第2話 引きこもり魔女と騎士の物語
目が覚めると眩しい朝日が窓から差し込み、香ばしい香りがする。
ぼんやり眼をゆっくり開くと、窓の外で木々が気持ちよさそうに揺れるのが見えた。
「お、おはよう」
無意識にそう呟くと、返事を返してくれるかのように鳥たちのさえずりがより一際にぎやかになった……ような気がする。
「フローラ、おはようございます」
コンコン、とノックと同時に銀髪に榛色の見目麗しい男が現れる。
すらっとした長身にどこまでも長い脚。
一応は騎士を名乗っているため、いつも軽装ではあるものの、何を身に着けていても品の良さは隠しきれていない。
朝日の光にも劣らない華やかさである。
そして今は、全く持って似つかわしくないエプロンを着用し、あまりにアンバランスな様子で……いや、それはさておき……
「ちょっと、ジャドール! 突然入ってくるのはやめてくださいっていつも言っているでしょう。着替えていたらどうするんですか」
朝のすがすがしい気持ちを一気に打ち消され、憤慨するわたしはふぅっと息を吐く。
ジャドールは不思議そうな様子でこちらを見つめたのち、柔らかな笑みを浮かべる。
「全く持って問題ございません」
何を今さら、と言わんばかりに。
「はっ?」
「お着替えが見られるのなんて、朝からなんて眼福でしょうか」
「い、いえ、わたしが困るんですっ!」
問題大アリよ!!
「もしよかったら、お手伝いしますが」
「し、ししししなくて結構ですっ!」
ただただ笑顔を浮かべている分には素敵な騎士さまなのに、口を開けば頓珍漢なことばかり。
「は、早く出ていってください!」
と、わたしは必死に彼の背を押す。
毎朝のことではあるが、わたしは今日も感情的な声を上げながら、「朝食はできています」と楽しそうに言うジャドールを室内から追い出し、慌てて黒いワンピースにローブをまとい、彼が待つリビングへと向かった。
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