渦巻


いていた。


「どうしてそんなに悲しそうな顔をしているの


だ?」

雷鳴は柔らかい声で問いかけた。彼の真剣な眼


差しに、瑠華は少しずつ心を開いていく。


「村の人々に嫌われている…I…私は生きる価値


がないと思っている。」


瑠華は、恥ずかしさと恐怖を抑えながら一言を


漏らした。



雷鳴は一瞬驚いたように目を見開き、彼女に近


づいた。


「そんなことはない。君は生きるに値する、そ


して誰かに大切にされるべき存在だ。」


その言葉に瑠華は胸を打たれた。彼の優しさが


心の奥にじわりと染み渡り、涙が頬を伝った。


「でも…私には他に選択肢がない。」


雷鳴は自らの手を差し出し、瑠華の肩に触れ


た。「私と一緒にいてほしい。村の人々が君を


どう思うかは関係ない。君の心は、私が守


る。」


彼の言葉に触発されるように、瑠華は心の中の


苦しみが少しずつ和らいでいくのを感じた。雷


鳴の優しさに、彼女は少しずつ心を許してい


く。



この出会いは、二人の運命を大きく変える瞬間


だった。瑠華は生贄になることを忘れ、雷鳴の


温もりと共に新たな人生を歩み出す決意を固め


る。彼女にとって、雷鳴は特別な存在となり、


彼らの愛の物語が始まるのだった。


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